「ダウンリバー」は「デスレース」となりました

先日JRF(日本レースラフティング協会)のルール説明会に参加させてもらい様々なレースラフティングルールを知ることができました。私が普段触れているカヌースラロームなどとは異なる点も多くあり大変参考になりました。今後のレースラフティングに役立てていきたいと思いました。

しかし、まだまだ未成熟な競技なのでルールがガバガバな点も多く「ルールの穴をつく」どころか「ハードモード設定」なルールも多々ありました。

手始めに今回は1番クラシカルな競技である「ダウンリバー」について「ルール」でも認められている「抜け道」とそれを悪用した「ド畜生戦法」について解説していきます。

※今回紹介するのはルール的にはOKでも倫理的にもスポーツマンシップ的にもNGなので完全自己責任で行なってください。一切の責任は取りません。

そもそものルール

そもそもみなさんはIRFのルールを読んだことはありますか?読んだことのない方のためにリンクは貼っておきます。リバベンなどでも概要に「IRFルールに準拠する」と書かれることがあります。

ルール18ページの「ダウンリバーペナルティー」の項目を読める方は英語の原文で読んでみてください。翻訳・要約すると、

  • (先行艇が)意図的に後方のボートが追いついてきた時にブロックしちゃダメ。基準としては2回以上方向転換して前を塞いだ時。認められた場合はブロックした艇に降下タイム+10秒、された艇に−10秒します。
  • パドルとか手で相手のボートとか選手を妨害したら違反。一回につきやったチームに+10秒。
  • 指定箇所以外で降りてポーテージダッシュしたり指定のブイとかをインカットしたりとにかくコースから外れたら+50秒

こういった内容が書かれています。

以前の記事でも紹介しましたがブロッキングはペナルティーです。抜かれそうになったチームが「ヤバイ!!抜かせない!!」といってH2Hのようにコンタクトを仕掛けたりラインを塞いでくるのは違反となります。

ルールの大穴

ルールを理解している人は気づいているかもしれませんが、これは「先行する艇」に対しての規定であり「後続艇」に対しては一切のルールがないのです。

なんならGoProなどアクションカムで撮影して音声を切ったり「撮れていない」といってカットしておけば相手がコースオープンのためにズレたものを意図的に後ろにつけて「ブロックされました。ペナルティーですよね?」と被害者ヅラできるということです。

また、先行艇はブロックが認められるとペナルティーを受けるのに後続艇はパドルや手を出さない限り何をしても基本的にはペナルティーがありません。

この先行艇と後続艇のペナルティー格差と、複数艇同時発艇という運営ファーストでコースオープン権の有無を曖昧にするDR史上最大の害悪ルールが掛け合わさるととんでもないことが起きるのです。

ルールも認めた「ド畜生戦法」

現在国内レースでDRがある大会はほぼ複数艇同時発艇なのでどの大会でも可能です。

①被害者ヅラタイム重視戦法

一つ前の項目で書いた被害者ヅラをして降下タイムを削る方法です。DRのプロテスト証明には映像が必要なのでGoPro等のアクションカムを必ず搭載します。その上で自分達の操船が映ってしまうボート後方ではなくバウの向きと相手のボートだけが映るように前方に配置します。可能であれば音声はミュートにしておきます。相手チームの「コースオープン!」や「前でて良いですよ!」という声が入ってしまうと台無しです。序盤はギリギリポケットを使って楽ができる位置につけておき、中盤から後半で一気に寄せて相手のスターンを小突き回して追いついてるよアピールしましょう。事前にコースを頭に入れておけばコースオープン可能な位置がわかるのでそのあたりでわざと左右に振ってみましょう。コーナーなど相手がバウの向きを変えるタイミングでわざとイン側についてまた下がってを繰り返すだけで映像ではブロックされて抜けない可哀想なチームを演じられます。

格上のチームがコース選択権で前にいればラッキーです。ポケットの影響である程度腕があれば格上であれ楽についていけるはずです。格上に引っ張らせることにより実力以上の降下タイムが出しやすく、その上プロテストが通れば引っ張ってくれた相手を蹴落とした上に自分達もタイムが良くなるので一石二鳥のド畜生な戦法です。

