練習というと様々な練習があります。特にラフティングの場合メイン4種目(SP・H2H・SL・DR)をこなさなければならないので練習の幅が広がってしまいます。川でやる練習一つとってもダウンリバーなのかスラロームなのかスプリントなのかで違います。さらにスプリントだとしても体力的な練習なのかスタートで前に出るためのテクニカルな練習なのかで違います。
普段チームで集まって川で練習する際は「どんな練習を何に焦点を当てて」やっていますか?
今回は具体的な練習というよりは「練習論」について解説していこうと思います。
人は得意なことを練習したがる
最近ではラフティングチームでも川でゲートを張って練習するチームが増えてきたように感じます。一昔前ではゲートも張らずに「あの岩下とってその次は大体あの流れを使ってあっちの岩下で・・・」なんてチームがほとんどでした。これに関してはゲートの張り方や練習を普及させた御岳カヌー教室やチームテイケイの功績だと思います。
しかし、ゲートもうまく練習に活かせなければ意味がありません。
皆さんゲートを張る時ってどこにゲートを張りますか?例えば6本のゲートを張るとします。アップゲートとダウンゲートの比率はどうしますか?どんな練習をするためのセットを組みますか?
練習風景などを見ていた感じ多くのチームは4:2くらいの比率でアップゲートを多く張ります。ましてゲート数が4本と少なくなると全ゲートアップゲートというチームも多いでしょう。
不思議なことにラフティング選手の多くはアップゲートを重点的に練習したがるものです。
アップゲートへの入り・いかに落とされずにゲート下へ入るか・いかにコンパクトに出るか・いかに次につながるように出られるかなどです。心当たりありませんか(笑)?
アップゲートの練習も結構ですが実はスラロームでタイム差がつくのは多くの場合アップゲートではありません(後で解説します)。
決してアップゲートの練習自体を否定している訳ではありません。それではもうひとつ思い返してほしいのですが、普段どんなセットを想定して練習していますか?
エディーの真ん中くらいに張られてしっかり水平で高さもそこそこあるゲートばかり練習していませんか(笑)?「そんな事ない!調整してる!考えてる!」といってもスラロームのメッカ「御岳」なんかだとそれ用にアンカーがとられているので無理矢理に調整しないと「イヤらしいゲート」は張れなくなっています。そのため同じセクションで違うチームがゲートを張ってもほとんど同じセットになります。一ヶ月後にまたきてゲートを張っても同じようなセットで練習しています。
何が言いたいかというとみんな「得意な練習がしたい」んです!教科書に出てくるような綺麗なアップゲートに入ってギリギリでターンしてカッコよく飛び出したいんです!(笑)
あるコーチから聞いた話ですがスラロームの選手は自由に練習させると自分の得意サイドのアップゲート(とそこから繋がるコンビネーション)ばかり練習するそうです。当然カヤックでも利き手があるのと同じように右が得意・左が得意があります。何も言わないとずっと得意な方ばかりで練習するそうです。
また、得意な方法も当然あります。何でもかんでもバックスイープでスタンカットを狙う選手やスイープアップを狙う選手などどうしても人なので得意なことをやりたくなります。
得意だけじゃ勝てない
当然練習の目的は上手くなるためであり、なぜ上手くなりたいかというとレースで勝ちたいからです。
そのためには満遍なく全てをこなせる必要があります。苦手な事があるとそのセットが出てきたらお終いです。スラロームの場合どうせ通れないからと不通過すると50秒で実質「負け」です。
2017年の吉野川W杯(※オープンとマスター)を例に挙げると14ゲート中5ゲート(2・4・7・10・13)がアップゲートでした(アップゲートが奇数というのは疑問ですが)。それでは5本あるアップゲートのうち何本が気持ちよく通れるアップゲートだったでしょうか?
私が見返した感想では4・13の二本だけです。他は流れの中にあったりエディーラインの影響を受けていたり奥めだったりとテクニックが必要なゲートになっているイメージです。また、エントリーからストリームインまでの一連の流れで言うと13だけでしょう。4は上流の岩に近くストリームインで早めにバウを抜かないとつっかえてしまうからです。
頑張って練習しているアップゲートですがいざ本番で通用するのが1本だけって悲しくないですか?笑
他の4本に対してそれまでの練習が全く通用しない訳ではありませんが、当然好タイムは期待できません。
エディーの奥のアップゲート・エディーライン上のアップゲート・緩やかな流れの中のアップゲートなどなどアップゲートだけでも様々なバリエーションがあります。どれか一つがすごく早いよりも全体的に問題なくこなせる方がタイムにも結びつきやすいし応用もききます。
その他ダウンゲート・・・
これまで書いてきたように多くのチームはアップゲートに主眼を置きがちです。どこか激しいところに張られているアップゲートを見つけてその前後のつなぎを中心にスカウティングし話し合いをしている印象を受けます。
今回例として解説しているワールドカップのセットだとおそらく7番ゲートを中心に6からのつなぎと8へのアウトの角度について重点的に話し合われるのではないでしょうか?
