
最近パッタリと更新が途絶えていましたが、活動は続けています。
この時期になるとSNS等でもでリバベンの告知や御岳カップの告知などが相次いで、語りたい欲が湧き出してきます。
ここ最近サボっていた更新ももう少し頑張ろうかなと思えてきます。
そんな今回からは4回にわたって『レース戦略』について語っていこうかなと思います。
カヌーコーチの資格を持ち様々なレースシーンを経験してきたからこそ言える「レースの組み立て方」を解説していきます。
そもそも「レース戦略」とは
レース戦略とはラフティングやカヌーで言えばパドリングに関する直接的な技術ではなく、どこで攻めるのか・出力はどれくらいにするのか・コンセプトはどうするのかといったようなチームとしてのスタイルのようなものです。
組んで長いチームで毎日のように練習していて自分たちなりに信念があるというチームはそれを優先した方が速いですし、この記事は読む価値がないので飛ばしていただいて結構です。
私自身、寄せ集めのチームでぶっつけ本番というシーンが多かったのでそのような経験や検証を積む機会が多かったのです。
組んで間もないチームや、新人ばかりで方向性に迷っている、イマイチ何が正解かわからないという方には参考にしてほしい記事です。
『SP(スプリント)』競技の位置づけ
4種目1000点満点を競うラフティングの総合種目においてはSPは比重が軽視されがちな競技になりがちです。SP 100/H2H 200/SL 350/DR 350 の総合1000ポイントにおいてはかなり比重が低いです。
しかし、スプリントのタイム順でH2Hが決まったり上級・中級が分かれたりと点数以外の比重がバグっている競技でもあります。
さらにスプリントに求められるダッシュ力はH2HやSLにも必要になってくるので能力としてもなかなか侮れない競技です。
総合得点制ではそこまで比重は重くありませんがレースによっては落とした瞬間「表彰台圏外」が確定する鬼門競技となります。
『SP』の戦略
さて本題のSPのレース戦略ですが、結果から言うと私がコーチとして指導するなら
「何も考えなくていいから限界まで回せ!(漕げ!)」です!!
「パドリングの質が・・・」「1パドルで進む距離が・・・」なんて語っているやつの言葉とは思えませんが、急ごしらえのチームで最善の結果を出すにはこれしかありません(笑)。
もっというと「ゴールと同時に倒れ込むくらいの覚悟で、喉が掻き切れるくらい呼吸して限界まで漕げ!気合いでなんとかしろ!!」です。
脳筋アホコーチのような発言ですが、これには運動生理学やパドリング理論・実際にとったタイムの裏付けもあります。
レースラフティングにおけるSP
ラフティングのSP競技はリバベンの場合で約400mのダッシュです。タイムにすると2分前後です。
実はこれは運動生理学的には一番しんどい時間です。
運動生理学的に人間が無酸素でいける時間は約30秒ほどが限界です。これを越えると体内のエネルギー代謝が切り替わってくるのですがこの変遷期が実はかなりしんどいのです(ATP再合成の話です)。1分ちょっとまでの間にクレアチン系から解糖系へ切り替わりそこからさらに有酸素系へ切り替わるので実はかなりしんどい時間が長いのです。
そこを最大出力でいくというと辛いのは確定です。
それを乗り越えていけるのは冗談抜きで「精神力」しかないのです。
私も何年も小手先の技術でそこを乗り越えられないかやってみましたが無理でした(笑)!結局はキレイじゃなくても最後まで全力で漕ぎ切ったチームの方が結果は良いのです。
ここからはリバベンの水紀行館前を例に実際の戦略をお伝えします。
①スタート
多くのチームが悩むところでしょう。スロースタートで徐々に加速させていくのか、本流に乗って流れを使うのかといったところですが一番速いのは「本流ど真ん中で何も考えずバチ漕ぎ!」です。
スタートがエディーの場合はそこで頑張る必要はもちろんありません。一度本流に乗るのは一つの手です。問題はそこから光電管に至るまでですが、「光電管までにトップスピード」ではなく「最初からトップスピード」へかち上げる覚悟でいってください。「そんなことしたら無駄な加速が多くてスタート前に疲れちゃう・・・」と思う方もいるかもしれませんが安心してください!光電管までのたかだか10m程度でトップスピードに達して巡航状態に入ることは不可能です。カヌースプリントのトップ選手ですら最高速度は20mを超えたあたりからです。最高速が低い代わりにストップ・アンド・ゴーに長けたスラ艇でも静水スタートで巡航速度まで上げるには加速に10mほど必要です。光電管までのほんの数メートルでトップスピードに上げるだけの技術と体力があるなら競技を変えることをオススメします。加速後の巡航に入るのは光電管を切ってさらに進んでスタートの無呼吸区間が終わってからになるはずです。
光電管までにトップスピードになればいいから徐々に加速・・・なんて甘いことを言っているとトップスピードどころか加速期の途中で光電管を切ってしまいタイムも出ませんし加速しきれず負荷が高い状態が続くので余計に疲れてしまいます。
スタートは光電管に向かって全力!光電管からもしばらくは全力!!が基本です。
②ウェーブへの合わせ
自然河川だから波に合わせた方が速いよね!と思われがちですが、基本的にはよほど大きなストッパー以外は全無視で大丈夫です!
