ラフトボート修理

漕ぎの技術やパドルの選び方以上に質問が多いのがボートやパドルの修理です。

パドルに使われるカーボンやグラスファイバーといったFRP製品の修理は工程と基本さえ理解していればあとはどれだけ丁寧に段取りを組んで作業を進めるかなのでそこまで難しいものではありません。どちらかというと樹脂や繊維を用意したりと金銭面で負担になることの方が多いです。(以前パドル修理の記事は書いたので気になる方は読んでみてください)

対してラフトボートに使われるPVCなどのゴム製品の修理はリペアキットなどの付属品のおかげで金銭的負担は少ないものの、破損箇所によって工程が大きく変わるので応用力とボート構造の理解が必要になります。

ラフトの修理は破損箇所によってはメーカーもお断りしてくるものがあります。そもそもがかなり高い買い物なんだから接着不良などの初期不良に近い破損に関しては製造者責任でなんとかしてくれよとは思いますが、それくらいにゴム製品の修理は難しいということなのでしょう。

筆者自身ゴム製品を専門に直していたことはありませんが、ある程度は自分達でボートを修理していましたし、仕事柄メーカーの方の意見を聞く機会もあったので今回はそのことについても触れながらゴムボートの基本修理について書いていければと思います。

エア漏れの確認方法

大きな裂傷や穴など目で見てここに傷があるかとわかれば良いのですが、小さな傷やバルブ部分のズレなど一気に空気が抜けないようなものはなかなか気づくことができません。

そういった場合はボートを膨らませた状態で「ここかな…?」という箇所に石鹸や中性洗剤を吹き付けるとわかりやすいです。空気が漏れていると石鹸が泡を吹きます。

場所がわかったら石鹸を拭き取って油性ペンなどでマーキングしておけば後で見失うこともありません。

ピンホール:難易度★☆☆☆☆

ピンホールというのは小さな穴のことです。安全ピンで刺したよりも小さな穴が空くことがあります。小石や水中のゴミなどが原因です。ピンホールの段階で見つけることができれば修理も比較的容易です。

ラフトボートなどに使われる生地はレイヤー構造といって一枚のゴム層だけではなく複数枚の生地を重ねて圧着してあります。レースでよく使うグモテックス・コロラドのスターン部分などをよく見ると継目からほつれたヒモのようなものがでている場合があります。これはゴム生地→繊維生地→ゴム生地と重ねて作られたレイヤー生地を使用しており、継ぎ目などでは中間の繊維生地も外部に露出しやすくなります。

ピンホールは完全に生地を貫通している場合もありますが、多くの場合は繊維生地のあたりでキズが止まっています。そこから空気が微小漏えいするといった場合がほとんどです。

ピンホールイメージ

図では見えるように大きく表現していますがこれが1mm前後のサイズで起きるのがピンホールです。右側の穴あき図の上下で何が違うのかというと、表面のキズついたゴム生地が残っているかどうかです。1mmの規模で表面に生地が残っているとなかなかキズ自体を発見できません。そうした際に前述した石鹸などでピンホールの位置を探します。

修理方法としては表面からリペアキットの生地を大きめに貼るだけです。ピンホール程度であれば上図右下のように生地が浮いているものは無理に浮いた部分を切除せず、そのまま覆い隠すように貼ってしまって概ね問題ありません。

リペア生地貼り付け図

ただし、複数回修理していて前回の接着剤が残っているといった場合などは除去する必要があります。接着剤の除去には用意できるのであればアセトンなどの溶剤があれば楽に剥がせます。ないのであれば灯油などの石油製品でも代替できます(ガソリンは危険なので絶対に使わないでください)。

接着剤は基本的にリペアキット付属のもので大丈夫です。使いすぎてきらしているようであれば、個人的にはアクアシールという製品を使用しています。ラフター大好きボンドG17でもよいのですが、G17は本来圧着前提なので使用方法が少々面倒くさいです。カヌーのフィッティング用のフォーム材を扱うのであればG17の方が便利なのですが、ラフトではアクアシールの方が使い勝手が良いように感じます。

