ラフティングの基本①【目標物の設定】静水編

ここではレースラフティングから少し離れて本当にラフティングを始めたばかり・これから練習してレースにも出られるようになりたいという人向けに、ラフティングにおける基本事項を解説していきます。

できる限り難しくせずポイントを押さえていければと思います。既にレースに取り組んでいるという方も復習程度に読んでいただけると新しい発見があるかもしれません。

目標物の必要性

カヌーの上級者にもなると開けた場所でも水面を見ながら真っ直ぐ漕いで行けますが、初心者やそこまで静水で漕ぎ込んでいない人、ラフティングなどのように複数人で乗るボートであれば目標物を決めておかないと意思疎通ができずうまくいきません。

初心者にありがちなのは沈するんじゃないかという不安とパドルへの不慣れからどうしても手元にばかり視線が行きがちです。手元ばかり見ているとボートの繊細な慣性に気づくのが遅れ、回ってしまったり蛇行したりします。それを改善していくためにも目標物を設定し、どこを通るかを決めて練習していく必要がありあます。

目標物の条件

目標物として向いているものは橋脚や湖畔の木・大きく目立つ岩など水辺の近くにあって動かないものです。流木などの風や波で動くもの、湖畔から離れていてゴールした際のポイントが曖昧になってしまうものはあまり向いていません。そのため広く見通しの良い湖などは目標物の設定が難しくなりがちです。

初めのうちは遠くに目標物を設定するように教わる事が多いです。それは手元やパドルばかりに意識がいってしまい周りを見れないのでそう教わりますが、遠すぎる目標物はあまり良くありません。

上の画像はゴールした時のボートと目標物の位置関係だと思ってください。黒の矢印で示したように近場に目標物がある場合はズレが大きく感じますが、遠くにある場合の赤矢印だとズレていてもそこまで大きな問題のようには感じません。この違いを理解した上でちょうどいい位置に目標物を設定する必要があります。

もう一点目標物の設定で注意したいのはラフティングの場合は左右で見え方が違うという事です。1人でボートの真ん中に乗るカヌーやダッキーソロの場合は自分の見える目標物=ボートの向きになるのですが、ラフティングの場合は必ず左右が分かれます。

画像のように左右で見え方が変わってしまうと意思疎通がうまくいかないので赤矢印で示したボートの向きを目標物に合わせる必要がありますがこれが意外と難しいです。本来見えない角度を想像して合わせることになるので個人差が生まれます。チームで練習するのならここに一日かける価値があるくらいの内容です。

目標物とライン

いざ目標物を決めたらそれに向かって漕いでいくことになるのですが、そこで意識しなければならないのは「ライン」です。ラインとはボートの回転軸が通る場所のことです。前項でも書いたように左右が分かれるラフティングではこの共通認識がないとバラバラになります。自分が通る位置やボート全体が通る場所ではなく回転軸(大体はボートの中心)が通る場所がラインです。

よくあるミスなのですが「ライン」と「アングル(向き)」と「ベクトル(実際進んでいる方向)」をごちゃごちゃにして考えてしまう人がいます。

赤矢印がイメージした通りたい場所(ライン)です。青矢印がボートの向き(アングル)です。緑矢印がその時ボートが進もうとしている向き(ベクトル)です。

①の状態:ライン上に居るものの、アングルもベクトルもバラバラ。

②の状態:何となく目標物の方は向いているが、アングルもベクトルも①同様バラバラでラインからも外れている。

③〜④の状態:アングルこそ違うがライン上におりベクトルも一致している。

⑤の状態:ライン上におりベクトルもアングルも一致している。

理想は⑤の状態を常にキープし続けられることですが、実は③〜④の状態もライン上に居るのでラインをトレースするという点では成功しています(別のテーマで解説しますが、ラインをトレースする上でアングルやベクトルはが違うということはよくあることです)。

この3つの要素をしっかりと分解して考えるのが上達への近道です。これを考えずに練習していくと下の図のような事が起こります。

赤線が実際通ったラインです。黒矢印はその時の目標物に対するアングルです。常時アングルはあっているのですがボートが蛇行しています。初心者にありがちなミスです。しっかりと目標物に向いて漕いでいるのですが、ベクトルとラインの概念がないとこのようになります。水に浮いているだけのボートはちょっとした風やさざ波程度でも影響を受けて動きます。長年やっているチームでもこの蛇行をゼロにするのは難しいです。赤線部と中心の黒矢印の隙間の面積が小さければ小さいほど思い描いたラインを通れているということになり「上手なチーム」と言えるでしょう。

まとめ

基本項目の説明なのでかなり簡潔に書いてみました。

レースをメインに練習に取り組んでいるという方にはもの足りないと感じる記事かもしれませんが、一つ一つ基本に帰って考察するというのは重要なことかと思います。

今一度「目標物に対してまっすぐ進む」という基本項目を確認してみてください。シンプルなだけに深堀していくとかなり難しい項目の一つです。

補足:練習の際のポイント

どうしても目標物をまっすぐ捉えているという錯覚があると蛇行しているかどうかは自分たちでは分かりづらいところがあります。本当にきれいな静水なら漕いだ後の波紋を見れば分かりますが、通常はボート外からみてもらわなければ分かりません。

いきなり開けた場所で遠くの目標物となるとハードルが高いので、テイケイが練習している平塚のように、河口付近などにいくとまっすぐに整備された護岸などがあり分かりやすいです。護岸から2mくらいの位置を漕いでいく練習をすれば直進させる難しさが分かります。

また、練習の際はある程度距離を漕ぐことを個人的にはオススメします。短距離だと滑り出す前に終わってしまったりしてなんとなくできている気になってしまいがちです。そこそこ開けた場所で直線で最低でも2分以上漕げるような場所だと理想的ではないでしょうか。

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