Tグリップについての考察

シングルブレードパドルには必ずついているTグリップですがこだわって調整している人はどれくらいいるのでしょうか?

私がテイケイの練習生候補をしていた当時選手だった藤川さんは自分の手に合わせたグリップを作るといって樹脂なのか粘土なのかよく分からないもので手の型を取って削っていました。記憶だと他の選手の方々もTグリップにテニス用のグリップやテーピングテープを巻いて調整していました。

チームテイケイくらいの頻度で練習するとわかりますが、手に合わないグリップを使っていると手に豆ができるだけでなくストレスが半端ないです。

カヌースラロームの場合は90秒〜120秒前後なので我慢できますしそれどころではありませんが、ラフティングにはダウンリバーという競技時間が30分を超えるような種目があります。30分間手にストレスがかかるのは相当なことです。

唯一調整できるパーツ

パドルにおいてグリップ部分は唯一自分好みに調整できる部分でしょう。

シャフトの太さやブレードのサイズは既製品を使うほかありません。シャフトはいくらかグリップを調整できますが太すぎる場合削る訳にはいきません。手に合うかどうか一か八かになってしまいます。

それに比べて木製(ダブルダッチ等特殊なものもあります)のTグリップはヤスリなどで簡単に加工できて調整しやすいパーツとなっています。

Tグリップの通説

パドルを購入しようとするとメーカーによってはグリップ径を指定できるメーカーもあります(かなり少ないです)。そのような時よく聞かれるのが「Tグリップってどのくらいのサイズがいいんですか?」です。正直言っちゃ悪いですが「知らんがな!!笑」です。

ただ「知らんがな!!」という訳にもいかないので一般論として私がよくお伝えすることがあります。

それは「ラフティングの場合、前の人は少し小さめ・後ろの人は少し大きめとは言われている」ということです。

理由を解説します。

ラフティングの場合前の人はエンジン(フォワードパドルメイン)としてガンガン漕ぎます。その際グリップが小さい方が力が分散せず、かつ握り込むことにより力が集約しやすくなるから。・・・だそうです。

後ろの人はスターンラダーなど細かい操作が必要になります。その際グリップが大きい方が操作性が良く手首の負担が軽減されるから。・・・だそうです。

あくまで通説です。

私は基本的にラフティングでは前ですがかなり大きめのグリップを使っています。小さいと握り込まなければならず前腕が疲れてしまうからです。大きめのグリップを掌底で押さえ込んで握らない方がストロークが良くなります。個人差があるのでこのサイズがあなたにはオススメというものはありません。

Tグリップの大小

Tグリップの主な調整方法は大小によるサイズ調整がメインとなるでしょう。

サイズというと直径の長さ、いわばグリップの太さと思われがちですが、横の長さも非常に重要です。

左側のTグリップは直径35mmの長さ130mmで、右側のTグリップは直径30mmの長さ107mmです。

直径

直径が変わるということは当然ですがグリップの外周が長くなります。

Tグリップはほぼ正円なので外周の長さは直径×円周率(3.14)で求められます。

左側のパドルは直径35mmなので円周は109.9mmとなります。右側のパドルは直径30mmなので円周は94.2mmです。直径の長さは5mmしか変わりませんがグリップの長さは15.7mmも変わってしまいます。

直径が1mm増えるごとに外周の長さは円周率分である3.14mmずつ大きくなるのでほんの少しの違いに見えても手に伝わる大きさはかなり変わります。

自分の手の大きさに合わせたTグリップに調整するには少し大きめの物を買い、自分でヤスリ等を使って削っていくという方法があります。後で解説しますがTグリップは正円とは限りません。歪な方が握りやすい場合もあります。その場合でもヤスリでちょうどいいように調整できます。

