対談:カヌースラロームアスリート禰寝大亮選手〜ラフトにも活かせるカヌー技術〜

対談企画第3弾!!ということで今回お話をさせていただいたのはこちらの方です!!

U23カヌースラロームB代表の禰寝大亮ネシメ ダイスケ選手です。

禰寝選手は小学校1年生の頃にカヌーと出会い小学校4年生から川に出始めて中学生になり選手としてのトレーニングを始めました。最近の理論ではゴールデンエイジとか言われる本当に小さい頃からカヌーに携わってきた選手ではなく成長してから始めた選手になります。

レースラフティングがメインでカヌースラロームはよくわからないという方はぜひ一度動画を見てください! 圧巻ですよ!!

下の動画の13:39あたりで今回取材させていただいた禰寝選手が登場します。代表選考レースなので他の選手も日本トップクラスの人ばかりで1人づつ技術解説をしていくと一日かかっても終わらないほどの優良動画となっています。

今回はそんな日の丸を背負う禰寝選手に練習の仕方や頻度・パドリングのテクニックなどについて教えていただきました。

学生をしながらの練習頻度

禰寝選手は日本代表でありながら現役の大学生でもあります。しかもスポーツ推薦などではないため体育学科でもなく普通に単位を取って卒業しなければなりません。そのため多くの学生さんと同じように授業との両立が要求されます。

まずはどのようにして練習時間を確保しているのかについて伺ってみました。

KEN
KEN

禰寝選手は現役大学生ですけど平日は授業ありますよね。他の学生さんと同じで単位に追われませんか?練習時間はどうやって確保しているんですか??

ネシメ選手
ネシメ選手

単位には追われますよ!笑 それでもシーズン中ならスラセン(カヌースラロームセンター)で週6は漕いでますね!それくらいしないと勝てないんで。

基本的には授業のコマによるそうですが、月曜・火曜といった平日で授業が多い日を「オフ日(練習休み)」にしてしまいその日に授業を詰め込むそうです(果たしてそれはオフなのか・・・?笑)。そこで授業を1日に詰め込むことにより他の日を午前・午後どちらかを空けてその隙間でスラセンに通って練習するそうです。

スラセンも基本利用が1時間なので「そこ!」と決めたところで集中して練習できる環境だということです。また、その練習のためにわざわざアパートは大学よりもスラセン周辺を選んだそうです。

KEN
KEN

基本は漕ぐだけ?補助トレーニングとかはしないの?

 
ネシメ選手
ネシメ選手

補助トレーニングしますよ!大体の流れは午前スラセン・午後授業・授業終わりにジムですね!

漕ぐのと同じくらい補助トレーニングも大事にしているようで、そういった陸上トレーニングについても語ってくれました。そのお話は次の項目で紹介します。

流石にバイトしながらだとこの生活は不可能でしょうが、カヌー命でお酒も飲まずジムも大学などの施設を使って大学とスラセンを行き来する生活であればそこまで遊ぶお金も必要ないのでしょう。

なかなか修験者のような生活ですがここまでやらないと日本代表にはなれない厳しい世界なのですね。

補助トレーニング・ウエイトトレーニングについて・・・

一つ前の項でも書きましたが、禰寝選手は陸トレなどもかなり取り入れているようです。そこで日本代表の陸トレ事情について話を聞きました。

KEN
KEN

自分もコーチをしていると選手から「漕げば必要な筋肉はつくから筋トレは必要ないんじゃないか?」といった質問をよくもらうのですが禰寝選手自身はどう思いますか?

ネシメ選手
ネシメ選手

「漕ぎだけ」だと表彰台は絶対無理ですね!!笑 確かに漕ぎでも筋肉はつきますし、ウエイトをあまりしない選手もいますがそういった選手は別でエクササイズを持っていて「陸上トレーニングゼロ」という選手はトップには1人もいないです。漕ぎだけだとある程度まで行くと限界が来るんですよ。そこで筋力をつけて限界を引き上げてあげないと上にはいけないと思います。ただそこまで体を大きくする必要はないですけどね・・・笑

私も禰寝選手の意見には賛成です。確かにボディービルダーのようなバルクを手に入れるトレーニングは必要ないでしょう。しかし、いくら技術競技であるカヌーにおいても速く漕ぐためにはある程度の筋力や柔軟性・体幹などは必要でしょう。

それでは実際はどういったトレーニングをしているのでしょうか?

KEN
KEN

禰寝選手もウエイトはするんですか?

