レースラフティングの競技性とは

今回は技術の話でも練習論の話でもありません。

今一度レースラフティングという競技について考えてみましょう!というある種問題提起のような記事です。水もののスポーツは公平性を保つのが非常に難しいです。テレメーターが同じ推移を示していても短期的に出たり消えたりするウェーブもあれば長期スパンで出たり消えたりするウェーブもあります。それだけでも本来は「不公平」になってしまいます。そのような「不公平」な要素をなくしていかに公平な競技にしていけるかが競技の発展に関わってくると考えます。見ている人(素人)が「明らかに〇〇が有利でしょ!」と分かってしまう競技は公平性に欠いています。

以上のような点も踏まえてぜひ競技の発展に必要なものは何か考えてみてください。

少々愚痴っぽくなってしまいますがご容赦ください。

公平性の追求

どんな競技でもそうですが、競技と関係ないところで選手が不利になるような要因を極力排除しています。カヌースラロームもワールドカップレベルだとほぼ人工コースで行います。ウェーブやバックウォッシュなどは微妙な水量変化で変わってしまうので水門をつけて流入量を一定に保ちます。半人工コース(自然の地形に手を加えたようなコース)でも水門をつけて水量変化が起きないようにします。それでもなお、風が吹いてゲートが揺れたらどうするのかといった議論があったりします。一部では屋外で吹きさらしでやるのは不公平だからスタジアムみたいにして風も入らないようにすればいいんじゃないかといった意見まであります。「カヌースラロームスタジアム」はやりすぎかもしれませんが、このようにスラローム競技一つとっても公平性の追求がなされています。

おなじパドルスポーツのカヌーフラットウォーターレーシングもそのような公平性の追求がなされています。競技の特性上直線で1kmのコースが必要なのでスタジアムとまではいきませんが、「自動発艇装置」というものがあります。横並びで9艇同時に発艇するので、人の手で抑えていては公平性が保てません。そこでバウをはめるバケットのようなものがあり、スタートと同時に一斉に水中に落ちる競馬のゲートのようなものがあります。これによりフライングもなければ出遅れもありません。もちろんゴールもビデオ判定付きの光電管計測です。

このように同じパドルスポーツでも公平性を確保するために様々な取り組みがなされています。これを踏まえてレースラフティングの競技性・公平性について考えていきたいと思います

レースラフティング①◯艇同時発艇ダウンリバー

最近多いですが、3艇同時発艇ダウンリバーなどの複数艇で同時に行う競技には個人的には反対です。

どんな大会でもダウンリバーの配点はかなり高めに設定されています。それなのに複数艇同時に出てしまうと同じ組みのボートと競り合ったり、ラインどりで潰しあったりしてしまって本来の実力が出せなかったりします。また、せっかく他の種目で頑張っていい順位にいたのに組み合わせで泣くなんてこともあります。例えばスプリントタイムで組み合わせが決まる大会の場合、1位から4位までタイムが拮抗し大きく離れて5位6位がいた場合はどうでしょう。組み合わせは1位2位3位がA組で、4位5位6位がB組となります。1位から3位はタイムが拮抗しているしおそらくスタートと同時に競り合ってしまい本来のタイムが出ないでしょう。逆に4位は格下相手なので先行できて有利にレースを進められます。これにより潰しあっていた2位3位が落ちて4位が漁夫の利を得るという構図が出来上がります。カヌーフラットウォーターレーシングの場合予選のタイムが1位2位3位を同じ組み合わせにするなんてことはありませんが、ラフティングの大会ではなぜかそうなってしまいます。

以前までのダウンリバーは遅いチームからスタートしていき、後ろのチームに追いつかれたらコースオープンが基本でした。コースオープン可能な場所で妨害行為を行うと反則となる場合もありました。確かにこの方式では遅いチームが追いつかれてコースオープンを強いられるので不利になります。しかし、2分間隔などでスタートしているので本流キープで流れに乗れていれば追いつかれるなんてことはまずありませんし複数艇同時発艇よりはよっぽど公平です。

観戦している側からすれば複数艇同時発艇は面白いでしょう。競り合いの駆け引きがあり先にゴールラインを切った方が勝ちなので観ていてもわかりやすいです。しかし、全日本やワールドカップとなった際に明らかな不利を強いられるチームが出てくるのも事実です。

レースラフティング②H2H(ぶつかり合い)

複数種目をこなすレースラフティングで「どの競技が1番好き?」と選手に質問するとほとんどが「スラローム」か「H2H」と帰ってきます(ちなみに筆者はダウンリバーが1番好きです)。

