【短時間】練習時間の確保と時間の概念

ボスニアでIRF主催のラフティングワールドカップが終了しました。OP MENのカテゴリーではHORUとMOKEの社会人チームが出場しました。総合の表彰台には絡めなかったものの一般社会人が世界に牙を剥くことはできた結果ではあったと思います。両チームとも居住地も仕事も空き時間も家庭の事情も全く異なる社会人で結成されたチームですが上手く調整し出国前からしっかりと練習を積んだチームでした。

そこで今回は時間がない社会人チームでも実践できるような「練習時間に対する考え方」について解説していきます。社会人チームはもちろんのこと、学生チームの朝練にも活用できる内容です。どんな練習でも良いのですがどれくらい動くとより効果的なのかについて今回は解説していきます。

練習時間の概念

そもそも「練習時間」とはどこからどこまでなのかについてですが、基本的には「ボートに乗って動いている時間」を練習時間と呼びます。

例えば練習場所に朝9時集合・ポンプアップして10時乗り出し・11時30分に降りる・片付けをして12時解散という場合には乗っているのは1時間30分なので練習時間は1時間30分となります。

この実際にボートに乗って練習している時間でも区分けしていきます。

①ウォーミングアップ

よく聞く言葉です。朝一など身体が温まっていないタイミングでいきなり激しく動かすと怪我の原因になったりするので馴染ませるように身体を温めていく動きです。本来は起きてから事前に自宅などで軽いストレッチをしてきていることが前提なので5分前後取れれば十分かと思います。

もちろんアップがてら独自のドリルがあるチームはそれでも大丈夫です。

おおよそ5分〜10分前後です。

②実動時間

アップはそれぞれのチームで各々がケガをしないように取り入れてくれれば良いのですが重要なのはここからです。練習には「実動時間」と「レスト(休息)時間」の概念があります。

まず実動時間ですが、これは実際に練習して負荷をかける時間のことを言います。感覚的な練習で何秒サーフィンできるかチャレンジなどは別ですが、コースを決めて同じコースを複数回行う際には非常に重要です。

例えば2分のコースを全力で10本漕ぐとします。間に同じく2分の休憩を入れたとすると10本漕いで9回の休憩が入るので練習時間は38分かかります。しかし、このうち漕いでいる時間は20分だけで後の18分は動いていません。この20分を実動時間と言います。

余談ですがストイックにいくチームであれば早いチームのタイムを参考標準タイムに設定すれば伸びます。どういうことかというと、

  • コースA という練習セットがある
  • 自分たちでは最速1分45秒かかってしまう
  • 一緒に練習している別のチームは1分30秒で漕げてしまう
  • 1分30秒で漕げるチームがいるということはこのコースの基本は1分30秒であり自分たちには15秒のロスタイムがある
  • タイムは1分45秒として認めるが実動時間の蓄積には1分30秒の標準記録を使う

というものです。

本来は1分45秒動いているが遅いのは自分たちが悪いからタイムや練習メニューの計算には1分30秒を用いるという考え方です。この後のレスト時間との兼ね合いもあり非常に重要な考え方となっており後でまた出てきます。

③レスト時間

実動時間でも触れましたが、2分のコース10本で間に2分の休憩だと練習時間合計38分実動20分レスト18分となります。

インターバルトレーニングなどではレスト時間の調整も非常に重要になります。実動に対してレストが短いと回を重ねるごとにキツくなりやすいです。実動=レストが通常のインターバルですがレストが短いとキツくなり長いと回復時間が取れるので楽になります。

そのため実はインターバルトレーニングなど本数を重ねる練習の強度調整はレスト時間の調整で行います。あまりにも短すぎると無理ですが適度に短くしてあげることにより負荷をかけていくことができます。

また、コーチングのテクニックの一つなのですが10本もやるとあるタイミングでいきなりタイムが悪くなる時があります。そこが境目となるのでわざと少し長めにレストを取らせて回数を1・2回底上げするという方法もあります。コーチや見てくれる人がいない場合は客観視できる人がいないので実動=レストで十分です。

また、コースAを10本やってコースBに移るという時には少し長めの5分から10分の小休止を入れることもあります。

④クールダウン

どうしても負荷をかけた練習をすると乳酸が溜まりますし疲労します。また、パドルスポーツの場合は本来のストロークの形が崩れて腕漕ぎで出力したりとよくない漕ぎになっている場合もあります。

最後に一度それをリセットする時間として大きく5分〜10分ほど息を整えて漕ぐとより効果的です。

時間設定

それではここからは実際にそれぞれどれくらい時間をかけるのかについて解説していきます。

①ウォーミングアップ

しっかり体操やストレッチを事前にやっていることが前提ですがおおよそ10分以下です。逆にアップで身体を上げるのにこれ以上かかる方は改善の余地有りです。本番で限られたスペース・時間でアップできない可能性が出てきます。

当然ですがレースの時間は決まっています(めちゃくちゃ前後する大会もありますが・・・)。そこに焦点を合わせてアップするならこの時間が現実的です。できていないようであれば10分で動けるようなメニューや身体づくり・意識づくりが必須です。

②実動時間

いよいよ本題の練習時における実動時間です。これは1セッション30分〜40分です。これ以上いくと集中してしっかりやった場合は身体が保たないはずです。

例えば1分30秒のコースを10本やると900秒となり15分です。そこから2分の少し長めのコースを10本やると20分なので実動35分です。

1分のコースを10本でやり方を変えて3種類で30分でももちろんいいですが、実動時間を変えることにより心肺系への負荷のかかり方も変わるので可能であれば多少時間が前後した方がオススメです。