ネシメ選手
ネシメ選手

ウエイトは結構やりますね。もちろん大きくするトレーニングじゃないですけど笑。あと、トップ選手の中で多いのはチューブですね。チューブってウエイトに比べると低負荷なんですけどピンポイントで狙ったところに効かせられるんですよ。その特性を活かしてカヌーでよく使う背中にピンポイントで負荷をかけるって選手は多いですし有効だと思います。

カヌースラロームは技術系の競技なのでそこまで大きい筋肉は必要ないものの、やはりある程度のフィジカルは必要なようです。もちろん「漕ぎ」単体でも筋肉はつきます。それは禰寝選手も体験していて漕ぎでつく筋肉もあるけれどそのさらに上を行こうとすると何かしらのフィットネスは必要ということでした。

そしてここで興味深いことに「背中に負荷をかける」という話が出てきました。禰寝選手いわく主に使っているのは背中の筋肉で会話の中ではその使い方・意識の掛け方まで教えてくれました。

KEN
KEN

トレーニングでいうと人間の身体って首から下胴体と手足とかってパーツがいくつかに分かれたりもするけどパドルスポーツにおいて1番重要だと思って鍛えてる部位ってどこですか?

ネシメ選手
ネシメ選手

背中です!(即答) トップ100人に聞けばみんな背中って言うと思います。腕とかよりも遥かに大きい背中の筋肉を重点的に鍛えますね。

禰寝選手にトレーニングの例を聞いていくとその都度やはり背中周りの筋トレを例に挙げてきました。チューブしかりジムしかりやはりカヌー競技には背中の筋肉が重要なようです。ジムにあるマシンで言えばプルダウンやローリアデルトといったところでしょうか。ダンベルで言えばベントオーバーローやリアフライといった種目でしょう。

このあとでストロークする時の背中にかかっている意識の点まで解説してくれました。それは長くなるのでまた別の項で分けて解説していきたいと思います。

冬季間のトレーニング

今の時期カヌーはシーズンオフです。ラフティングもほとんど同じでしょう。

そこでトップ選手である禰寝選手に冬季間の過ごし方を伺ってみました。

KEN
KEN

冬はどうしてるんですか?スラセンって水抜きますよね?

ネシメ選手
ネシメ選手

そうですねスラセンも清掃期間ですし、今年は白丸湖(奥多摩町)も抜水されるので静水が少ないんですよ。江戸川区に左近川ってのがあってそこにゲートがあるのでそこで漕いだりする予定です。

基本的な過ごし方はオンシーズンと変わらず乗艇できるのであれば基本的には乗艇練習をするそうです。しかし、環境としてスラセンが使えなくなるので御岳で時折漕いだり左近川で静水練習をするそうです。

静水練習もベーシックドリル・テクニック・フィジカルで大きく分けていてそれをメニューに沿ってこなしていくそうです。スラセンが使えなくなるので陸上練習の頻度が上がりその重要性についても語ってくれました。

ネシメ選手
ネシメ選手

結局さっきも言ったんですけど、ウエイトやってちょっとは大きくしてあげないと自分の限界値が伸びないんですよ。漕ぎだけだと追い込みきれないというか・・・。そこで冬はそういう基礎にあてる期間にしてます。

シーズンインしてしまうと次々とジャパンカップがあったり選考会があったりと調整やコース練習で基礎練習にあてる時間が思ったようにとれなくなってしまうので、ある意味ではシーズンオフの冬季間というのは今年取り組んできた漕ぎを見つめ直すいい時間なのかもしれません。

具体的なトレーニング方法

ここからはさらに深掘りして少し具体的な練習内容について聞いてみました。

具体的なトレーニング方法:①練習計画

まずはそもそもどういう風にして練習計画を立てていくのか聞いてみました。

KEN
KEN

ラフティングとかだとテイケイ以外のチームってほとんど練習計画とかなくて・・・。決まったドリルとかを持ってるチームはあるんですけど、禰寝選手はどういった感じで練習決めてますか?

ネシメ選手
ネシメ選手

まず大きな最終目標を決めます。今の自分でいうと「ロサンゼルスオリンピック」です。そこから逆算していって年間の大きな目標を決めておきます。さらに今年の目標を具体的に決めておいて、そこから月ごとの大まかな目標を算出します。その中で具体的にこの日は何をするのかなどを決めるのは1ヶ月単位です。

大きな目標→年間目標→月間目標まで決めておいて1ヶ月の始まりに「この週はこれに取り組む」という計画を立てて取り組んでいくそうです。そのため週の始まりにはこの日はどんな練習をしようという内容は決まっているそうです。やる内容は決まっているのかという質問に対しては「決まってはいるけど具体的な本数とかまでは決めていない。」ということでした。しかし、本人の中では「その課題に取り組むならこういったメニューが有効。」といった引き出しは持っているようです。

具体的なトレーニング方法:②コース練習

実際にコース練習に出る時はどういった感じで練習しているのかも聞いてみました。

KEN
KEN

コース共用は基本1時間ですがどういった感じで練習は分けていますか?

