ルールを知ろう!!「スラローム」

前回はダウンリバー競技で相手を出し抜く方法について解説しましたが、今回はみんな大好きスラロームについての最新のルール解説です。

そもそものルール

ダウンリバー同様IRFのルール規定にスラロームの項目も存在するのでぜひ読んでみてください。

というかダウンリバーのルールもそうなんですけどIRFのルールって半分以上「ルール」じゃなくて「競技概要」なんですよね・・・ 

カヌーのルール規定(JCF)と比較してしまうとラフトの規定は正直ガバガバすぎてルールじゃありません・・・

読んでいて疑問しか生まれない上に解釈がわからない・・・

ということで、聞いてみたものをまとめました。

多くのチームが陥る罠

ガバガバな上に言葉足らずなジェネラルルールのせいで国内でも完全にルールを理解している人はどれくらいいるのだろうかというレベルですが、以前から疑問に思っていた点も含めて聴く機会があったので聞いてみました。

通過→逆通過→通過

ゲートを間違って反対方向(大体はアップゲート)に通過すると一発で不通過判定を受けるというのは有名な話です(逆通過)。それはカヌースラロームも同様で逆通過は不通過判定です。ただし、一度正しい方向から通過したけど流れで落とされたり岩に当たったりして逆通過してしまいそれでも最終的には正しい方向に抜けていった場合はどうでしょうか?

通過〜逆通過〜通過の例

ラフティングだとよくありませんか?御岳カップでもトリケラ下の激狭エディーにアップゲートが張られて、勢いで入ったけど岩に当たって押し戻されてしまい体勢を立て直してからもう一度通過するという事例です。

結論から言うと不通過判定です。

レースラフティングの場合はどのタイミングであれ誰かが一度でも逆通過した瞬間「不通過確定」です!

ちなみにカヌースラロームでは1回目に逆通過せず押し戻されたりやり直した場合は最終的に正方向へ出ていれば「通過」判定です。

脱艇ゴールは認めるクセしておいて厳しくないか・・・?(※レースラフティングはゴール時クルーが欠けていても+50秒でDNFではありません。)

そこで問題になってくるのが首通し(ラフト版なんちゃって首通し)です。よくポールギリギリで体を後ろにのけぞらせて避けている人みませんか?その人が体を起こした瞬間ゲートラインを切れば「通過」でボート慣性が残っていてそのまま「逆通過」すれば4人仲良く「不通過」判定という理不尽仕様です。

とにかく誰か1人でも1度でも逆通過したらアウトなのがレースラフティングです。

1人通れなかったからやり直し

今度はダウンゲートでよくある事例です

通過をやり直し

図のように前2人は届いたけど後ろが届かなくて「やばいスターン通ってない!やり直そうぜ!!」と言ってやり直すシーンです。御岳でもリバベンでもよく見ます。今回のポイントは「逆通過した人はいない」という点です。

はい!不通過です!!笑

一つのゲートに対する試技は一度までです。これも後戻りの禁止に対して後戻りと判断されるそうです。

ちなみにこれもカヌースラロームでは通過(OK)判定です。

こんなデカくて重いボートを使っているのにやり直しもさせてもらえないハード設定な競技がレースラフティングなんですね〜笑。

これの亜種として「前2人だけ通れたから、次は後2人だけ通る」というのもありますがもちろん「不通過です!笑 とにかくゲートには一度しかエントリーできないそうです。誰か1人でも通過したら一息で通らなければならないということです。

キャッチしたくて体を乗り出しました

特に後ろにありがちなのですがキャッチやバックスイープの距離を出すために体を外に倒した際に手が水中に入ることがあるかと思います。

その瞬間ゲートを通過した場合は不通過判定です!笑笑

通過の瞬間に身体の一部が水に浸かっていると「落艇」と判断されることがあるそうです。

JRFの小泉さんや池田さんに確認したところ「一応完全な落艇ではないから通常不通過は取られないと思うけど、水につけない方が無難だし文字だけ読むとそういう解釈する審判もいるから気をつけた方がいいかもしれない。」ということでした。「不通過取られんじゃん!!笑」って話ですね。身体をのり出して波に対して刺しに行く癖のある人は要注意案件です。

上の画像の右後ろ(八木澤選手)のようなプレーということですね。この時に水中に手が行くと落水判定です。

厳密には『「ラフトに乗船していない状態」とは選手の身体の一部が水中に浸かっている状態。』とあるのですが、ここに対して細かく規定されておらず「一部」という言葉の解釈次第になります。なんなら指の先が浸かっているだけでも「身体の一部」です。手首は良くて肘はダメなのか、肘は良くて肩はダメなのかなどなどもはや言語の解釈と身体の解釈の問題になってしまいます。