  • 証拠カメラは必須
  • ブロックされてる感が大事なので左右に振る
  • そもそもの降下タイムが遅くならないように引っ張らせながら違反(捏造)を集める
  • プロテスト失敗でも供託金5000円だけ。そもそも引っ張らせたのでタイムはいい。

被害者ヅラ戦法はローリスクハイリターンであるなかなかいい戦法です。注意点としては相手が保険として撮影していた場合は難しいということです。

◯こういった行為に対抗するカヌースプリントのルール

ラフティングではないですがカヌースプリントはこういった行為を禁止するルールがあります。スプリントではそもそもレーンが違うのでポケットは使えませんが、トップだと20km/h前後で進むので波が出ます。大体30m前後で隣の波の影響が出ますがその波に乗って体力を温存する行為が認められた場合は失格です。200mなどの短距離では不可能ですが、1000mの場合タイミング次第では30mは詰められる選手もいるので相手に先行させそれを使って前半楽して最後に刺すというクソ戦法を封じるためのルールです。

②頭◯字D風体当たり戦法

こちらも音声ミュートで映像があれば保険にはなります。最悪みられたくないところが映像に残っても「撮れていませんでした」で済むので大丈夫です。

みなさんは頭◯字Dという漫画を知っていますか?公道でカーレース(もちろんゴリゴリの違法行為)をして早いやつ決めようぜという漫画です。最初の頃は駆け引きやら技術やらで抜いたり抜かれたりをしていた楽しい漫画だったのですが、最後の方は1番イヤなタイミングでわざと車をぶつけてバランスを崩して追い越しにいくのがメインという胸糞漫画になっていました。

そうですラフティングでもこの頭◯字D戦法が取れるのです。通常F1やスーパーGTといった公式な大会では禁止されている故意な接触がレースラフティングでは認められているのです。カーレース云々というよりも全てのレース競技において故意な接触が公式に認められているのはパドルスポーツだけでしょう。

そんなとんでもルールを活用しない手はありません。

まずルールの確認ですが

  • パドルでボートを攻撃
  • パドルで人を攻撃
  • 手(スライスをしている風に腕など)でボートを攻撃
  • 手(スライスをしている風に腕など)で人を攻撃

これらは認められていませんしペナルティーの対象です。ただ・・・

  • ボートでボートを攻撃(ボートコンタクト)
  • ボートで人を攻撃

これらは認められています。

「ボートでどうやって人攻撃すんじゃ?!」と思った方!勉強不足です。カヌーポロでは日常茶飯事です。この要領で勢いよくバウから突っ込めばラフトでも1人くらい潰すことは可能です。

このルールの穴をつきます。

狙い目はクイック過ぎず大振り過ぎないコーナーです。クイックな場所は狭い上に失敗すると自分達がスタックします。大ぶりなところは相手チームのコーナーエントリーが目に見えないのでタイミングが取りづらい上にリカバリーされるので確実に仕留めるならその間です。みんな大好き御岳渓谷なら軍畑大橋下流か沢井体育館下がオススメでしょう。多摩川以外ならそのほかに人工物などがあるとなお良いでしょう。

やり方は簡単で相手がコーナーエントリーに角度をつけたらイン側の後選手のパドル入水位置を狙ってバウから体当たりです!

これによりインの後が操船不可能な上に遠心力で外に膨らむ力を借りられるのでガンガン押し込んでスタックさせたり回転させちゃいましょう。外側に人工物があるとそこにはめることもできるので最高です。最悪人工物で死者が出てもルールでは認められているので回避できなかった相手が悪いので気にする必要はありません。

図のように真後ろから小突くだけだと相手と同じ向きなので意味がないのですが斜めに押すと遠心力で膨らもうとするスターンをさらに加速させられるのでより効果的でしょう。また、1番右のように相手のイン側スターン選手のパドリング位置を潰せばスイープ立ち上げを封印できます。ここで無理に漕ごうとスライスでパドルを捩じ込んできたら「パドルや手による妨害行為だ!」といってプロテストできる案件になるのでブロッキングとしてさらに10秒引いてもらえます。ここで無理にスターンラダーで戻しても減速して横での競り合いになるのでそれも「ブロキングだ!」といってプロテスとしましょう。さらに横付けされたのをパドリングで回避しようとすると水色の点線方向にしか出られないので一回転して後ろにつけていなすかラインを外す以外の方法しか無くなります。これが公式ルールで認められた「ボートコンタクト」です!OKと言われているので後ろをとってガンガン当てましょう。