ネシメ選手
ネシメ選手

まずコースを大きく何セクションかに分けるんです。その上で「このエリアであればこんな練習ができそうだ。」というアイディアを用意していってそれをこなしていく感じです。コースは上から下に流れるので順番に降っていきながら課題に取り組んでいくっていうスタイルです。

禰寝選手ほどのレベルになると多少のコースなら漕ぎ登れるのでその場に滞留できてしまいます。ラフトの練習だとなかなかコースの漕ぎ登りは難しいかもしれません。しかし、目安となるエディーなどでコースセクションを区切って意識を変えて練習していくという練習スタイルは取り入れられます。

ネシメ選手
ネシメ選手

あと、コース(練習するゲート配置)の組み方ですけど、自分は「こんなコースあるわけねーじゃん!!」というコースを練習します。とんでもないところにアップゲートおいてみたりウエーブのとんでもないところにスタガー張ったりとかします。練習なんで難しければ難しいほどいいです!普段からそんなあり得ないセットやってると本番で多少キツイのがきても「まあいけるかな」ってなるんで精神的にも安定します。

基本的には毎日しっかり計画を立てた上で練習しているので、よく出るゲートの組み合わせはほぼ網羅しているようです。その上で「あり得ないゲートセット」に取り組むことにより穴を埋めていく作業が必要になるのでしょう。

さらに禰寝選手は「このコース(河川状況)でゲートセッターが〇〇さんならこんなセット(ゲート)になるよな。」という予想もつくそうでセッターによって癖があるという話もしていました。実は御岳カップなどでも同じような現象が起きています。最近のセッターはハラウの高畑さん(ヤクさん)です。私も出ていない期間がありましたがここ数回のセットは「似ているというかお題としては一緒だな」と感じていました。様々なレースを経験しゲートセッターの意図を読み取ろうとして駆け引きをしている禰寝選手はより高次元でその予想がつくようです。

※余談ですが、ヤクさんのラフトセットは中速〜高速セクション(ゲート間少し広め)で岩の右か左かを悩ませるような戦略に幅を持たせた場所が数箇所あるセットが多いです。あまり低速でクイックに船を回転させるようなセットは組まない傾向にあります。それもヤクさんの戦略で出場者にレベルを合わせてのことだとは思います。

具体的なトレーニング方法:③ウエイト・陸トレ

主に背中を鍛えるといっていましたがどのように陸トレには取り組んでいるのでしょうか?

KEN
KEN

一昨年青森に矢澤選手を訪ねて練習に来た時に人生初でスプリント艇を一発で乗りこなしましたが、何かバランストレーニングとか他のトレーニングは取り入れているんですか?

ネシメ選手
ネシメ選手

バランストレーニングだけって事はないですけど、体幹は大事だと思っています。ただ、体幹も体幹だけやるってことはないです。例えば片膝立ちでショルダープレスをやったりとかバランスとりながらウエイトしたりといった感じでウエイト+αといった感じで組み合わせています。

腕立ての時バスケットボールを持って腕立てをしたり、バランスボードの上でサイドレイズをしたりなど身体のどこかしらでバランスをとりながら負荷をかけるという練習をするそうです。カヌーは水に浮いているだけで必ずどこかしらでバランスをとりながら力を発出するので普段からそういった意識を持つようにしているそうです。この練習は取り入れている選手も多く、腕立て伏せというと基本は胸筋に効かせるトレーニングですがボールを挟んでバランスを悪くすることにより周辺の小さな筋肉やサポートする筋肉にも刺激を与えられます。

禰寝選手は普段からトレーニングをしているからいいのですが、これからトレーニングに取り組む方々はあまり重いウエイトでやらないようにしましょう。あえて不安定な状態でやる練習なのでちょっとのミスで大怪我につながる可能性があります。

KEN
KEN

先ほど背中メインで鍛えるという話をしていましたが、足とかは鍛えないんですか?結構カヌー選手足細い人多いですけど。

ネシメ選手
ネシメ選手

足鍛えない人確かに多いですね・・・笑。自分は割とバランスよく鍛える派で、サーキットトレーニングとかでメニューを組んでいてその中で足も鍛えます。背中とか肩周りに比べるともちろん比重は低いですけどやらないわけではありません。

これも考え方や選手によるようですが禰寝選手は全身バランスよく鍛えるタイプのようで、ストレッチャーを踏む足も重要だと考えているそうです。ラフティングの場合はカヌーと違ってストレッチャーがなく、自ら踏み込んでいかなければならないのでより足のトレーニングが重要になってきそうです。

そもそもカヌーはラフトに活きるのか

そもそもの疑問ですがカヌースラロームの技術はレースラフティングにも活きるのでしょうか。禰寝選手はコンセプトでラフトボートも何度も乗っていますがどういった感想なのでしょうか?