スラロームに関してはカヌースラロームとほとんど一緒でゲート幅やゲート高も指定されていて審判も見ているので公平性は保てているかと感じます。問題はH2Hです。H2Hはスタートとほぼ同時に接触します。タイムを競う「レース」と名前のつく競技でぶつかり合う競技はかなり稀です。「ラインどりで相手を前に出させない」ではなく「ぶつけて相手の挙動を崩してこじ開ける」なんていうのは完全にデスレースの類です。

100歩譲って「ぶつけてこじ開ける」はありだとしても「パドルで妨害してもいい」は競技としていかがなものでしょうか。直接相手のボートやパドル・身体などを攻撃しなければ相手に漕がせないようにしてもいいというのはあんまりではないでしょうか。その基準も曖昧でどこまでやったら反則を取られるのか明確ではない上に、審判もスラロームほどおらず見ていないので「見えないところでラフプレー」がまかり通ってしまいます。

これも複数艇同時発艇と同様で見ている方は盛り上がりますが、やられた方や関係者は「今のアリかよ!!」となってしまいます。そして明確に反則を移した映像が用意できない限りプロテストも通らないので泣き寝入りとなってしまいます。

レースラフティング③H2H(ゲートやブイ)

またしてもH2Hについてですが、近年のH2Hにはゲートやブイが登場しダイナミックスラロームのようになりました。「ラフティングクロス」という3艇同時発艇でスラロームのようなH2Hを行う競技がかつてありましたが、それを応用させたものでしょう(すいません…ここに関しては勝手な解釈です)。

確かにこれまでのH2Hでは川幅の都合や距離の都合上「先に前に出たもん勝ち」なところはありました。それを改善する案の一つとして取り入れられたのかもしれませんが、これがかなり公平性に欠いていると感じます。

「H2H」と名前がついている以上選手からすれば「ぶつかってもいい。競り合ってもいい。」と解釈するのでブイやゲートに進入している相手チームに対して上流から横当てなんてこともできますし、ブイ通過の際に当てて押し戻して不通過にさせるなんてこともできてしまいます。また、ゲートやブイに接触してもいいというルールの都合上避けた風に接触してゲートやブイを揺らし通過するなんてこともできてしまいます。

このゲートやブイの通過判定も明確なビデオがないとプロテストできないのでやられた側のチームは泣き寝入りです。ゲートやブイを使って「通過」「不通過」とペナルティーを課す以上きちんとした審判を置くのも当然ですが、ぶつかりあいの際に本当に妨害行為がなされなかったかなどを確認する審判も必要となってくるでしょう。

これからのレースラフティング

これまで散々公平性が云々と言ってきましたが、決して複数艇同時発艇やH2Hやラフティングクロスのような競技が悪いというわけではありません。見ている側は盛り上がるし、選手も他の競技とはまた違った駆け引きなどが楽しめて面白いでしょう。「リバクロバトル」のように最初から「こういう大会です!!」といって選手も運営も割り切っていれば楽しいし全然ありだと思います。

しかし、スプリントやダウンリバー・スラロームといった公平性が追求されている競技の中にこのような要素が入ってきてしまうと「ちょっと違うんじゃないか?」と感じてしまいます。「レディー、ゴー!」までパドルを着水させてはいけない競技がある一方、ぶつかってもいいし妨害してもいいというのはいかがなものでしょうか?個人的には4種目ではなく3種目でいいんじゃないかと思います。それかどうしても同時にH2Hのような競技をやりたいならエキシビジョンマッチで点数に加えず別枠で表彰したりなどいくらでもやり方はあります。複数艇同時発艇も同じで、どうしてもやりたいなら順位別ではなくカヌーフラットウォーターレーシングのように1位2位3位をバラけさせるなど組み合わせを考えていく必要があるでしょう。

筆者も以前大会運営をしたことがあるので内情は分かりますが、遅いチームから発艇や複数艇同時に発艇させるというのは「競技時間を短縮」できるという運営側の都合が大きいです。本来選手ファーストでなければならないのに運営の都合で不利なチームを産むというのはいかがなものでしょうか。学生大会や草レースならまだしも、全日本やワールドカップではあってはならないと感じます。

まとめ

「観ていて楽しい!!」も非常に大切なことですが、競技の公平性(競技性)が高いということも非常に重要な要素となります。

なかなか両立させるのは難しいですが、そこについて考えていくのもこれからのレースラフティングの発展には必要かと思います。

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