応用技として相手の回転軸付近を押し込んで人工物に張り付けて本気で「潰す」方法もあります。

回転軸付近にインから当てると回転ではなくただ横滑りするだけになるのでそのまま押し込んでいけます。天竜川など人工物がある川であればテトラポッド目掛けていけばいいですし、長良のような川であれば魚用の罠や岩壁に目掛けて押し込めばいいです。もちろんパドルや手でボートの接触を解除しようとしてきたらプロテストです。そして相手を押し込む直前に進行方向を変更し相手ボートを押し付けながらクッションにして自分達は逃げましょう。

何か言われたら「抜こうとしたらブロックされました。僕たちは被害者です!」で逃げ切りましょう。

当然ながらレースラフティング以外の全てのレース競技で禁止されている行為ですがボートコンタクトがOKなレースラフティングでは合法です。こんなのをサーキットでやった日には永久追放ものでしょう。これが合法なのはもはや「デスレース」の世界線だけです。

デスレースの果てに・・・

昨年のリバベンは色々と変更があって大変でしたが実は事故も起きていました。スラロームの新潟大学の2本2フリップなんて可愛いもので、ダウンリバーにおいて弘大探検部がとあるチームに押し込まれて外側に沈んでいた鉄筋に刺さりコロラドをバーストさせました。鉄筋によるバーストだったため傷口が悪くリペアも不可能だったようです。

場所は軍畑大橋下流の右コーナーです。イン側から押し込まれ本流を外してアウトに膨らんでいき廃材の鉄筋に刺さりバーストです。なんとかゴールはしましたがフロアがバーストしたため途中棄権も考えられるレベルでの漕行だったと言います。

後ろのチームが体当たりというド畜生戦法により事故が起きたのです。ボートだったからよかったものの固定してあるフットストラップのましたから貫通してきたり固定しているスォートの下から貫通したら足ごと貫かれて緊急搬送の可能性すらあった案件です。

浅い場所で押し込むということはこれだけの被害をいとも容易に出せてしまうのです。

この害悪デスレース式体当たりを禁止しないIRFは競技に真摯に向き合っていないと言わざるおえません。

対策

JRFの小泉さんに問い合わせたところ「後方チームの接触は現状ペナルティーなし」ということでした。対策としては「危険箇所をキャプテンミーティングなどオフィシャルな場で確認して他のチームを牽制したりする。」くらいしかできないようです。国際大会などではレアケースではありますが危険箇所が追い越し禁止セクションに指定されることもあるようです。国内大会でも状況によってはそういった対策もありかもしれません。しかし、どのみちルールは守ってくれないので自分たちで当てられないように対策するしかないようです。

そもそもの原因

「ルールが古い!」この一言に尽きます。このルールは1艇ずつ1分間隔などで発艇していた時のものでしょう。1艇ずつなら後ろの船に追い付かれた場合コースオープン権の所在が明らかになります。しかし、複数艇同時発艇な上に組み合わせが順位の近いチームだと「隣のチームに勝てば勝ち!」という心理が働くためぶつけたくなりますし前のボートも競り合いたくなります。このようなシステムが事故やケガのトリガーになっていることも考えずに「複数艇いた方が安全だし」「盛り上がるから」とか言っているIRFは早急に解散すべきです。レース中に隣の艇がフリップしても誰も助けません。むしろ「やったー!勝った!!」です。

ルールをアップデートしレースシーンに合わせたルール作りを行わなければ今後の発展はないでしょう。

そしてそもそもこういった害悪ルールに対して声を上げるのは選手の役割です。ルールを理解し「何でこれがいいんだ?」と疑問を持つところから始めましょう。そして声を上げていきましょう。

まとめ

今回はデスレースと化しているダウンリバーについて解説しました。ダウンリバーだけではなくH2Hなんかもそうですが一度前を取られたらハードモードという時代もありましたが現状ダウンリバーにおいてはハードモードどころかやりたい放題のデスレース祭りがダウンリバー後追いです。活用するかしないかはお任せしますが自己責任でお願いします・・・笑

次回はスーパーハードモードだったスラロームについて書こうかと思います。

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