スプリントカヤックに乗ってみて思うこと

昨年の夏ごろから青森県カヌー協会の木立さんの勧めでスプリント艇にも乗っています。スプリントとスラロームはカヌー界で言えば対局にいるような存在と思われがちですが実は通づるところもあったりします。

通づるというよりは「こういういいところもあるよね!」といった相乗効果の方が大きいといった印象です。今回はそういったところについて不器用ながらまとめて行きたいと思います。

スラロームのいいところ

スラローム競技のいいとこというとなんといっても激流を下る爽快感です。普通の人が見たら「マジか…」と思うような激流を競技をしながら下る爽快感は半端じゃありません。

細かいことを言うと流水域でのバランスの取り方やパドリングなど色々有りますがとにかく素人から見てもすごいとわかる技術があります。

また、スラローム独自のものとしてゲートが挙げられます。ゲートを首だけでクイックに通せた時やスタガーをミスなくスムーズに流れた時はアドレナリンが出ますし、他の選手が苦労していたゲートを一発で通れると気持ちよくなります!このような技術的な向上がスラローム競技の魅力ではないでしょうか。

スプリントのいいところ

スプリント(フラットウォーターレーシング)のいいところといえば圧倒的なスピード感です。スプリント艇はスラローム艇や他の船などの倍近いスピードが出ます。水面を走っている感覚や風を切っている感覚は他の船と比べても段違いです。

また、スプリントができるところというのは最低でも200mや500mの直線コースが確保できる場所になるので往々にして景色がいいです。

全国少年少女カヌー大会が開かれる富士五湖の一つ精進湖カヌー競技上は富士山を望みながらのレースになります。

晴れた日には絶景のもとのレースになります。

また、現在青森チームが練習している鶴の舞橋(青森県鶴田町)も岩木山が見える絶景スポットな上にさらに日本一の木造三連太鼓橋がかかっているのでかなりの景色です。

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スラロームや他の競技も自然の中なので景色やロケーションがいい場所が多いですが、スプリントも湖のオープンな感じと自然が融合するのでなかなかの絶景です。

スプリントカヤックに乗ってみて勉強になるところ①バランス

スプリント艇の一番の特徴といってもいいのが圧倒的な細さです。普及艇ですら肩幅よりも狭い船がほとんどです。

現在のレースシーンで使われている船はほぼ逆三角形で1番広いコックピットのコーミングも肩幅以下です。さらにそこにほぼ長座の姿勢で乗るので膝(ニーパッド)を使った安定感の確保ができないのでかなりのバランス感覚が必要です。

私も昨年8月に初めてスプリントカヤックに乗りましたが漕ぎ出すどころか乗ることもできず1時間ひたすら転んでは水を抜きを繰り返していました。様々な船をかじってきましたが圧倒的にバランスが悪いです!笑

しかし、そこから学ぶものは大きく、いかに自分たちが普段適当なバランスでカヌーに乗っていたのかということを痛感しました。私は普段スラロームのC-1に乗りますが、多少頭を出したり雑な漕ぎをしても沈まではしませんがスプリントは少しでもダメなところがあるとすぐに沈します。『ボートのセンターに乗る』ということを教えてくれるものでかなり参考になります。

漕げるようになっても同様で、スピードが乗ってくると回転数が上がりパドリング回数が増えるので雑なパドリングが入ることが時折ありました。しかし、それも「雑な漕ぎ=パドルの抵抗が少ない=支えが崩れる=バランスが崩れる=沈」という結果で帰ってきます。

トップスピードは段違いに早いけど安定しないのがスプリント競技です(トップまで行けばそんなことはないんでしょうが…)。

スプリントカヤックに乗ってみて勉強になるところ②パドリング

レースラフティングをやっている多くのチームがスタートダッシュの漕ぎやダウンリバーのパドリング、スプリントのパドリングの違いで悩んでいました。実際私も明確な答えは持っておらず、チームによる・スタイルによるという便利な言葉に逃げていました。しかし、スプリント競技を練習していき経験者や指導者の話を聞くうちにスプリントカヤックなりの答えを見つけることができました。

スプリントカヤックは細身ですがシングルで5.2mと非常に長くスタート時の水の抵抗はかなり大きいです。さらにパドルもスプーンパドルでキャッチが強いので下手に回そうとすると引っかかってしまいひっくり返ります。そのためスタート時はストローク幅を狭めて小刻みに早く漕ぎます。伸ばそうとする漕ぎではなくとにかくボートを動かして初速を作り出す動きをします。

初速ができたら加速させていく漕ぎに変えて行きます。動き出しさえすればパドルの抵抗が強すぎてひっかけるということはまずないのでガンガン出力して加速させて行きます。200mなどの短距離ならこのまま出力して最後まで漕ぎ切ります。

500m ・1000mなどの中距離や5000mを超えるカヌーマラソンクラスになるとひたすら出力していては体力がもたないので一度加速させた力を失わないようにキープする漕ぎへと変えて行きます。イメージとしては体のコアをうまく回転させて漕ぐといったところです。

大きく分けて『初速期』→『加速期』→『維持』といった3段階にパドリングが分かれているといった印象です。この3点で明確にパドリングの質が変わります。これはレースラフティングにも活かせると感じておりピッチやパドリングの質を変化させることによりメリハリを持たせレースを支配していくという技術の応用になります。

スプリントカヤックに乗ってみて思うこと③スタミナ

スプリントカヤックは艇速が早くスムーズに水面を走る足の速い船という印象があるかもしれませんが、実際はバランスをとっているだけでも神経を使いますしパドルもスプーンで抵抗が大きいので長時間漕いでいるとかなり疲労します。ラフトボートも相当重いですがシングルで漕ぎ続けるスプリント艇もかなりきついです。

また、慣れて来れば来るほど同じ動きを続けるのでゲシュタルト崩壊に近いような感覚が芽生えてきてバランスを崩したり、疲労によるどうでもいいミスが出てくるようになります。

元々艇速も早く良く進む船ですが漕ぎ続けるにはかなりの集中力と技術・体力が必要になります。

また、バランスが悪いので横波にはめっぽう弱いです。慣れていないとちょっとした波風だけでも沈するほどです。波の向きや風の向きもスラ艇以上に気にするようになりました。それを気にしながら出力するのでかなり神経も使いますし漕ぎ続けるにはスタミナが要求されます。

まとめ

今回はスプリント艇に乗ってみて感じたことを簡単まとめました。

もちろんトップの選手や指導者からすると「それだけじゃない!」と言われる内容ですが受け付けません!笑笑 私自身レースラフターであり練習の一環としてスプリントに乗っているだけなので…。

ゲレンデも違うし形状も全く違うスプリント艇ですが同じく水に浮いてパドルで漕ぐという競技なのでやはり参考になるところはあります。何よりもスプリントもスラロームもパドルスポーツとしてはラフティングよりも歴史がありオリンピック種目としても成り立っているので良く研究がされていて参考になる点が多いです。

行き詰まった時、新しい刺激が欲しい時にはスプリントやスラロームを初めて見るのもオススメです!(私はドップリとスプリントにハマりました!笑)

皆さんもぜひスプリントや他の船に乗ってみてください!

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