KEN
KEN

忖度なしでそもそも論カヌーの技術はラフトにいきると思いますか?

ネシメ選手
ネシメ選手

繋がってると思いますね!基本的には水に浮いているボートなんでただ大きいだけで技術は繋がっています。ラフティングの人も環境やボートがあるのなら挑戦してみれば面白いと思います!

現在チームテイケイの中野選手も元々コンセプト出身で禰寝選手が小中学生の頃一緒に練習していました。中野選手も元はスラローマーですがレースラフティングもとてもうまいです。テイケイにいる金谷選手も同様です。元全日本チャンピオンでレースラフティングもものすごくうまいです。禰寝選手の言うようにカヌースラロームの技術はラフティングにも活きるところがあるみたいです。

禰寝選手の思う「ストローク」について

みなさんお待ちかね日本代表の禰寝選手が思う「ストローク」についてその真髄を聞いてみました。

そもそも禰寝選手の漕ぎはフランス式!?

KEN
KEN

僕らは2人とも小田さんっていう共通の師匠がいるわけですが、小田さんのフォワード理論は今でも正しいと思いますか?

ネシメ選手
ネシメ選手

「小田さんの漕ぎ」ってフランス式のやつですよね?正しいも何も自分そのスタイルですよ!笑

KEN
KEN

フランス式!?何それ?笑 フランス以外とかもあるの?

ネシメ選手
ネシメ選手

パドルって両手で持つじゃないですか。上手側に主眼を置いたのがフランス式で引き手(下手)側に主眼を置いたのがドイツ式です。青梅市カヌー協会なんかはみんなドイツ式ですよ。どっちがいい悪いじゃなくて着目点の違いみたいなものです。

日本にちゃんとした理論として染み付いているのはフランス式とドイツ式の大きく2つの理論で、他にもいろいろあるようですが禰寝選手も詳しくはわからないようです。

さらに詳しく聞いていくと面白いことも話してくれました。

KEN
KEN

小田さん結構「引き手は指4本ひっかけてこうやって背中で引くんですよ!」って表現しない!?フランス式ならそこまで引かないんじゃないの!?

ネシメ選手
ネシメ選手

その表現と同じくらい「上手をプッシュ!!」って言いません?笑

KEN
KEN

言うね!!笑

ネシメ選手
ネシメ選手

厳密にはプッシュじゃないんですよ。小田さんも目に見えるようなプッシュはしませんし・・・。でも構えた上手には押す力が働きますよね?そこを軸というか基点として下のブレードが動くイメージなのがフランス式です。

ストロークイメージ図

ストロークの際に上手には赤矢印のようなベクトルパワーが発生し、引き手側にはオレンジ矢印のような力が生まれています。これのどちらに意識を持っていくかの違いです。

ネシメ選手
ネシメ選手

外から見ていて見えるレベルでプッシュすると今度はパドルが寝てきちゃうんですよ。そうすると水を掘り上げてしまうのでよくないです。押してる手に意識の比重が大きいっていうだけです。うまく言えませんけど笑。

意識的・感覚的な話ですが言われてみれば微妙な違いがあります。最初の動画を見返してもらえればわかります。禰寝選手自身「日本選手権の動画などを探してみてもらえば自分だけちょっと違う。」といっていました。確かによく見ると武藤選手や三島選手とは違います。ただ、何度も言いますがスタイルの違いというだけで決してどっちがいい悪いの話ではありません。

漕いでいる時の意識

ストロークの細かい技術というのは私が記事で書いているものと同じなようなので、そこら辺が知りたい方は過去記事を読んでみてください。(入水/キャッチストロークフィニッシュ/リカバリー)

禰寝選手はそんなストロークする際の身体の意識について語ってくれました。

ネシメ選手
ネシメ選手

トレーニングでもそうなんですけど、ストロークの時は常に背中にストレッチがかかっている状態っていうのを意識しています。フォワードのポーズにいくと必ず片手が前ですよね?その伸ばした手の肩甲骨周りにストレッチがかかっている感じです。ストレッチがかかった分収縮運動できるといった感覚です。

KEN
KEN

ストレッチってことは力んでるのとは違うよね?