わたしの個人的な感覚では多くのチームはアップゲートがメインでその前後に付帯するダウンゲートがフリのダウンゲートでそれ以外は「その他のダウンゲート」という認識を持っていると思います。おそらくその認識の根源は「リバベン」でしょう。会場となる「みなかみ」はアンカーの位置がかなり限られる上に一昔前ではスリーウェイズでスラロームをやっていました。学生がセットするのでゲート数が少ない上に瀬の形的にどうしても核となるアップゲートが生まれてしまいます。そもそも4年生でも「スタガーゲート」の意味がわかっていない人もたまにいます。
「アップゲートがメインになってしまう環境」+「その環境で育った先輩に教わる後輩」=「アップゲートメインのレース構築」となるのだと勝手に認識しています笑。半分は冗談ですがまんざら間違ってもいないと思っています。
ダウンゲートの練習
普段皆さんどれくらいダウンゲートの練習ってしますか?訂正します「普段どれくらい”流水で”ダウンゲートの練習ってしますか?」
何が言いたいかというとダウンゲートの練習は静水と流水で全く勝手が違います。
かなり極端ですがわたしは静水のダウンゲートはほぼ無意味だと思っています(もちろん様々な考えがあるとは思います)。理由は単純で静水は「流れで加速しないから」です!ダウンゲートの難しさは流れによる下流への加速です。加速を期待しすぎるとつっかえてしまい、舐めてかかると手遅れになります。流れの強さを読み的確なタイミングで的確にターンさせる必要があります。さらに動きが速く連続してくるので「待ち」のタイミングがシビアになりスライスやバウラダーの精度が必要になります。また、本流上のゲートなどは不通過すると取り返しが効かない事がほとんどです(アップゲートは一度止まってでも漕ぎ登ればリトライできたりします)。
「本流上で連続してくるスタガーゲート」実はこれがいちばん難しいセットだと思います。さらにいうと左右のフリも深すぎず浅すぎず、一度切り返すかバウから全て通すのか迷うくらいのセットがいちばん難しいと思います。アップゲートが難しく感じるのも原因はそこにあります。スタガーゲートで体勢を崩されてしまっているので次のアップが難しく感じるといったものです。
そんないやらしいダウンゲートの練習はしていますか(笑)。?私が御岳にいた間に少なくともラフトでは見たことありません!
普段多くのチームがゲートを張る「ハッカケ」でもアップゲートのアンカーをそのまま使うだけでスタガーができたりします。
たまにはテイストの違う練習をしてみると刺激になって面白かったりもします。
実例
トップの画像になっているゲートの写真ですが、これは2014年の御岳カップの写真です。2・3・4がダウンで5が右岸アップです(少し見にくいですが・・・)。5のアップはキレイなエディーにあるのでさほど難しくありません。手前の3本が曲者です。2−3は間隔があって加速しやすくなっているのに3−4で急に狭めて深めにずらしているため調子よく加速していくと4の前後でつっかえて減速してしまうというセットです。また、2の後しっかりと右岸に向けないと本流に乗ってしまい3のインポールへの接触リスクも上がります。
この4ゲートに関してはなんとも良くできたセットだと思います。
まとめ
皆さんぜひ次の練習では「苦手をつぶす!」をやってみてください!進○ゼミの広告ではありませんよ笑!
今回の話をまとめると
- ・やりたいことばかりやっていないか再確認しよう!
- ・得意がひとつあってもその他が多すぎる
- ・実はダウンゲートって難しい
といったところでしょうか。
せっかくチームで練習できる時間にできることをいくらやっても意味がありません。どうせなら「できないできない」ともがいた方が面白いはずです。
今回はダウンゲートの重要性を説くために例に挙げましたが、エディーダウンや流れの中のアップ・ホールを使ったアップゲート(ラフトではほとんどありません)など様々なイレギュラーゲートがあります。ぜひ挑戦してみてください。
コーチや客観的に見てくれる人が身近にいればいいのですが、そうでないチームも実際多いです。そういうチームはセルフマネジメントしなければならないのでぜひ参考にしてみてください。
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