貼り付ける際のポイントとしては、生地を少し大きめに切り、「丸型」もしくは「角を落とした四角」にして貼り付けます。角がある形だと角部分に負荷がかかりそこから剥がれやすくなります

生地カットイメージ

また、ゴム生地を貼り付ける際はカーボンなどと違ってサンディング(ヤスリなどによるキズだし)は行いません。行わないというよりは「やってはいけない」といったところです。メーカーさんから聞いた話ですが、ゴム生地に対してサンディングしてもほとんど意味はないしただ生地が薄くなってしまい良くないそうです。

岩などによる裂傷:難易度★★★☆☆

自然河川で使用するラフトボートはどんなに気をつけていても必ず岩などに擦れて擦りすりキズがつきます。鋭い岩に擦れてその場でバーストすることもあれば、深めの擦りキズを放置していてそれが熱膨張などによる負荷に耐えられなくなって裂けたりとさまざまです。

後で解説しますが、裂傷が生地同士の接着面にかかっていると修理はほぼ不可能です。ここではあくまでフロアやサイドチューブなどフラットな面にできた大きなキズについて解説します。

基本的な修理方法はピンホールとそこまで変わりません。違いとしてはキズが大きくなればなるほど中間層の繊維生地の糸がほつれて飛び出してきたり、裂けてしまってヨレヨレになったゴム生地が出てきます。そういった箇所はハサミなどで軽く切ってしまいます。残しておくと接着不良の原因になりかねません。

また、キズが大きくなると接着の際に内部に接着剤が侵入して反対側の生地とくっついてしまうという事象が発生します。厳密に言えばピンホールの修理でもキズ口内部に接着剤は浸透するのですが、穴が小さく反対側の生地とくっついても簡単に剥がれる程度しか侵入しないので気にする必要がないというだけです。そのため大きなキズの際は内張うちばりをしていく必要があります。

生地接着イメージ

裂けたキズは一見するとキズ口もキレイでピッタリと貼り合わせられそうと思われがちですが接着剤はほぼ液体なので微小な隙間からでも侵入します。そのため内側から目張りのようなものをしなければなりません。AIRE社のリペアキットには専用のテープのようなものがついてきます。透明で引っ張れば少し伸びるような肉厚なナイロンテープのようなものですが製品名が公開されていないのでわかりません。調べた感じで一番近いのはNittoのプラスチック補修テープです(製品はコチラ)。もちろんこれ以外でもしっかりと目張りができるものであればなんでも大丈夫です。あくまでもリペアキットに入っているのはこういったものですよという紹介です。

この内側からの目張りが非常に面倒です。気室の内側から貼らなければならないので最初のうちは良いのですが、最後には手が入らなくなります。そのためキレイに内張するのは非常に困難です。そこで手が入るうちに反対側に仮止めしてつけてみたりバルブから近い位置であればバルブを外して手をいれられるようにしてみたりと様々頭を使うのですが大変です。こればかりはキズの位置次第になってしまうので正解はありません。この内張の難しさというところを踏まえてピンホールよりも難しいという判断になっています。

内張さえできてしまえばあとはピンホールの時となんら変わりはありません。丸みを持たせた生地を貼り付けて接着するだけです。

空気圧オーバーによる穴:難易度★★★★☆

近年レースシーンで使われるグモテックス・コロラドはアウターが1層構造なので空気圧による『穴』というのはほとんどお目にかかることはないでしょう。今でも残っているとすればAIRE社のリンクスシリーズ(ダッキー)がアウターチューブ×インナーチューブの2層構造となっており、そのインナーチューブが小石を噛んでみたり、おかしな角度でインナーが収納されて空気圧をかけられたりした結果、一部に負荷が集中して穴があくという現象があります。