リバベン(みなかみ)ではAKIKOの上流で1番・2番のスタガーがあるあたりが注意です。水位量次第ではスタンディングウェーブが出現し、その中にゲートが張られるのでバウもスターンも身体を乗り出して水に浸かるリスクが生まれます。

デスレースダウンリバー同様害悪ルールです。

筋を通すのであれば通過判定は頭部で行うのでカヌーと同様頭部の位置指定にすべきではないでしょうか? 個人的には「選手の頭部がラフトボートの外縁の外側にあり、なおかつラフトボートの最低水面高よりも下にある場合は落艇とみなす。」とかでいい気がしますが、IRFにはこのような言葉の抜け道に気付く人はいないのでしょうか?

このような認識ではダメなのでしょうか?

これにより通過のためにボートの内側に倒れ込んだ人は救済できますし明確に落水の判断ができます。

しかし、現状では指先でも水面についていれば不通過判定をもらう可能性があるので対策としてはゲート通過時に全員でバンザイをしながら水面についていませんアピールしていく方法しかありません。

まとめ

今回はスラロームの理不尽ルールについて解説しました。

2026年青森国スポカヌー競技の運営に携わっていますが、ラフティングのルールを見るとカヌーはかなり親切設計だなと思えます。ラフティングのルールでカヌーをやろうもんなら選手からクレーム殺到で次のレースはボイコットでしょう。

それくらいレースラフティングのスラロームルールはハード設計です。

まとめると

  • 一切のやり直しは認めない!
  • 押し戻されて逆通過なんて大罪!!
  • 1mmでも身体が水に浸かっていたら仮に足がしっかりとハマっていようと落水だ!!!

ということです。

小泉さんいわく、いつぞやの世界大会でもキツめのアップが張られ通過ー逆通過ー通過が頻発し全て不通過判定となり各国から不満が噴出したそうです。それでもルールにメスを入れないIRFっていったい何がしたいんでしょうか?

問題点をまとめると

  • 「やり直している」概念が記載されていない。←ゲートラインから離れたらなど明確な指標を設けるかやり直しを認める必要がある。
  • 逆通過判定が厳しい。←そもそも重くて動きが悪いラフトにおいてはゲートラインで滞留する可能性すらあるので競技性としては正方向への通過後の逆通過は認める方が無難。
  • 落水に関しては意味不明。←通過が頭部で判定なので一貫性を出すなら全て頭部の位置にするべき。

あくまで個人的に気になる点を挙げただけです。皆さんは現行のIRFルールに納得していますか?納得していないのであれば選手の方からどんどん日本レースラフティング協会に問い合わせて改善要請をしていくしかありません。

補足:解釈による判定の違い

やり直しが規定で認められないとなると本来のゲート通過自体もジャッジの主観になってしまいます。

その事例を一つお見せします。

バウ2人のみ通過

緩い流れのアップゲートに侵入しバウマン2人は通過済みです。

接触せずに回転開始

バウ2人は通過済みで接触せず回転軸付近で回転しています。スターンは未だ不通過です。「頭(バウ)を落とす」と言われる出かたです。

ポール・ゲートラインから一度外れる

図の形状的に仕方ないのですがここで一度ボートも人もゲートラインから外れたと仮定します。

スターンだけ抜く

ここから回転慣性を使いスターン2人の強烈なバックスイープやドローでバウを軸にしてスターン側を振り抜いて通過します。

接触なしで通過

接触なしでスターンも振り抜き通過しましたがこれはどうなるのでしょうか?

一度ゲートラインから離れたのですが「やり直している」という認識にはならないのでしょうか?

「こんなシチュエーションないだろ!」と思うかもしれませんが実際ありました。数回前の御岳カップでトリケラ下左岸エディーで岩近すぎて素直に通過できずやっているチームがいました。ラフトならワイドなのでギリギリボートがゲートラインに被るかもしれませんがダッキーは細長く機動性もあるので完全に起き得る事例です。

岩に塞がれた出口

御岳の場合はこんな感じだったと思います。

やり直した感はありませんが、途中ゲートラインからボートも人も外れるタイミングがあるので捉えようによっては「やり直している」ということになります。ゲートに対する漕行の始まりと終わりの概念が明確ではないのでこのような「審判次第」というものが生まれるのです。

IRF関係者の方がいたらぜひ責任を持って丁寧に解説していただきたい案件です。笑

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