御岳合宿備忘録の補足『ノッキングと加速』

御岳合宿を学生としていて懐かしさに耽りながら思い出したことが数点あるのでそれについても解説していこうかと思います。かなり専門的な突っ込んだ話になるので理解できる人だけ理解してくれればいいというスタンスで解説します。

だいたい私が横でスラ艇なんかを漕いでいて練習や指導の一環でラフトに乗せてもらうと言われることがあります。それが「出力が違う」か「めっちゃノッキングする」です。

前者は大体どこで誰と乗っても言われます。後者はチームで練習しているチームほど言われます。どちらも大きな間違いです。確かに私はレースのスタートなどの緊張場面になるとノッキング(ピッチング)が現れる悪癖がありますが練習程度では起きません。それは勘違いだし単に経験不足です。

「出力が違う」

パワーに大きな差はありません。確かに一般人よりは一回り大きいかもしれませんが太っているだけです…笑

気持ち悪いので具体的な数値は出しませんがビッグ3もアスリートレベルの中では中間か低い方ですし偏りがあります。

Day1からずっと解説しているカヌー(1人乗り)の練習を突き詰めたために1度につかむ水の量とそれをパワー以外で引き切る能力が高いだけです。言ってしまえばパドル面の最大キャッチを効率よく推進力として流しているだけです。

まずはキャッチの精度について解説します。「水にズバンとパドルを入れるんだ!」「入水は一気に入れて引き切るんだ!!」と言っている先輩がたまにいますが水に激しく入れると水面は壊れますし、掴みきれていない水を引いてもロスが大きいです。そこをいかに丁寧に過ごせるか、無意識でも丁寧なキャッチができるかが分かれ目です。入水・キャッチ・ストローク・フィニッシュ・リカバリーのフォワード5挙動において出力はストロークのみです。なんなら入水・キャッチは「出力しない」ではなく「より丁寧に」です。そこの精度が違うので私がすごい出力しているように思われますがパワーなんか使っていません。ただ掴んだ水を流しているだけです。よく見ればわかりますがみなさんブレード8割も入っていませんし、水疱を含んで軌道がずれています。水中での動作も安定しない浅いパドルに負けるはずありません。

「めっちゃノッキングする」

これは一◯橋ストローム会の(いつだったか忘れたけど)TAMAと練習した時に言われた一言です。

モーターボートや漁船などの小型船舶に乗ったことがある人はわかりますが、船体自体が小さいボートでいきなりスロットル(アクセル?)を全開にされると加速の勢いで後ろに荷重がかかりウィリーするような状態になります。車でも似たような現象が起きます。停車状態からアクセルを踏み込むとシートに押し付けられるような感覚になります。早い船・出力が大きい船はこの現象が出ます。

当時はそこまで自信はありませんでしたが、スプリントを初めて白神カヌークラブのヘッドコーチ木立さんと話していても「君のはピッチングじゃなくて加速。バウ見ればわかる。出力が大きいとそうなる。」と言われました(安堵)。

実は加速とノッキングは表裏一体にあって素人感覚では一緒になってしまうものなのです。

ノッキング(ピッチング)の感覚としては前につんのめって急ブレーキを踏まれたような感覚です。逆に加速は追突されて後ろに首が置いていかれてムチウチするような感覚ではないでしょうか。

ではなぜそこそこ練習している学生がノッキングと思ってしまったのでしょうか?おそらくそれは今までに体験したことがないほどの出力だったからでしょう。こちらの漕ぎが「強すぎる」ではなく自分たちで丁寧に漕ごうとするあまり立ち上げなどで出力を抑えていたのではないでしょうか。そこに立ち上げ1パドル目から最大出力をぶつけてくる奴が乗ってくると訳がわからなくなってしまいます。それで加速をノッキングと勘違いしてしまったのでしょう。以前にも解説しましたが初速・加速期・巡航でストロークは当然変わります。それを変えないでいこうとするのは「重さ」に対する意識が足りないだけです。

まとめ

別に私はパワーがあるわけではありません。スプリントの選手や海外選手を見ているともっと引くほどムキムキな選手はいくらでもいます(ギリシャ彫刻レベルです・・・)。ラフティング・C-1パドルにおいてキャッチしている量とその精度、出力のタイミングが優れているだけです。こんなのはやっていけば誰でもできるようになります。ただ、この精度を上げるのは流水ではなく静水です。流水ではフォワードよりも目を向ける項目が多すぎてそれどころではありません。

流水に出てしまうと「もう静水はいらない」と思ってしまいがちですが、ここまでやってきた静水練習に今一度立ち帰れるかが次のステップへの鍵かもしれません。

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