ネシメ選手
ネシメ選手

力んではいないです。筋トレのマシンでプル(ローリアデルトなど)をやる時に80kgとかでやると最初のポーズってバー握って肩甲骨全開で伸びてますよね?でもまだ力んでないじゃないですか。その状態に近いです。引き手側の背中がバーを握っているような伸び方を意識しています。

禰寝選手はカヤックの選手なので、さらにそこから漕いでいくと上手が伸びていって逆サイドにストレッチがかかるという意識で常に背中のどこかが伸びている状態というのを作っているらしいです。ラフティングやC-1でも応用できて、フォワードのポーズの際にはシャフト側にストレッチがかかりフィニッシュではTグリップ側にストレッチがかかっている状態ということでしょう。ここで着目すべき点は「力んではいない」という点です。フォワードのポーズに入って次のストロークが始まる際にも力まず、むしろストレッチして脱力している状態が理想ということです。

理想の漕ぎを手に入れるための練習

それでは禰寝選手はどのようにしてそんな感覚を手に入れたのでしょうか。

KEN
KEN

これからレースとかやっていこうとしてる人がそんなストレッチしてる感覚とかを手に入れるための練習でオススメとかってありますか?

ネシメ選手
ネシメ選手

ロング漕です!ひたすら追い込んで漕ぎ込んでどうすれば効率よく漕げるのか、力が抜けて大きな筋肉で漕げるのかを探していくしかないです!! 嫌になるほど一緒にやったじゃないですか!?笑

KEN
KEN

あの時な!笑 冬休みだ春休みだって言って1月2月も朝5時から漕いでた時な・・・。

ネシメ選手
ネシメ選手

ロング漕して追い込み続けるとだんだんそれが意識しなくてもできるようになるんですよ。そして最終的には歩くのと同じ感覚で漕ぎたいんですよ。歩く時ってお尻に力入れて足首は・・・とか考えないじゃないですか。そのレベルまで漕ぎこめば勝手にいい形になってるはずです。そのためにはでもロング漕以外でもずっと背中意識しないとダメです。意識してるだけでちょっとずつ変わっていきます。

意識しなくてもできる能力を「サイコモータースキル」などと言います。精神反射的に意識しなくてもできる能力のことでこの領域までいくとなるとかなりの漕ぎ込みが必要です。冬の間も毎年1月1日から休むことなく漕ぎ込んだ禰寝選手が言うと説得力がありますね。

レースの組み立て方

最後に禰寝選手に大会当日など本番のセットを見た時にどのようにレースを組み立て攻略していくかの話を伺いました。

KEN
KEN

コースが確定して戦略を立てるってなったらどうやってレースを組むんですか?結構攻めるのが好きな選手と安定させるのが好きな選手といると思うんですが?

ネシメ選手
ネシメ選手

ラフトやC-1はわからないですけど自分は攻めます!攻めないと勝てないんで。普段からあり得ないようなセットで練習してできないゲートはないようにしてるので置きにいくようなレースはしないですね。ただ、全体見てペース配分はしますし技術面でもベーシックな技術か応用的な技術かで使い分けたり戦略分けはします。

練習を組む時と一緒でコース全体を大きく区切っていくことによりペース配分を行い、セクションごとに大枠を決めた上で細かい技術的な戦略を立てていくようです。禰寝選手が取り組んでいる男子K-1はスラロームでは最も競技人口が多くトップレベルではすでに100分の1秒単位での争いになっています。90秒のコースでそこを削り出すには攻めないレースはできないところまできているのですね。C-1もセットによる左右差や回転数の関係から100分の1秒の争いになることは稀ですが、それでも1秒を切った闘いもザラにあります。レースラフトではまだまだその次元の勝負にはなっていませんが近年のラフティング技術の進歩も凄まじいので近い将来そういった高次元な闘いがあるかもしれません。その反面こういった攻めたゲート攻略というのは禰寝選手レベルで練習しているからこそできるものであって、レースラフティングによくある急造チームやレース数ヶ月前からチョロっと練習するだけのチームが真似をすると大体失敗します(身に覚えがあります・・・)。普段から積み上げることが大事というなんとも耳の痛い話でした。

まとめ

実はこの対談の話は8月くらいから持ち出していたのですが、シーズン中で練習やレースが忙しすぎるからオフまで待ってくれと言われてシーズンオフのこの時期になりました。しかし、おかげで冬季間の過ごし方についても聞けて結果的には良かったのかなと個人的には思います。

現在大学生でロサンゼルスオリンピックで25歳、その次のオリンピックでも29歳とまだまだ伸び代がある選手です。皆さんの応援よろしくお願いします!!

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