ラフティングの基本②【方向転換】静水編

ラフティングの基本①【目標物の設定】で解説した目標物に対する直進がある程度できるようになったら次は『方向転換』です。

レイクツーリングがメインの場合はそこまで重要な項目ではありませんが、川下りをするとなると重要どころかメインテーマの1つです。

基本①同様初めての方でも理解できるように解説していこうと思うのでここではまず「静水における方向転換」を解説していきます。

方向転換するためのパドリング

基本①で解説した、目標物に対してある程度真っ直ぐ進んでいけるようになったということは前漕ぎ(フォワードパドル)自体はそこそこ身についており短距離であればブレずに直進できるとみなします。

ここで解説するのは直進している状態から方向転換=ボートのアングルを変えるパドリングです。レースラフティングをやっている人は「きっかけ」と読んだりもしています。

スイープ

まずは動画で確認しましょう。

カナディアンカヌーということもあり、スイープの際にパドル側にボートが傾いていました(リーン)が、流水で漕ぐ際も静水で漕ぐ際もボートはフラットが基本です。次の機会に解説しますがリーンは意図的に使えなければ意味がなく、漕ぐたびにそちらに傾くというのは非常に危険です。

スイープというのは「掃くはく」という意味があり、水面を大きく掃くように漕ぐというところから来ています。ボートの回転軸を意識しながら大きく円を描くように漕ぐのがスイープです。

バウラダー

以前『基本的なパドリング①「スライス」と「バウラダー」の違い』という記事で解説したバウラダーも方向転換のきっかけになります。しかし、バウラダーはその特性上パドルを立てた状態から外に開く動きになるのでカヌー・カヤックやダッキーなどのようにバランスが取れないボートで初心者がやるとパドルを引っかけてしまい沈する原因になります(初心者が静水で沈する原因Top3には入ります)。

スターンラダー

ラフティングでは最も一般的(?)な直線を作り出す方法です。スターン(ボート後部)にパドルを入れて舵を取るようにパドルを操作します。

スターンラダーは一気に効かせようとするとブレーキになってしまうのでジワジワと効かせるのが基本です。そのためきっかけとして急な方向転換をしたいときには不向きといえます。

スイープを使った方向転換

ここまで解説してきたように、バウラダーは引っかけて沈する可能性があり、スターンラダーは直進している時はいいがきっかけには向かないということで最初はスイープを使った方向転換で練習するのがオススメです。

その場で回転

まずは静水でその場回転をしてみましょう。動画で見たカナディアンカヌーは長い上に後ろ寄りに1人だけだったのでスイープで回りながら進んでしまっていましたが、ラフトボートやリバーカヤックの場合はその場回転が基本です。レースなどになると進めながらやるスイープなどもありますが練習の際はしっかりと点で回転できるように意識しましょう。

ラフトボートの場合は左右がいるので片方はバックスイープになります。カヤックはできるようになったら右スイープ・左バックスイープのような左右交互にコンビネーションで回す練習をします。

何よりも重要なのは回転軸を意識することです。初めのうちはどうしても自分が漕ぐことに意識がいってしまいますが、ボートを回すというところに主眼を置いて練習してみてください。

スイープだけで直進する

その場で回転できるようになったら次はスイープだけで直進してみてください。右スイープ→左スイープ→右スイープ→・・・と繰り返しながら目標を決めて直進します。

目標物を中心に捉えてラインから外れないようにスイープのコンビネーションで直進していきます。左右の開き幅は90°もあれば十分ではないでしょうか。ここで意識する点はスイープしてから次のスイープまで待つことです。ちなみに1パドルで周りきらないから2回連続で右スイープとなってしまうと失敗です。右スイープ→(待つ)→左スイープ→(待つ)→右スイープ→・・・・と続けていければ成功です。

どうしてもレースとなると「漕がなければ!!」となってしまって回転しきる前に漕ぎ出したり、タイミングを取るための一拍(待ち)を省いて変なところにパドルを入れたりという人が増えます。

静水の練習でしっかりと「待つ(タイミングを図る)」癖をつけておかないと流水練習になったときに苦労します。

直進状態からの方向転換(スイープ)からの直進状態

ここまでの練習で「目標物への直進」と「スイープ」はできていることが前提です。ここからはこの2つを使って方向転換をする方法を解説します。

まず初めに覚えておいて欲しいのはスイープだけでは曲がらないということです。スイープはあくまでも回転させるためだけのきっかけでありそこからフォーワードをして方向が変わった先へ漕いでいかなければなりません。

初心者に限らずよくあるミスとして、スイープしてから回転するまでの時間とそこからフォワードで進み始めるまでの時間を計算に入れない人がかなりいます。

赤矢印が本来通りたかったラインです。赤矢印が途中でカクッと曲がっていますがこのようなここで曲がりたいというところを「ターンポイント」と言います。ありがちなミスとしてターンポイントできっかけを入れるというものがあります。直進している状態からスイープを入れても回転するまで時間がかかります。もちろん回転している間も直進してきたベクトル(直進慣性ともいう)が残るので進み続けます。さらにいい角度になったあとフォワードをはじめてもすぐには進まずベクトルが残る時間があります。これを計算に入れた上で早めにきっかけを入れる必要があります。

①:早めにスイープを入れて回転慣性を生み出す。

②:スイープの影響で回転しているが当初漕いで来た方向にベクトルはある。回転している間は待ち時間。フォワードの用意はしているが何もしない。

③フォワードをはじめたがまだ直進慣性が残り少し外側にスライドする。

④:当初×の方に向かっていたベクトルがフォワードによりフラッグの方に転換されている。

③の位置がターンポイントになりますが、ターンポイントでは既に次の目標を向いてフォワードしている必要があります。これはスラローム競技にも言えることでターンポイントとして設定した場所できっかけを入れているようでは遅いです。トップ選手になると①のスイープが恐ろしいほど効くため②の待ちがほとんどなく、③でフォワードを開始と同時にボートが進むので一見ターンポイントで全てやっているように見えますが、コンパクトにしているだけで基本は変わりません。

補足:回転している間もうまく力加減しながら漕ぎ続けることで大きな孤を描きながら曲げていくこともできますが、練習として行うのであれば最初のうちは明確にターンポイントを決めて曲がる練習をした方が個人的にはオススメです。ダッキーなど個人艇である程度慣れるとリーンのかけ方や体重移動で上手く曲げることはできますが、その癖がついてしまうと流水で練習する時や、大きくてリーンが効きづらいラフトボートに乗り換えた際にうまくいかなくなってしまいます。もちろんターンポイントを意識したターンができる上で孤を描くターンに手を出して両方できるようになるのであればいいと思います。

まとめ

今回は基本的なスイープターンについて解説しました。

ポイントは「スイープを入れてから待つ」「その待ち時間も考慮に入れてタイミングを取る」です。

後々流水に出たときにこの『待てる・待てない』と『タイミングをとれる』という項目は非常に重要になります。カヤックのレッスンだとこれができないがためにせっかく川に出られるようになったのにこの練習をするためだけに再び湖送りなんて人もいます。それくらい後にひびきます。

静水で練習する機会があればぜひ左右のスイープだけで進む練習やスイープから向きが変わるまで待つ練習をしてみてください。

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