リバベンのSPでは護岸に近づいてきた時の一番大きいのさえかわせればあとは全部踏みつけでもOKかと思っています。もちろん理想のラインはありますし通りたい場所はありますがそれを意識しすぎてスターンがラダーの入れ合いをするくらいなら多少ラインがずれてもアングルが合っているなら真っ直ぐだけ作ってガンガン4人で出力して踏み潰した方が速いです。
DRなどの持久戦になるとウェーブに上手く乗せていかに手を抜いてタイムを維持するかを考えますがスプリントで0.1秒を削り出そうと考えるなら出力の方が手っ取り早いし確実なのです。
いちいち小さなウェーブに合わせる必要はほとんどありませんし、パドリングのピッチを変える必要はほとんどないと思っています。核心部の処理さえきちんと出来ていればあとはほぼ静水漕ぎと変わらずガンガン漕ぐで大丈夫なはずです。
また、ウェーブへの合わせというのは思っている以上にシビアでパドルを指す場所と出力のタイミング・ボートへの伝え方で結果がかなり変わってきます。これが左右でズレるとさらにボートがブレます。ウェーブ合わせは誰がみても分かる大きな波以外は一朝一夕ではまず合いません。練度が高い選手たちだけなら合うかもしれませんがそれでもスタイルやフォームによって微妙に違うのでわかりやすいウェーブ以外は無視を決め込んだ方がうまくいく場合が多いです。
③ペース作り
スタートダッシュと巡航期で変わりますが、スタートダッシュでは90bpmくらいでは漕ぎたいところです。もちろんパドルが水中で滑らずしっかりと効いている前提ですが最初の30メートルくらいはこのピッチは維持したいところです。
そこから巡航期に入っても80bpmはキープしたいというのが理想です。
スマホアプリでメトロノームやテンポと調べるとたくさんありますのでぜひ一度どれくらいのペースか感じてみてください。そしてそれに合わせて体を動かして可能であれば漕いでみてください。90bpmはキープするとなるとかなりシンドイはずです。そして80bpmで巡航というのもなかなかにギリギリなはずです。
私も色々と試しましたがスタートで90bpmを超えていくと徐々にストロークが短くなり入水・キャッチが雑になってしまいストロークの質が低下し始めます。逆に下は75bpmを切ったあたりでスタートダッシュとは呼べなくなりトップスピードまで持ち上がらなくなります。
巡航では90bpmでは早すぎて無呼吸状態が続くためそもそも心臓が保ちません。下は70bpmくらいで、その辺りになると身体は楽ですがせっかく持ち上げたスピードを維持できなくなり徐々に妥当なラインまで減速していきます。
ウェーブの突破力や速度による安定性を考えるとやはり80bpmくらいが理想かなと思います。
④ライン
もちろん自然河川において流速の速い最速のラインを取ることはかなり重要です。
しかし、ラインを意識し過ぎるあまりスターンの二人が漕ぎに参加できなかったりラダーを入れ合いしているのは論外です。リバベンSPの場合は護岸近くで左コーナになるので左スターンが角度を決めていき、基本は全員で漕ぎ続けるというのが理想です。その際多少ラインが外れてもきっちりと修正しようとせずある程度で妥協してガンガン漕いだほうが良いタイムが出る傾向にあります。
SLの場合はゲートエントリーや次のゲートへの繋ぎがあるのでラインはものすごく重要ですが、SPにおいてはある程度で妥協して出力していくという度量が必要と言えるでしょう。
技術のある左スターンがいるのであれば、本来は右スターンはバウ二人と一緒にひたすらフォワードで行けるコースなはずです。
まとめ
ラインやテクニックに逃げたくなるスプリント競技ですが、スプリントこそ「とにかく漕ぐ!」競技です。
YouTubeで「カヌースプリント200m(canoe sprint 200m)」を検索してみてくださいありえない回転数で回している選手が山ほど出てきます。本来の「スプリント」はこれぐらい漕ぐものだというのを感じさせてくれます。
チームとしての戦略やスタイルが決まっていないチームや、寄せ集めエンジョイチームで手っ取り早く結果を狙うなら今回紹介した方法がおすすめです。

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