長さ

あまり気にする人がいないように感じるのがTグリップのワイドサイズ(長さ)です。

個人的には直径よりもこちらの方が重要だと感じます。理由は「手に収まるか収まらないかがこれで決まるから。」です直径は前述したように30mmがおおよそ平均で大きくても36〜37mm程度なので握りきれないということはほぼありません。しかし、ワイドが長過ぎると手から余る可能性があります。日本人の手の大きさは男性平均で長さ183.4mm・幅83.3mm。女性平均で長さ169.3mm・幅74.4mmらしいです(参考URL)。

再確認ですが左のパドルはワイドが130mm・右のパドルはワイドが107mmです。

Tグリップを握る際は左右どちらにしろ必ず反対側に親指を引っ掛けるので片側に手の親指がわ1/3程度がきて、もう片側に手の小指側2/3程度でしょう。

右のパドルは半分が50.35mmとなるので男性平均の手の2/3である55.5mmであれば手の内側に収まります。※筆者は左漕ぎなのでTグリップは右手です。

しかし、左側のパドルは半分が65mmとなるので手に収まりません。

ギリギリ手の外側の肉が広がって収まっているように見えますが、小指の骨の延長線を考えてもらえればわかりますが手には収まっていません。

私が個人的に使いやすいのは左側の手に収まらないパドルです。大きくて握っているという感覚があルものの握り込みすぎないくらいのサイズ感がちょうどいいです。

これは個人の感覚によります。極端に大きい物と小さいものを握り比べてどちらが好みか見ていく必要があります。

歪いびつさ

ここまではTグリップが正円である前提で解説してきましたが実際そんなことはありません。木のTグリップのパドルをお持ちの方はぜひ反対側から握り込んでみてください。絶対に感覚が違います。木は節の感じやカットの仕方・使い込み方によって正円にはなりません。

上の画像ですがよく見てもらえればわかりますが右側の節と真ん中の節の間が歪んでいます。本来ここは真っ直ぐでした。使っているうちに締まって変形していきました。またグリップ側面をよく見てもらうとわかりますが正円ではなく菱形に近い形をしています。このグリップはほぼオーダーメイドで作ってもらったサイズ感を調整したグリップです。それでも変形します。「アジがある。」というのも一興ですが正直握りにくくなったので調整しようかなとも思っています。

使用や経年劣化で木は変形します。それを受け入れられるのならばいいのですが、あまりにも変化してしまった歪さは調整も必要でしょう。木には必ず癖が出るのでそれが自分にハマるかハマらないかも重要です。もしなんか違うなと感じるならば調整した方がいいでしょう。

木以外のTグリップ

木以外ではカーボン製のTグリップが有名です。ダブルダッチやワーナー・RAAB・G powerの一部で採用されています。大体の場合はシャフトとTグリップが一体成形でブレードとの結合部で長さ調整をするものがほとんどです。

カーボンTグリップのメリットは物のばらつきが無く硬いというところです。デメリットは調整が効かない・無機質といったところでしょうか。しかし、無機質や調整が効かないというのは滑り止めのグリップを巻いたりビニールテープを巻くということでいくらでも対応できます。無機質で嫌いという人も多いですが木製のTグリップほどではないものの調整はできますし個人的には好きです(筆者のガイド用パドルがカーボンTグリップです。)。

結論

他人のパドルを借りてみてこれいいな!と思うのはほとんどTグリップの違いではないでしょうか?グリップが変われば漕ぎ味が変わります。木のグリップならばいくらでも調整できるので自分で調整してみてはいかがでしょうか。極論ですがグリップにパテを盛ってはいけないというルールはありませんし小さいと感じるのならパテ埋めするのも一つの手段です。直接手に触れる部分だからこそ細かい調整が大事ではないでしょうか。

余談

ラフティングツアーのお客様には「Tの字してるのでTグリップって言います!」と解説していますが、海外では「Tの字」だからではなく「Top Grip」のTらしいです。Vajdaなど海外サイトを見るとTopGripでTグリップの詳細が載っています。そのためなのかワーナーやミッチェルに使われていたTグリップは綺麗なT字ではありませんし、カナディアンカヌーで使うビーバーテイルなんかはかなり特殊な形をしていますがTグリップと呼びます。

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