2021年の4月いっぱいで退職をし5月からリバーライドという屋号で仕事をしていますが、そんな中で1番大きな出会いが青森県西目屋村を拠点に活動するAGROVEさんと白神カヌークラブです。
AGROVEさんは青森県西目屋村を拠点とするコマーシャルラフトの会社で私も仕事をしているところです。そこと運営協力体制にありカヌーの普及振興活動をしているのが『白神カヌークラブ』です。
私もスラローム競技をかじっていたのでそこのコーチという形で練習に参加させてもらっています。白神カヌークラブでは現在小学3年生から高校1年生までの選手たちが練習しています。そんな中で子供の練習から大人が得るものもあるんだという発見をしました。
『全小』
『全国少年少女カヌー大会』と言って毎年7月に山梨県精進湖カヌー競技場で開催されるレースがあります。昨年は白神カヌークラブのスタッフという形で全小に行きました。主に小6以下で競われる小学生向けの大会です(そこで元テイケイの池田さんと再会したのは運命を感じました)。
カテゴリーは大きく小4以下の部と5・6年生の部で分かれていてその中でさらに自前のスプリント艇を使うか貸し出しの普及艇を使うかで分かれています。
小学生たちからしたらこれからカヌーを続けていく場合競い合わなければならないライバル顔合わせ大会です。
私はここで初めて「自動発艇装置」をみましたしスプリントレースというものを見ました。
スプリント競技は9艇同時発艇なのでレースラフティングやカヌースラロームと違い、目で見て勝敗がわかるので非常に新鮮でした。細かいところで言うと発艇装置合わせやスターターとの駆け引きがあり陸上の100mのように非常に面白いです。また、500m・1000mはどこで仕掛けていくかの駆け引きもあるのでとても見応えがあります。
子供たちの頑張り
全小は主に小学生が漕ぐレースです。小学生は最大でも12歳で自分よりも一回り以上年齢が離れています。4年生で9歳10歳となってくると自分の子供でもおかしくないくらいの年齢です。そんな子供たちが慣れない環境で見ず知らずの大人に囲まれてカヌーをしろと言われるストレスは計り知れません。それでも子供達はそれぞれ全力で漕いでくれました。
1番心が震えたレースは決勝は厳しいかもと言われていた子が案の定予選で負けてしまい準決勝を1位で通過しない限り決勝レースには進めないとなった時の準決勝レースです。周りの大人がみんな陰で「厳しいかもな…」という中その子は格上相手に準決勝を必死で漕いでなんと1位で帰ってきました。下馬評を覆し格上に勝って決勝レースに自らの足で進んだのです。サポートで行っていた大人全員がレースを見て『はいったーー!!』と言って驚き喜びました。私もそれを生で見ていて自分の半分もいかない子供たちがパドリングでここまで見ている大人たちを魅了するものかと感動しました。普段は無口で何を言ってもいまいちリアクションが返ってこず心配になるような子でしたがこの時ばかりはやり遂げました。
決勝レース
その頑張りもあって4年生以下女子普及艇の部では決勝9レーン中3レーンを白神カヌークラブが漕ぎました。そこでも1人が3位表彰台、もう1人が6位入賞まで食い込みました。決勝レースもだんご状態でゴール付近までやってきて「うわ…ダメか」となるようなレースでしたがギリギリのところで入っていました。
また、格上相手に玉砕覚悟だった男子K2がギリギリのところで3位表彰台に残ったのも見ものでした。予選レースで前を漕いでいた格上ペアがゴール手前で脱艇し、まぐれで決勝に上がったペアでした。脱艇したチームを見て「かわいそうだ」と本人たちは言っていましたが「それが勝負の世界だから仕方ない。かわいそうなんて言ったら明日は自分たちだから今は目の前のレースに集中しろ」と言った覚えがあります。それでも決勝ではしっかりと自分たちの漕ぎを見せて自分たちの力で表彰台を掴み取りました。
見るだけのレースから得たもの
学生でラフティングを始めて以来レースは出るものでした。しかし、ここまできて始めてサポートとしてレースに携わりました。
子供たちが漕ぐ姿には本当に感動しました。小さな体でパワーも技術もないのに必死に漕ぐ姿というのは本当に健気で「自分にそんな姿勢はあったのか?自分ならもっとできるんじゃないか?本当に追い詰められた環境でこんなパフォーマンスを出せるのか?」という自問自答に駆られました。
特に前述した準決勝で1位の子を見て「ここまでの下馬評をひっくり返して決勝まで上がれる面白いレースを果たして自分にはできるのか?」という思いも生まれました。
運営でも選手でもなく選手のサポーターとして初めて携わったレースでしたが子供の力は凄いと思い知らされたと同時に自分もまだまだやり足りないと再確認させてくれる大会でした。
スプリント
全小が終わった翌月の8月にはAGROVEの木立さんに声をかけられスプリントを始めていました。以前からやってみたいという思いもありましたが、全小をみて自分も同じような競技で戦いたいと思ったのが1番でした。
白神カヌークラブは私にいろいろなものを与えてくれました。勝てそうになくてもやるというチャレンジャー精神・負けそうな相手でも全力で望む不屈の魂、そして何より体のサイズや年齢なんて関係なくみてる人に感動を与えられるというスポーツマンの真理を教えてくれました。
一見ただ何もない静水を頑張って漕ぐだけのスプリント競技ですがシンプル故の難しさがあります。効率よくボートを走らせる術、加速のコツ、トップスピードのキープ、仕掛けていくタイミングなど技術的な面からメンタル的なところまで非常に奥が深い競技でした。
このような競技に出会えただけでも白神カヌークラブとの出会いには意味があったといえます。
今後の自分
大学でレースラフティングに出会ったところから始まったパドリング人生ですが、就職でコンセプト(みたけカヌー教室)の小田さんと出会い御岳でスラロームを仕込まれ、さらに転職で木立さん(AGROVE)と出会いスプリントに乗り始めました。ラフティング・スラローム・スプリントとなかなか他人が経験しない多様な競技パドリング遍歴を送ってきました。そこでそれぞれにそれぞれの理屈があり漕ぎのスタイルや競技の形式が存在するんだということも見てきました。いろいろな競技を経験したからこそ表現できる世界があるように感じます。様々な競技の理論を教えてもらったからこそ見える世界というものもありました。これからはそれを自分で表現し人に伝えていければと思います。
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