道具レビュー2回目はパドルです!
カヌー・カヤックなどは基本的にみなさん全身個人装備を用意しますがレースラフティングでもっとも選手層の厚い学生チームさん達は個人装備はパドルだけという方も非常に多いです。確かにパドリングギアは高価ですし部で団体装備があるのであればそれで事足ります。
パドルはボートをコントロールする上で唯一直接水に触れる道具なので非常に重要です。ただどうしても一本目となると慎重に選びたいという気持ちと早くマイパドルが欲しいという気持ちが相まって自分に合わないパドルを買ってしまって後々やっぱりもう一本買おうという方も多いです。そんなこれからマイパドルを買おうと思っている方にはぜひ読んでほしい記事です。
実際に使っているという方はかなり手厳しいことも書くので覚悟の上で読んでください。
あくまでレビューは個人の感想なので参考までに。みなさんのこれからのパドリングライフに役立ててもらえれば幸いです。
今回の評価ポイントはシャフトの手触りなどの『質感』、シャフト全体のしなり強度となる『シャフトの硬さ』、ブレード全体のしなり強度となる『ブレードの硬さ』、水中におけるキャッチのしやすさとなる『キャッチの難易度』、パドルの損傷耐性となる『壊れにくさ』の5点と総合評価で表していきます。
galasport 3M
ガラでラフティングというともっとも一般的なパドルは3Mではないでしょうか。
個人で所有したことはありませんが人から借りて何度も使ったことがあります。やはり売れている数が多いので乗り合いなどで借りると3Mであることが非常に多いです。
①総合評価
いきなりですが総合評価は
- 質感 ★★★☆☆
- シャフトの硬さ ★★★☆☆
- ブレードの硬さ ★★★☆☆
- キャッチ難易度 ★★★★☆
- 壊れにくさ ★☆☆☆☆
- 総合 2.8
質感に関しては当然好みが分かれますが、個人的には可もなく不可もなくといったところでしょうか。シャフト表面の質感が少々滑りやすい感じがして★3になっています。
次からは良い点と使っていて気になる点について解説していきます。
②良い点
良い点はなんといっても『扱いやすさ』です。
良く言えば『万能なパドル』で悪く言えば『器用貧乏なパドル』というのが3Mの特徴だと感じています。シャフトの硬さやブレードの硬さにも現れている通り本当に中間地点にあるようなパドルです。もちろん硬さは選手のプレースタイルや筋肉量に応じて変わってくるのですが本当に誰が使っても当たり障りのないような仕上がりになっています。また素直なストレートシャフトからのキャッチは非常にシンプルで初心者でもしっかりとキャッチできるなという印象です。
そこで私はラフティングで選手にパドルについて聞かれた際は「3Mを基準にしろ」と伝えています。3Mであれば大体どこのチームでも1本くらいは持っている人がいて借りやすいですし何よりもキャッチやしなり方にクセがなく基準になる仕上がりだなと思います。まずは3Mを使ってみてシャフトの太い細いをみたりそれまで使っていた団体装備のパドルと比べてみたりして自分の好きなパドルを探すための基準になってくれます。
それくらい3Mはクセがなく扱いやすい一本となっています。初心者の方や予備パドルとしてカーボンパドルを積むという場合にはもっともオーソドックスなパドルで良いかと思います。
③気になる点
気になる点は「特徴のなさ」と「壊れやすさ」です。
まず「特徴のなさ」から解説します。良い点で書いた「扱いやすい」は裏を返すと「特徴がない」になります。初心者の方や誰でも扱える団体装備としては非常に優秀ですが、プレースタイルが固まった選手やパワーに全振り・テクニックに全振りという極端な選手にとっては3Mでも良いですがもっと合うパドルを使ったほうがより良いという結果になってしまいます。実際私が使ってみた感想としては「扱いやすいけどキャッチがモッタリした感じがあってブレード全体がしなって緩い感じがする。力が逃げている感じがしてもっとキャッチの硬いパドルが好き。」というものでした。使っていてダメという訳ではなくこのように基準を作ってくれるけど購入の選択肢にはなりづらいかなという印象です。