③レスト時間

前述したようにストイックなチームであれば早いチームの記録を参考にレスト時間を設定しても構いませんが、キツイようであれば自分たちの記録で1本目の全開漕ぎのタイムをレストに設定するのもおすすめです。

また、小休止ですが基本は5分です。2分コースを10本最初にやっていたり、1本のコースを2種類20本以上漕いで疲れているけどそこからさらに追い込みたい場合などは10分小休止もいいですが何もないのに10分休むとダレます。

④ダウン

できれば10分は取りたいです。

負荷をかけて漕いだ後に大きくストロークを意識して漕ぐと少ない力でボートが進む感覚が得られるので少し長めにとってあげるほうがオススメです。

実際の練習時間の組み方

ここからは実例形式で練習時間を組んで紹介していきます。

便宜上集合時間やボートのポンプアップは練習時間には含みません。あくまでも水上の時間です。

①インターバルトレーニング 2セッション

もっともシンプルで時間管理もしやすい方法です。

  • ウォーミングアップ 5分
  • 心拍計測&レスト  5分
  • コースA コースタイム90秒×10本(レスト9回) 28分30秒(実動15分)
  • 小休止&心拍計測  5分
  • コースB コースタイム90秒×10本(レスト9回) 28分30秒(実動15分)
  • 小休止&心拍計測  5分
  • ダウン       10分
  • 合計タイム     総練習時間1時間27分 実動30分

おおよそ1時間半の水上練習です。前後にボートの用意を15分ずつ入れても2時間で終わる練習です。

コースタイムも同じでメニューも時間も組みやすいのが特徴です。

②インターバルトレーニング 3セッション

少し時間が長めに取れる日用のトレーニングです。

  • ウォーミングアップ 5分
  • 心拍計測&レスト  5分
  • コースA コースタイム90秒×10本(レスト9回) 28分30秒(実動15分)
  • 小休止&心拍計測  5分
  • コースB コースタイム60秒×10本(レスト9回) 19分(実動10分)
  • 小休止&心拍計測  10分
  • コースC コースタイム60秒×10本(レスト9回) 19分(実動10分)
  • 小休止&心拍計測  5分
  • ダウン       10分
  • 合計タイム 総練習時間 1時間46分30秒 実動時間35分

前後のボート準備を入れると2時間を確実に超える練習です。

コース長やトレーニングの質を考えるとこのスタイルが一番基本となりまずはこれくらいのセットをこなせるようになるのが目標といった練習です。

③インターバルトレーニング 短時間集中HIIT (上級者向け)

上級者向けの練習です。操船能力が低いチームがこの練習に取り組むと逆に練習にならないのでお勧めしません。HIITとは高負荷インターバルトレーニングのことで短期間で集中的に行うトレーニングのことを言います。

  • ウォーミングアップ 5分
  • 心拍計測&レスト  5分
  • コースA コースタイム90秒×10本(レスト9回) 28分30秒(実動15分)
  • 小休止&心拍計測  5分
  • HIIT 10秒×20本(レスト19回) 6分30秒(実動3分20秒)
  • 小休止&心拍計測  5分
  • ダウン       10分
  • 合計    総練習時間 1時間5分 実動時間 18分20秒

目標の実動時間には届いていませんがHIITはちゃんとできるとかなり負担がかかるので狙って取り入れていく分には多少実動時間が足りなくても構いません。

短く負荷の高い運動を繰り返すのでスラロームのようなセットを組むのではなく静水でダッシュのような練習になります。この際そもそも真っ直ぐを作れないチームであれば1パドル目からボートがズレるので練習になりません。

無駄な時間を減らす

練習時間の組み方には直接関係はありませんが、水の上の時間をいかに過ごすかという点で多少触れておきたい点があります。それは水の上でのミーティングです。

練習で30秒前後のコースに対して1回ごとに今のはどうだったかを5分以上会議(?)しているチームが非常に多いです。指摘するとインターバルじゃなくて自分達は技術練習をしているんだと開き直るチームもいますが、正直そういうチームに限って何分ミーティングしようと何回やろうと上手くなりません。理由は単純で一つの小さなミスに対してミーティングによって多角的に全員でアプローチしすぎて今度は違う問題を生んでしまい元に戻れなくなり迷宮入りするのです。

また、ミーティングしたがる選手に限って体力がなく本数を重ねると漕げなくなります。それではそのミーティングはただの遅延行為です。苦しくても誤魔化さずに漕がなければ体力もつきませんし体力が底付きしてからじゃないとつかない技術もあります。技術練習の場合でも話し合いの時間には制限を設けた方が良いでしょう。

集中してこの練習時間で上手くなるという意識があれば練習時間は2時間もあれば十分です。

まとめ

今回は練習時間と実動時間の考え方についてまとめました。

朝練をしようと頑張って6時に集まったのなら8時までには終わるようなメニューの組み方も全然可能です。

事前にメニューを組んでチームで共有し、終わりのミーティングもLINEのノートなどを使えばすぐに解散できますし時間の余裕はいくらでもできます。もちろん直接話した方が伝わることもあるので週に何回は早めに上げてミーティングというのもありでしょう。

また、ロング漕を取り入れた練習などはこの限りではありません。レースラフティングの場合4種目IRF準拠のレースではダウンリバーが配点の大きいところに来るのでその練習も織り交ぜたいというチームも多いでしょう。そこの説明は長くなるのでまたの機会にします。

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