ラフティングの基本④【流水練習の導入】

これまでに静水編ということで大きく3項目に分けて解説してきました。

この3項目を静水で満足にできるようになってから実際に流れのある川にでます。逆にいうとこの3項目のうちどれか一つでもできないと川で練習しても時間ばかりかかってしまい思うように練習できません。

まずは流水練習の紹介の前にこれまで静水編で紹介してきた練習がどこで役に立つのかを解説します。さらに今回の記事では流水に出た際一番最初にやる練習として簡単なボート感覚の練習も紹介します。ぜひ最後まで読んでみてください。

静水練習の重要性

ラフティングの場合はボートも大きく安定し人数もいるのでなんとなくできている気になってしまいますが、本当に上達しようと思うと静水練習は不可欠です。

目標物の設定

ラフティングの基本①【目標物の設定】静水編ではまっすぐ進むことの難しさと重要性について解説しました。これはラフティングでもダッキーでもカヤックでも同じです。

まっすぐ進めなければいけない最大の理由は「同じ条件で練習できなくなってしまうから。」です。

川に出ると「そこの岩下から10時のアングル、12時慣性でストリームインして・・・・」といった練習になります。これは10時のアングルに向かって直進していることが大前提となります。まっすぐ進めずに9時や11時に振っているようでは練習ができません。さらに静水では無かった12時慣性という「船がどちらに曲がろうとしている状態なのか」まで指定が入ります。これは進行方向は10時のままだがそのまま放っておくと12時方向(つまりは右方向)を向いてしまう状態を作れということです。

直進さえしっかりとできていればタイミングを見て左を多少強く漕げば右には振るのでさほど難しくなく、そのままタイミングを合わせる練習に移行できます。

しかし、直進がおぼつかなかないと9時でストリームインしてしまったり11時でストリームインしてしまったりと安定せず偶然10時でストリームインできた1回も慣性が合わないなんてことになります。

カヌーの個人レッスンなんかだと直進がおぼつかない人は1/5くらいの確率でしか10時でストリームインできません。12時慣性という条件まで入れると1/10以下でしょう。これでは練習時間がいくらあっても足りませんし、反省会をしてもなんの反省をしているのかわからなくなってしまいます。

方向転換

ラフティングの基本②【方向転換】静水編ではスイープターンによる方向転換の仕方について解説しました。こちらの記事でも解説したようにターンの方法は何種類もあります。紹介したバウラダーやスターンラダーに加えゲートを考えるとバックスイープなどケースバイケースで様々なバリエーションがあります。

スイープで紹介したのには理由があります。スイープはパドルの角度によっては大きめのフォワードと変わりません。外から見ていてどこでスイープしているかわかるくらいスイープするというのは実はなかなか難しいのです。しかし、これをやることにより明確なターンポイントやキッカケを意識できます。

ターンポイントやキッカケの意識は非常に重要でスラローム競技でゲートへのアプローチを考える際にも使います。特にスピードが乗りがちなスタガーゲートはターンポイントの意識がないと攻略できません。

静水では自分で直進した分しかキッカケのスイープからスライドしませんが、川ではそこに流れの力が加わるので思っている倍のスピードで流されます。静水のうちにしっかりと自分のスイープやキッカケの性能を理解しておかなければボートが回り切る前に流されてしまいます。

レースラフティングの大会を見ていると流されてしまってアップゲートに向かって頑張って漕ぎ登っているチームがいますが、あれは単に自分達のキッカケやそこからのフォワードの性能を過信して間に合わなかっただけだと個人的には思っています。

方向転換というとクイッと90°曲がるイメージがあるかもしれませんがキッカケや大きな弧を描くターンも方向転換の一種です。静水で自分達の性能を高めておかなければ川ではできません。

リーン

ラフティングの基本③【リーン】静水編でリーンと逆リーンについて解説しました。ラフティングの場合はボートが大きくリーンが効きづらいのでハイウォーターでひっくり返らないようにする技術として認識されている場合が多いですが、リーンを考えるということはボートの扱い方を考えるということにつながります。ボートに当たる流れがどこからきてどこに逃すのかを考えるというのは非常に重要です。ダッキーやカヤックなどの個人艇に乗り換えた際にもこの差は現れます。

川に出て最初の練習

川に出て本当に一番最初にやることはセルフレスキューのレクチャーです。ひっくり返ったらどうするのか、どこに向かって泳ぐのか、どこまで流されると危ないのかなど練習場所の説明や安全面に関する説明をします。