修理中のインナーチューブ:筆者撮影

写真はリンクスⅡのインナーです。透明で若干伸縮性のある生地を使用しています。非常に軽いのですが薄くて収納用のチャックで噛んだだけでも白く変色するくらい弱いです。

穴があくとアウターのように裂けるというよりは本当に破裂したという表現の方が近い形で、穴付近の生地は引っ張られてヨレヨレになってしまいます。

修理の大原則は裂傷の時と同じです。ヨレてしまった生地を取り除く→内張を作る→リペア生地を貼り付けるです。

なぜ裂傷と難易度を分けているのかというと、キズのできやすい位置と『穴』という特性にあります。まず、キズができやすいのはバウの先端付近です。画像の位置もほぼバウの先端です。アウターチューブの形状を維持して圧力をかけるという観点からもアウターよりもインナーの方がチューブそのものが大きくなります。スターン側はバルブの位置で固定になるので簡単にはズレないのですが、バウ側は余ったインナーを折りたたんだりしてなかば無理やり詰め込みます。そのせいで負荷がかかりやすくなります。キズはバウ側にできるのにバウ側はバルブから最も遠い位置なので内張の際にバルブから手を入れるという手法が使いづらく手間がかかります。さらに先端に向かって細くなっているのが見て取れるかと思います。そのせいで両サイドのゴムの圧着部分にキズが干渉することがよくあります。キズ自体は圧着部分にかかっていなくてもギリギリすぎるとリペアの生地を貼る際に干渉したり内張ができなくなってしまったりと困難を極めます。それに加えて『穴』があくと周辺のヨレた生地を取り除かなければいけません。この生地を取り除く際にどこまでカットするのかというのがものすごく重要になります。

穴周辺カットイメージ

図下段のようにキズ口部分を完全に取り除けるのであればリペア生地の接着時に邪魔にもならないし理想です。しかし、穴が大きい場合などは取り除きすぎるとその後の接着面が広くなりすぎるというデメリットもあります。完全に取り除こうと思うとキズ口が広がりすぎてしまい前述したようにゴムの圧着部分にかかってしまうということが往々にして起こります。そのため図上段のようにカット面を少なくしてキズの面積を狭める必要が出てくる箇所もあります。しかし、これをやりすぎるとヨレている部分が残ることになってしまい、再びそこに負荷がかかりやすくなるので再度剥がれるリスクは格段に高くなります。このリスクをどこまで許容できるのかというのはキズ口の位置と自分たちの修理スキルに依存するので難易度が高くなっています。

バルブ周辺からのエア漏れ:難易度★★★☆☆

おそらくラフト不具合率No1がバルブ周辺からのエア漏れです。

一言にバルブからのエア漏れと言っても原因は複数あります。

①返しに異物が詰まる・返しのゴムが水を吸う

バルブの基本構造

バルブは図のように矢印を逆さまにしたような返しかえしがついたものをバネで固定している構造をしています。この返しを下げることにより空気を出し入れできるようにしたり栓をしたりしています。

返しの部分はゴムパッキンなので当然経年劣化します。また、自然の中で使うものなのでどうしても小石やゴミといった異物が入り込むリスクもあります。小石程度であればポンプやボートの空気圧で飛んだりするのですが、ごく稀に糸状のようなものを噛んでしまうことがあります。その場合絡みついてしまい空気圧では飛ばなくなってしまいます。そうなると一度バルブをバラして異物を取り除く必要があります。バルブの取り外し自体はそこまで難しいことはなく、大体の場合リペアキットにハンドルが付属しているのでそれで開けられます。問題は取り付ける時です。取り付けに関してはこの後『バルブのズレ』で解説します。

