今日からできる御岳カップに向けた練習!!

近年レースラフティングのシーズン最終戦は10月3週目あたりに多摩川(東京都)の御岳渓谷で行われる「御岳カップ」でしょう。近年では春御岳・秋御岳と呼ばれ年2回開催されシーズンの始まりと終わりを告げる風物詩となっています。今年からレースを始めたという人や大学1年生といった方は秋御岳がデビュー戦という人も多いのではないでしょうか?10月に入り大会も近づきこれから練習していこうかと思っている人も多いことでしょう。

その前に10月の3連休には長良川wwfもありますね!こちらがデビュー戦という方は残念ながら諦めてください笑。今からできることはせめてケガをしないように身体を動かしておくことくらいです。R6で4種目やる長良川wwfはハイレベルですし上に行こうと思うとかなり前から準備をするかそれなりのポテンシャルの人を集めなければ難しいです。

もちろん御岳カップが簡単というわけではありません。御岳カップはR4で組みやすい上に関東圏で参加しやすいのでより選手層が厚くなるので難しいことに変わりはありません。しかし、まだギリギリ2週間あるので対策のしようはあるという話です!

‼️前提条件‼️ 先に書いておくとこれを参考にして欲しいのはあくまでも初心者や1年生など経験があまりない方や、そこに同乗してこれから一緒にやっていこうとする先輩、基礎のトレーニングに興味がある方たちです。ガチ艇でやっている方が3週間やるような内容ではありません。

トレーニング内容と基本的な考え方

先に結論を言うとひたすら「インターバルトレーニング」です。1分から3分を狙ったミドルのインターバルをひたすらやります。私の場合2週間で仕上げるなら技術練習は完全に切り捨てます。順を追ってトレーニングの理論とラフティング競技の特質についても解説していきます。

①技術を切り捨てる理由

おそらくR4でレースに出るチームでも全員が完全ど素人というチームはほとんどいないでしょう。1人か2人は先輩や経験者が乗っているはずです。全員初めてというチームを指導する場合なら最低限のことは教えますが教えてもスターンラダーとラインという概念だけです。

バウラダーやドロー・スカーリング・スイープなど色々教えたくなる技術はありますが、教えると頭でっかちになって余計な操作をしたがります。せっかくこちらが安全なラインで確実に通れるように作っても余計な操作で慣性を崩されたり、明らかにボートに推進力がなくラダーが効かない状態でもラダーで待って漕がなくなってしまったりと覚えると色々とやりたくなります。それも経験なのかもしれませんが、そんな経験は自分たちの練習の時に積ませればいいものでわざわざレースでやらせることではありません(余談ですがそんなチームに限ってコースオープンのルールを知らなくて周りのチームや運営に大迷惑をかけます)。

まずは「前漕ぎをする」という基本を身につけてもらうためにも御岳カップではあえて技術を切り捨てます。

②通常水位の御岳くらいならリーンもなしで乗り切れる

技術を教えないというのはリーンも教えないということです。100kg級かそれに近い新人がいればその人には個人的に教えますが、御岳において平均的な体型ならよっぽど無理な角度やラインで波をもらわない限りコロラドでもひっくり返ることはほぼない(と個人的には思っている)のでリーンもさせません。リーンさせない代わりに漕ぎを止めさせます。

初めたばかりの選手はリーンをさせたところでリーンを戻すタイミングがずれていたり次の漕ぎに戻るタイミングが何テンポも遅くなった上にラフトボートに慣れておらず姿勢制御ができずにそれだけでバランスを崩してしまう選手も多いのでそれなら何もしないでいてくれた方がマシです。

たまに御岳カップでも歯っ欠けエリアでひっくり返りそうになっているチームはいますが、見ているとどれもリーン云々ではなくそれまでのライン作りや飛び出す角度に問題があります。

③何もできなくても最後まで漕ぎ切れる方が重要

初心者だけではなく2年目・3年目の人にも言えることですが、どこかのゲートで1・2回ドンピシャのラダーを入れてくれるよりも、目立ったリカバリーもなく最後までダレずに漕ぎ切ってくれた方が何倍もありがたいです。御岳カップのコースは近年ではトップでも競技時間だけで2分40秒ほどかかります。遅いチームだと4分近くかかります。間をとっても3分は超えます。3分間ゲートを意識しながらラインを考えながら次のゲートやゴールまでの道筋を脳内でロードし続けながら全開で漕げる選手なんてほとんどいないはずです。初心者にできる技ではないのです。

それよりも一定のペースでいいからボートに推進力を与え続けてくれる「エンジン」の役割をしてくれた方がずっと有益です。また、この「エンジン」の役割がこなせるようになっておくことにより最低限の「漕げる」ができるようになるので次のステップにも進みやすいです。

④トレーニング内容:「ミドルインターバル」

メインはこのトレーニングです。初心者の方や漕ぎたい人を原則前に乗せある程度操船できる人が後でダッシュ練習です。

コースは飽きないように時間別に4種類くらいあると理想です。1分コース・1分30秒コース・2分コース・2分30秒コースといった具合であれば理想です。1分コース・1分コース(2)・1分30秒コース・1分30秒コース(2)といった具合でも大丈夫です。このようなコースをレースのスピードである8割くらいの力で漕ぎます。心拍がとれる方は目標最大心拍165bpmくらいです。