セルフレスキューに関してはカヌーワールドやプレイボーティングといった雑誌でも定期的に紹介している方がいるのでここでは割愛します。

助走しかしないストリームイン

川に出て1番最初にやるのは助走だけをつけたストリームインです。

ストリームインというと上流45°方向くらいを目安に漕いでいき本流に入ったらキャッチをして回すというイメージを持っている方も多いかと思います。

しかし、最初から下流に身体を開いてキャッチしてなんてことをするとやることが多すぎてごちゃごちゃになってしまいます。

そこでまずは10時の方向に向けてまっすぐ漕いでいき「リーン!!」といったら下流にリーンをしバランスを取る練習をします。

まずは岩下から10時方向に向けて助走をつけます。カヤック初心者でまっすぐ進めない場合などは水に入ってスターンを持って押し出してやる場合もあります。

①のあたりで「リーン!!」といいます。1番右の青矢印がエディーラインのイメージです。エディーラインの手前では角度を決めてリーンします。

そうすると上流に向かっていた緑矢印の力が徐々に青矢印の流れに負けて下流をむきだします。

この時、下流である6時方向を向くまではリーンを固めたまま何もしません。

完全に6時方向を向いたらフォワードを開始し旋回しながらスタート地点まで戻ってきます。

①でリーンを開始する際に直進がうまくいかず9時方向を向いていたりすると白カヌーのように手前の流れに負けてしまい本流まで辿り着けません。

ここではカヤックのレッスンを例に解説しましたがラフティングの練習でも一緒です。ストリームイン=キャッチをして回すと思われがちですが、推進力・ベクトル・アングル・慣性などが合っていれば何もしなくてもうまい具合に回ってくれるのが川の力です。力ずくでキャッチそして回すのではなくエディーラインまでに全て決めてしまってあとはリーンしているだけで6時を向くという練習をします。

◯意識するポイント◯

  • エディーラインを割るまでしっかりと直進する。
  • リーンをした際どこに流れが当たっているのかを感じる。
  • 何もしないでいるとどれくらいで6時まで向くのかを体感する。

12時キープ

本流で12時方向を向きながらその場をキープする練習です。本流と言っても最初は緩い流れのところから始めます。御岳であれば杣の小橋周辺やコンセプト下などがわかりやすいでしょう。

12時キープのポイントはあまり漕がないこととその場を動かないことです。

岩下から流れに負けないように11時くらいの角度で進入します。

本流に乗ったら流れに対して12時を向けます。

カヌー・カヤックなどの個人艇であれば腰の捻りなどを意識しながらゆっくりと漕いでその場を動かないようにします。

ラフトボートの場合はラダーを入れずに左右のパワーバランスだけでコントロールします。

下流に流されてもいけませんし、漕ぎすぎて上流に進むのもいけません。

慣れてきたら白カヌーで表したように一定の位置まで上がったり下がったりしながら再びその位置をキープという練習をします。この時も一気に上がったり下がったりするのではなくゆっくりとストロークの強弱だけで動きます。

◯意識するポイント◯

  • いかに漕がずにキープするかを考える。
  • バウの横振れだけではなく漕ぎ登りや流されがないかも確認する。
  • どれくらいの流れの中までなら12時キープできるのか自分の性能を知る。

導入練習後

川に出て最初の練習は安全講習に加えストリームインと12時キープがメインです。

この2点を確認すると静水でどれだけ漕ぎ込んだかがわかります。どちらも基本を抑えていれば難なくこなせるお題だからです。もちろん初めての川という場合はそれも考慮に入れて少しづつステップアップしていきますが、それでも静水でやってきたことが顕著に現れます。

以下のような場合は川での練習も踏まえてもう一度静水で練習します。

  • エディーラインを割るまで直進をキープできない。→目標物の設定や直進の問題
  • 「戻ってきて」と言われても角度がつかず流されてしまう。→方向転換や角度づけの問題
  • 「リーン」と言われた時にプルプルしてしまいキープできない。→リーンの体勢の問題

大きく分けるとこちらの3点です。これまで紹介してきた静水編の練習がしっかりとできていれば起きないミスです。もちろん最初からできる人はいませんが、基礎ができていると繰り返しているうちに慣れてきてできるようになります。

基礎ができていてもうまくいかない場合もあります。その際はそのまま川での練習続行です。

  • エディーラインを割る際ついつい逆を漕いで流れに負けてしまう。→タイミングの問題。川で合わせる練習をすればできるようになる。
  • 12時キープで漕ぎすぎて登ってしまう。→力の加減がわからない。川の流れを体に覚えさせればできるようになる。

川での導入練習が終わった後は必ず何ができて何ができなかったかを確認します。普段の練習でもそうですができなかったことを確認することは重要です。特に最初のうちはできないことが多いのであれもこれもと問題点を複数抱えがちです。一気に複数のことをやろうとしてもうまくいかないので一つ一つ意識していく必要があります。その際気をつけなければいけないのが静水で練習しなければならない課題はないのかという点です。私の場合は静水練習で対処できる練習がある場合は一度優先してそちらに取り組みます。どうしても一度川に出ると静水練習は卒業した気になってしまいがちなので意識的に静水練習を取り入れるようにしています。

まとめ

川に出て最初の練習は複雑なことはしません。紹介したような12時キープやストリームインに加えてフェリーグライドの導入まで行ければいい方です。12時キープとストリームインは静水でやってきた技術がそのまま現れるお題なのでこれを見れば大体わかります。

今回紹介した練習ではラフトボートのような大きなボートで人数もいると細かいところで誤魔化しができてしまいます。12時キープを例にすると、本来左右のストロークバランスで調整しなければならないところを前2人にガンガン漕いでもらって後2人は調整だけするといった具合で形はできているけど練習の本質から外れた練習でもできている気になってしまいます。このような場合は制限を設けて前2人だけで12時キープや、対角線だけで12時キープなどに変えたりします。

まずはパドリングしなくてもボートを流れの中で思い通りに動かせるように基礎的な練習をしていくことが重要です。

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