「返しのゴムが水を吸う」というのはあまりイメージがつかないかもしれません。どういうことかというと、返しのゴムが経年劣化してスポンジ状になってしまいバルブに侵入した水を吸って膨張してしまうのです。膨張すると返しを固定しているパーツに干渉してしまい動きが悪くなります。そうなると上手く栓がされずバルブとしての機能を果たさなくなってしまうことがあります。ある程度の経年劣化で起きるものなので、そうなってしまったらバルブごと交換するしかありません。

漕ぐ際にしっかりとバルブキャップを閉めなかったり、空気を入れる際に水を飛ばしたりしないことがあるとバルブ周辺に水が溜まって劣化を早めます。

②バルブそのものが緩む

多くの不具合がこのバルブ緩みです。どうしても工業製品なので当たり外れはあります。ましてや海外メーカーなので基本的に作業は全て適当です。なんか漕いでいると徐々に空気圧が下がるな…と感じたらまずはバルブを増し締めしてみてください。結構締まるはずです。

バルブの増し締め自体はリペアキットの工具があれば簡単にできます。空気を抜いた状態で裏側から気室内のバルブをしっかりと押さえて回すだけです。これ自体は難易度★☆☆☆☆くらいです。

③バルブのズレや密着部に異物がつく

バルブに不具合があってバラした場合には注意が必要です。バルブを再度取り付ける際には手間がかかります。

まずそもそもしっかりと穴の中心に差し込まないとエア漏れします。新品のボートであればバルブの穴とボートの穴がキッチリなのですが、年季が入っていくと折り畳んでは広げてを繰り返すのでバルブ周辺もヘタってきます。そうなると生地が波打っていたり伸びて穴が広がったりしてうまくつかないことがあります。まずはしっかりと真ん中に差し込むことが重要です。

厄介なのはバルブをバラしてみた際に接着剤の跡が着いていた時です。年式やメーカーによって様々ですが、バルブをしっかりと固定するために気室の外側に接着剤をつけている場合があります。グモテックス・コロラドではあまり見ない気がしますが、AIRE社のボートではたまに見ます。

バルブパッキン挿入イメージ

ここで言うパッキンとはゴム製のものではなく、プラスチックリングでスペーサーの役割も果たしているようなものです。このプラスチックリングにびっしりと接着剤がついている場合があります。再度取り付ける際にはこの接着剤跡もキレイに剥がす必要があります。この作業を怠ると接着剤のカスが隙間に入ってしまいエア漏れの原因になります。また、新しいバルブの挿入時にも同じように接着剤をつけてやらなければいけません。プラスチックパッキンはそもそもそこまで気密性が高くないので同じように固定しないとエア漏れの原因になってしまいます。接着剤の量によっては締め込んだ際に溢れてきたりして養生が非常に面倒です。

さらにバルブを締め込む際には「シーリングテープ」と呼ばれる水道管工事などで使うテープを巻いてやるとエア漏れのリスクが下がります。バルブをバラした際にネジ山に白いリング状のカスがついていればそれがシーリングテープです。最初からシーリングテープをしていたものに関しては再度組み上げる際もつけないとエア漏れのリスクが上がります。ビニールテープのように引っ張って伸ばしながら巻くのですがあまり巻きすぎると今度はネジが入っていかなくなるので作業にはある程度の経験が必要です。

バルブ周りは内張を貼るような応用力を問われたりする作業はないものの、細かいところに気を使う作業が多く、シーリングテープやパッキンの清掃といった手間だからついつい飛ばしたくなる作業も多く難易度は少し高めになっています。

余談ですが、バルブのエア漏れに対して「バラすと面倒だし壊れそうだから。」といってバルブの縁にG17などのゴム形接着剤を盛っていく方がたまにいますが、その場しのぎでは良いかもしれませんが後々もっと面倒臭いことになるので個人的にはオススメしません。