また「壊れやすさ」に関しては3Mに限らずガラ全体に言えることですが、コアとカーボンの接着が弱く少しでも傷ができると剥離しやすいような印象です。カヤック用のNajaとシングルブレードのTEを所有していましたがNajaは本当に小さな欠けから水が入ってカーボンが浮いてしまい500円玉よりも大きな剥離になったことがあります。シングルブレードパドルは構造上キャッチの際にはダブルブレードと比べてより深く水中に入ります。特にレースラフティングではカヌーと比べて水面までの距離があるため水中に沈め込んで漕がないとしっかりと漕げない場所もあります。そうなると水中の岩に当たるリスクは上がるのである程度はパドルの強度に対する信頼性も必要といえます。
④3Mまとめ
可もなく不可も無く本当に平均的なパドルです。
輸入・組み立てがZOKENさんなのでブレードとシャフトが別々のタイプを組み立ててもらって使用することをオススメします。また、サイズがマキシ(MAX)かミディー(medium)を選べますがミディーで十分でしょう。
galasport TE
現在ガラから販売されているパドルでC-1の選手が多く使っているのが「シディー」というモデルらしいですが、少し前まではTEもかなりいました(パドル形状は流行り廃りがあるので割と年代は関係ありません)。ブレードの先端が少し前に出ているタイプのパドルでキャッチに少々クセのあるパドルです。
①総合評価
- 質感 ★★★☆☆
- シャフトの硬さ ★★★☆☆
- ブレードの硬さ ★★★☆☆
- キャッチ難易度 ★★☆☆☆
- 壊れにくさ ★☆☆☆☆
- 総合 2.4
今回挙げている基準で判断すると3Mよりも低評価ということになってしまいます。
今回の基準はあくまでも「誰でも扱える、初心者でも扱える」で評価しているのでキャッチにクセのあるTEは低評価という形になってしまいました。
もちろんこの評価基準以上に様々な使い勝手の要因などがあるのでそれを解説していきます。
②良い点
TEのクセであり良さはブレード部分がシャフトの軸よりも少し前に出た形状をしているということです。以前「パドルの選び方」という記事でも解説しました。
この形状により「入水はより前から、フィニッシュも前で素早く!」というパドルになっています。
バウ側で回転数を上げてリズムよく漕ぐならTEは非常に優れたパドルです。実際にデザインした元フランスC-1代表のトニー・エスタンゲもリズムよくキレイに漕ぐ選手でした。
少しマニアックな話になってしまいますが最近のパドルはシャフトの付け根からチップに向けて徐々に広がっていくような形状をしているものが多いですが、TEはブレード中腹からチップに向けて真っ直ぐに落ちているような形状をしています。これによりスライスやバウラダーが先端部分で引っかかりすぎずスムーズに行えます。
③気になる点
TEの形状はシャフトをクランク(折り曲げて)させて前に出したパワートルクとは異なり、ブレード付け根からブレードが前に伸びているので握り心地が異なります。
極端に書き表すと上の図のようになります。TEは図の右側のような形状になるのですがこれにより入水の際叩き込むような癖のある選手が扱うと水中方向に向かって水を押し込んでしまうような動作になりがちです。また、角度がついている分ストレートシャフトと比べてキャッチ面を合わせた際のパドル角度が立っておりシャフトを掴んでいる感覚が異なります。
特にストレートシャフトと異なるのがスライスやバウラダーなどパドルを立てる動作の際には意識的に立てにいかないと角度が甘く上手く効かないということです。私もC-1で使っていましたが微妙な角度の差ですが感覚的にはかなり異なります。ただ、パドルをしっかりと立てるために腕ではなく骨盤からしっかりと立てられるようになるとパドルそのものの性能を発揮してかなり漕ぎやすくなります。
このような少々特徴のあるパドルになっているので初心者にはいきなりオススメできないかなというのが本音です。
④TEまとめ
ある程度パドリングにも慣れてきて3Mも使ってみたけど物足りないなという選手にはオススメなパドルですが、はじめたばかりの選手がいきなりTEに手を出すのも違うのかなと思ってしまう使い心地です。
個人的にはリーチのある選手がダッキーなどラフトよりも軽い船で少し長めに組んだTEで体型を活かして漕いでいくには良いパドルかなと思いますし、評価基準に当てはめると低いですが実際に使った感じも悪くないかなという印象です。
最後に
結局パドルは好き嫌いが分かれるので好きなものを買って使っていくのが一番です。特にシャフトの質感などは個人のフィーリングになるので購入前にはぜひ一度触ってみることをオススメします。
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