このインターバル練習はトレーニング時間=レスト時間です。そのため1分30秒漕いだら1分30秒レストです。ただし、これは最速タイムによるレスト設定です。例えば最速1分30秒ジャストのコースだとしたら、1分30秒で漕げばそのまま1分30秒レストですが1分35秒で漕いでも1分30秒しかレストはありません。遅く漕げば漕ぐほど実働に対してレストが短くなります。これを10本(専属のコーチなどがいる場合は10〜15本)やります。これをコースを変えて2セットやります。ちゃんとしたコーチがいる場合は心拍やタイムの落ち込みのタイミングを見てレスト時間や本数の調整を行います。

⑤トレーニング内容:「ミドルインターバル」例

ここでは実際のタイムスケジュールと実働時間について解説します。レストやアップを抜いた頑張る時間のことを実働時間と言います。ミドルインターバルでは実働時間を大体30分〜40分前後で設定します。実働が20分よりも短いと追い込みきれませんし、長いと疲れて練習の質が落ちます。

練習例1

  • 乗艇開始〜アップ (5分)
  • 安静レスト (5分)
  • 練習①コース1分×10     1分漕~1分レスト-1分漕・・・・・ (実働10分 レスト9分)
  • 休憩   (5分)
  • 練習②コース1分30秒×10                  (実働15分 レスト13分30秒)
  • 小休止  (2分)
  • ダウン  (5分)

これで実働25分 練習時間1時間9分30秒です前後の体操などを入れて1時間20分くらいです。

練習例2

  • 乗艇開始〜アップ (5分)
  • 安静レスト (5分)
  • 練習①コース1分30秒×10         (実働15分 レスト13分30秒)
  • 休憩   (10分)
  • 練習②コース2分×8                  (実働16分 レスト14分)
  • 小休止  (2分)
  • ダウン  (5分)

実働31分 練習時間1時間25分30秒

二つの練習時間モデルを出してみました。似たような練習を私もコンセプト時代にやっていました。練習例2ではインターバル間の休憩も長くしています。一つ目の練習が長くなると最初のうちはしんどいのでレスト時間を伸ばした例です。別にここを5分でやっても問題ありません。

また、ダウンを入れていますが負荷がかかかる練習をするのでダウンはもっと長くてもいいです。最低これくらいはやりましょうということです。ダウンの代わりに最後にフォーム漕という形で10分程心拍を上げないで大きく漕ぐような練習を入れるのもいいかと思います。

補助トレーニング

多少漕げるかなというチームには補助トレーニングで別のメニューを取り入れる場合もあります。ここでも技術練習は入れません。今から御岳カップに向けて仕上げるのに安定しない技術を入れるのは愚策でしかないからです。

①スプリントインターバル

ある程度漕げるチームであればより短期間でも負荷をかけて瞬間的に漕げるようにするために「リピーテッドスプリントインターバル」を取り入れる場合もあります。

これは横についてくれるコーチもしくはインターバルタイマー(アプリなどであります)が必須となります。

やり方はシンプルで10秒全力~10秒レストを繰り返します。レストは実際水の上で漕ぐ場合は流し漕ぎです。止まると余計にしんどくなります。何がすごいかというとこれは10本やっても200秒ほどで終わるのです!笑 ただ、本気で取り組むとバチクソしんどいのでそんな何セットもできません。理想は横で煽ってくれるコーチ付きがオススメです。どうしても自分たちだけだと手を抜きたくなります。100%を出し切って追い込む練習なので手を抜いた瞬間意味がなくなります。

これをこの間探検部の学生さんにやらせたところ「全力で漕ぐ!」に意識が行きすぎて2パドル目で曲がっていってしまいそもそも練習になりませんでした・・・。前に合わせて出力しながらもコントロールしていく技術は必須です。全力で漕ぐと周りが見えないというのはよくありません。それができないようであれば多少出力が落ちるミドルのインターバルなどに取り組む方がいいです。

②ピッチ変動付きロング漕

ロング漕となると一定のペースで決まった時間を漕ぐ練習がほとんどですが、その中でペースを変動させることにより負荷を調整することもできます。

例えば30分〜1時間漕となるとおおよそ6割〜7割前後の出力キープになります。これをあるタイミングで1分間だけ8割を出したりします。30分の中でタイミングを見て出力を上げてまた6割に戻して漕ぎの中で息を整える練習をしていきます。5分に1回1分出力を上げて(4分6割・1分8割)を繰り返すと30分で6セットできます。4分の間に漕ぎながらいかに早く心拍を落ち着かせられるかが練習のキーになります。

この練習も時間を決めてやっていいのですが本来はコーチや陸からサポートしてくれる人がいるならそっちにタイミングを一任して不意に出力を上げる方が練習になります。外から見ててギリギリ息が戻ったか戻らないかくらいでタイミングを指示してもらった方が練習になります。ミドルインターバル同様コーチがついいている場合は疲労感や心拍・時間×距離を見てピッチを変えるタイミングや回数を調整していきます。

自分たちしかいない場合はスマホのインターバルタイマーなどで時間管理するしかありません。

まとめ

2〜3週間で仕上げようと思うと当然ながら取捨選択を迫られます。そこでスラロームレースだから技術練習だ!といってただフェリーグライドやストリームインを練習しても意味がありません。そのような練習はもっと漕げるようになってから1秒を削り出していく時にする練習で2週間でやる練習ではありません。特にラフティングのスラロームはほぼほぼダイナミックセットなのでそこまで細かく詰まった技術は必要ありません。漕げる方が重要です。

御岳カップだけではなくリバベンも同様です。リバベンなんかはもっとダイナミックセットなので漕げるチームが勝つというセットです。

まずは波に合わせてひたすら前漕ぎできるという体力をつけるところが一番です。

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