オーバープレッシャーバルブのエア漏れ:難易度★★☆☆☆

オーバープレッシャーバルブ(以降:OPVと記載)というのは多くのラフトボートのフロアーについています。空気の出し入れをする通常のバルブの横に圧をかけすぎると「ブーーー」と音がするバルブがついていますがそれがOPVです。よく「セルフベイラー」と呼ぶ方がいますがセルフベイラーとは本来「水抜け穴」のことです。

OPVの役割は圧力の異常な上昇によるバーストの回避です。ポンプアップや熱膨張によって圧力が一定以上になると逆止弁ぎゃくしべんを押し上げて空気を逃すものです。

OPVの基本構造

一定の圧力以上になるとバルブが解放して圧力が低下すると押し上げられなくなり閉止するのですが、水の侵入によるバネの劣化や異物混入などによる不具合で規定の圧力以下で解放してしまったり解放後圧が下がったのに閉止しないといった事象も発生します。

対応としてはバルブごと交換してしまうのがもちろん最善です。ただ、競技に臨むにあたって個人的にはOPVの作動圧力では正直ボートがゆるい気はします。そのような場合は自己責任にはなりますがダクトテープなどでOPVを上から塞いでしまって無理やり作動させないようにするといった方法もあります。塞いだ場合はポンプアップして加圧しても音はしますがどんどん加圧されるのでバーストに注意が必要です。特にフロアチューブはサイドチューブと同じように攻めたポンプアップをすると、フロアのボコボコとした丸みを出している骨格部分が裂けて歪な形になっていきます。ちなみにその場合は修理不可能です。

OPVは何かと不具合の多いパーツですが、フロアチューブを守るという意味では必要ですしどう直すかは歯がゆいところではあります。

ボート継ぎ目部分の接着剤剥離・裂傷:難易度★★★★★★★★★★★

グモテックス・コロラド継目イメージ

最も多いコロラドのバーストは継目の剥離です。

余談にはなりますが、なぜ晴れた暑い日にバーストが多いのか考えたことはありますか?大体は中の空気が熱膨張して耐えられなくなってバーストすると教わります。もちろん正解です。ただ、これ以外にも理由があります。それは熱で接着剤が溶けるからです。みんな大好きボンドG17の使用温度はカタログスペックで-20℃〜60℃です。直射日光の中河原で1時間も放置すれば触れないくらいには熱くなるので50℃は超えています。上限ギリギリということはすでに溶け始めている可能性は十分にあります。膨張が怖くて空気を抜いて放置してたけど運びづらいから軽くポンプアップして…なんてやっていると弛んだ接着剤が剥離する可能性は十分にあります。ちなみにですがインフレータブルのSUPなどでも白よりも黒のバースト・不具合率が圧倒的です。黒の方が熱を持ちやすく水に浮いていても濡れていないところはどんどん熱くなるので接着剤が溶けてしまうのです。確かに黒の方がカッコよく見えるかもしれませんが個人的には絶対にオススメしません。

話は少し逸れましたが、コロラドも接着剤の面がしっかりと日に当たる場所にでているので注意が必要です。

そして接着面は剥離した場合製造メーカーさんも修理入庫お断りです。また、胡散臭いゴムメーカーが「できると思います!送ってください!」→「なんとかしてなおします!!」→「無理でした。着払いで送り返します。」といってSNSのいい宣伝材料にされて終わった学生さんの話も知っていますが、それも接着面周辺のバーストでした。

サイドチューブの接着面がバーストした場合は修理しようなんて考えず、諦めて他のボートへの生きているパーツ取り用の船にしてしまうしかありません。グモテックス・コロラドのサイドチューブを例に修理不可能な理由を解説します。

サイドチューブ接着面イメージ

サイドチューブは2枚の生地を貼り合わせているので上図のような構造をしています。その接着面は中から圧がかかるので一見すると拡大図の赤矢印のように圧がかかっていると思われがちですが、チューブ自体に丸みがあるのでオレンジ矢印のような力も発生します。ただ表面を接着しただけではオレンジ矢印の方向に負荷がかかると簡単に剥がれてしまいます。

