御岳合宿Day5

この日は御岳時代のガイド仲間であるアッキーさん(ぼちぼちアドベンチャーすその代表)からのリクエストでメディック・ファースト・エイドチャイルドケアプラス講習会をしに奥多摩へ出張していたので終日練習に参加できませんでした。講習が終わって4時くらいにリバーハウスに戻ると丁度回送から帰ってきた小田さんが「寒いよ〜(泣」と言いながら車から降りてきました。聞くところによるとだいぶ早い段階でラフトに引かれて沈したそうです・・・笑。

詳しくは聞いていませんがDay5は簡単なスカウティングのやり方と御岳ダウンリバーのお題をやったそうです。何度も小田さんと御岳はダウンリバーしましたが本当に各瀬ごとに別のお題があってまともにやりながら下ると丸一日かかります。

今回は練習に参加していないので振り返りというよりは「ダウンリバーしながらの練習」について解説していきます。決して競技の「ダウンリバー練習」ではありません。ツーリングしながらお題を与えられ、こなすだけでスキルが上がる練習です。

ダウンリバーしながらお題

ボートは基本的になんでもいいです。以前新潟の五十嵐川にみんなでツーリングに行った時はダッキーもプレイボートもSUPも混合でお題を出してくれました。もちろんラフトでも問題ありません。各ボートに合わせたお題指定をできるのがツアーリーダー・コーチの役割です。もちろんラフトでも性能に合わせたお題を出すだけです。練習というよりは遊びながら条件づけをして楽しみながら取り組めるお題です。「そこから全力で漕ぎ登れ!」と言った鬼のようなことはしません。どちらかというと「このウェーブを踏み切りの一打だけで向こうまで」といったものや「真ん中でサーフィンしに行って途中でスイープして戻ってくる」といった感じです。簡単な遊びを交えながら練習していきます。

ただ下る時も・・・

それでも全ての岩や瀬でやっているとキリがないのである程度流れがない瀬はバンバン降ります。その時も「できるだけエディーをとってアップゲートしながらいくのと、できる岩は全部Sターンをする」と言われたことがあります。エディーをとって休むというのは多くのチームがやるでしょうが、エディーをとったらそのまま出ていきます。アップゲート中にとまることがないように一度入ったら出なければなりません。そこまで含めて練習です。一連の動作・ラインどりの中で自分なりにここのエリアならどういうゲートを想定するという練習です。

特に重要なのはSターンです。近年のスラローム競技においてはあまり見ないセットです。セットできる場所が限られるというのが大きな理由で、御岳などの場合は右エントリーしかできずもう使い古されたゲートセットという印象があるのでしょう。

Sターンは上の図のようにS字を描くように岩下を抜けるようなセットです。Sターンもただエディーに入ってアップゲートしてもう一度ストリームインしようとするなら簡単ですが、高速で抜けて行こうとするとかなりシビアなものになります。図の場合右岸エントリー左岸抜けですが、この場合エントリー時の①では左リーンをしています。そこからゲートライン上ではフラットになりストリームインに入る②では右リーンになります。高速で行けば行くほどこのセクションが狭まっていきリーンの切り替えがシビアになります。ラフトの場合リーンはそこまでシビアではありませんが、クルーの意識がどこにあるのかが重要になります。エントリー→ゲートライン通過→ストリームインと目まぐるしく状況が変化するのでいまボートがどの状態で何をしたいのかという意思共有が非常に難しくなります。ここの意思共有がずれるとエディーにエントリー中にストリームインしようとしている訳のわからないボートが爆誕してしまいます。スラロームC-1やダッキーC-1のうまい選手をみると参考になります。クロスの入れ方や引っ張り方でどのタイミングで切り替えているかが見て取れます。

このSターン練習を可能な限り色々な岩でやりながらダウンリバーします。できるだけ左右均等にやるのがポイントです。特にダッキーのシングルブレードはクロス側でのエントリーがしんどいのでやりたがらない傾向にあります。苦手方向を練習するのも非常に重要です。

行き着く先には・・・

ダウンリバーのお題をこなしながら下るというのはあくまでもツーリングや遊びのお題です。実はDay4以前に小田さんから「彼ら川下りはしてるの?御岳下ったことある?」と言われほとんどダウンリバー経験というか楽しい川下り経験はないという旨を伝えていました。そこで最終日だし練習も兼ねて少し遊びながらダウンリバーという運びでした。本来川下りは楽しみながら遊びながら成長していくものという小田さんからのメッセージでした。

本気で練習するならエディもー何も取らず杣の小橋〜喜久松間を最速ラインで約85%(心拍150〜160bpm)出力・スターンラダーゼロで御岳フルラン練習となります。これはこれでどんどん景色が変わるので楽しいのですが30分前後漕ぐのでかなりキツいのとラインをミスると練習にならないのでかなり先の練習です。ポイントはラインミスなし・常に85%です。本来ダウンリバーは「ラインどこだろうな〜。あっちの方が早そうだな〜・・・。」なんてやる競技ではありません。全速力で決まったラインを長時間漕ぎ続ける競技です。カヌーで言えばワイルドウォーターのクラシックです(wild water canoeとYoutubeで検索するととんでもないものが出てきます。ほぼスプリントですが・・・)。競技を極めるならダウンリバー練習の行き着く先はこの高速ダウンリバー練習です。

タイムを出す練習と感覚を磨く練習

前項で紹介した高速ダウンリバーは「タイムを出す練習」です。A地点からB地点という明確な基準がありそこをどれくらいのタイムで下れるかを磨いていく練習です。

それとは別に小田さんが今回与えたダウンリバーしながらお題をこなすというのは「感覚やテクニックを磨く練習」です。

例えばスイープのやり方を教わったとして教えてくれた人の感覚を聞いてもピンとこないはずです。

Day5まとめ

Day5は参加できなかったので厳密にはどんなお題をしたのかも分かりません。ただ、御岳はパドラーを成長させてくれる川なので間違いなくいい練習をしてきたことだろうと思います。私の練習もそうですが小田さんの練習も基本的には「練習方法の紹介」「着目点の実演」です。これを自分たちで持ち帰って次の練習に応用し発展させることが重要です。紹介されたものをひたすら繰り返すだけではすぐに頭打ちがきます。アップデートをさせるのは皆さん次第なのです。練習もそうでその練習が仮にナショナルチームを出していようと練習のおかげではなくやった選手本人の功績なのです。いくらいいものを持っていようと活用しないと宝の持ち腐れです。これからの躍進に期待です。

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