サイドチューブ内張イメージ

そこで、これまた内側から接着面を覆って内張をしてやることにより直接接着面に横方向の負荷がかかるのを抑えて力を分散するようにしています。この内張も海外メーカーですし貼り方や接着剤の塗り方は当然雑です。さらにボートは丸めたり広げたりを繰り返すのでどうしても剥がれたり不具合が生じます。そして剥がれたところに何かの拍子で圧がかかり耐えられなくなってバーストします。修理するとなると剥離した部分全てにキッチリとした内張をしなければならないので実質不可能です。接着面に対する内張というのは裂傷などの修理で使うプラスチックテープで接着剤の侵入を抑えるだけのような簡易的ものではなく、しっかりとリペア用の生地を貼り付けて内側の接着面を塞ぐということです。

スターン部分貼り付けイメージ

コロラドのスターン部分で考えてみるとわかりやすいかもしれません。スターンには餃子の羽のような部分があるのですが、そこが生地を貼り合わせている部分です。あの部分は完全に2枚の生地を正面から貼り合わせているだけなので上図のように内張がないと一瞬で剥離します。内張により2枚の生地の接着部分に直接負荷がかからないようにし、圧力を分散させ、2枚の生地を直接的にも繋ぎ止めています。バーストした場合はこの内張を完璧に復活させなければいけません。

一応難易度設定はしていますがメーカーでも無理なものを我々素人が直せる訳がありません。

まとめ

ピンホールやバルブの不良などは道具があれば自分たちでなんとかなる場合がほとんどです。特にピンホールなどは悪化するとそこから裂けたりなどさらに大きな損傷につながるリスクもあります。早期に発見できた場合は放置せずどんどん直したほうがボートも長持ちします。

ボートを長持ちさせるコツはこまめな修理と直射日光に晒さず陰干しです。レース会場などでも理想は日陰で待機です。小さな積み重ねが長持ちのコツかもしれません。

おまけ:海外メーカーの適当さ

ショップ販売も業務にあったので様々な製品に触れたり検品することがありました。そこで見た海外メーカーの適当さについて少しだけ紹介します。

今回はボート修理の記事なので、ボートの接着剤について解説します。

接着剤の塗り方

日本人の感覚なら普通は図の上段のように、貼り合わせる部分にキッチリと塗って溢れた分を拭き取るといったかたちで塗ると思うのですが海外では違います。下段のように外から見えるツラの部分にざっくりと塗って溢れた分を適当に拭き取り終了です。そのため剥離した後などをみるとものすごい塗りムラがあり接着剤があたっていない面があるなんていうのも当たり前です。むしろ色々見てきましたがキッチリ塗られているものには出会ったことがありません。

壊れたものばかり見ていれば確認バイアスやらカラーバス効果だろと思われるかもしれませんがそうではありません。ボートのリペアや補修というのは壊れた箇所だけを治すものではなく、壊れた箇所のために壊れていない箇所を意図的に切ったりします。また、全く壊れていない物でも補強のためにあえてバラしたりということもあります。それでもやはり海外製品は当たり外れが大きいです。

ボートではありませんが、私のカーボン修理の先生がある時「日本のケブラー繊維はボートやパドルの修理では使わない。使うのは海外製の方が良い。」といっていました。理由を聞くと衝撃でした。『日本の製品はキッチリ作られていて繊維生地として扱うには良い。ただ、表面がキレイすぎて樹脂が表面張力で弾かれて馴染んでいきづらいから硬めるには使いづらい。その点海外のは毛羽立ちけばだちが多く繊維表面が荒いから樹脂がよく馴染む。』だそうです。いいんだか悪いんだか…という感じですが日本製は繊維一つとってもそれくらいキッチリと作られているのです。その感覚で海外製品を扱うとがっかりすることがあるのであまり期待しすぎないようにしましょう。

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