以前の記事でラフティングの基本④【流水練習の導入】ということで流水練習を始めて1番最初にやる練習を紹介しました。
今回は④からの続きで流水に出てから練習する内容や意識するポイントについて解説していきます。
反復練習
基本的には導入で紹介したストリームインや12時キープをウォーミングアップとボートになれるという意味で最初にやってもらいます。最初のうちはこれに簡単なフェリーグライドなどが入ってくる程度です。反復して練習することによりボートと川の流れそのものに慣れてもらいます。
いくらやる気があってイケイケな人でも最初のうちは流水のパワーや岩などに恐怖心を覚えたり、ひっくり返りそうになる挙動に腰が引けたりしてしまいます。繰り返し練習し成功したり失敗するうちに乗っているボートの限界値(ひっくり返るタイミングなど)を体で覚えられます。
この段階では相手のレベルや求めているものによって難易度を変えます。まだ腰が引けている人にひっくり返るようなことをさせて恐怖心だけ残してもいけませんし、泳いでもいいから挑戦したい人に基礎練習ばかりさせても成長しません。そこは顔色を見ながら調整します。次のステップのお題を簡単にしてやってもらったり、あえてひっくり返るようなことをさせてセルフレスキューの練習をさせて次のレベルへの足掛かりにしたりと様々やります。
ただ、何よりもストリームインや12時キープといったシンプルだけど突き詰めていくと難しいお題を繰り返しやってもらうことにより川の感覚とボートの感覚を養ってもらいます。
踏切のタイミングによる調整
流水練習で多くの生徒さんが1番時間を使うのが「踏切のタイミング」です。
エディーの中から10時の角度もしくは2時の角度で飛び出す際、基本的にはエディーラインを踏切のポイントとします。そこでアングルとベクトルを指示通りに合わせてタイミングを取った上で踏切の強さを調整しストリームインかフェリーグライドかで使い分けるという練習があります。そこから発展して踏切なしのスイープ→キャッチのコンビネーションで手前の流れに入るストリームインというものもあります。また、同じストリームインでも本流に乗るものと本流を超えて奥の流れに乗るものと使い分けができるようにします。
①フェリーグライド
踏切の際に10時アングル10時ベクトルで進んでいき、しっかりと流れに抵抗できるように踏み切る。下流リーンを固めながら本流の力ももらって渡り切る。
②ストリームイン(本流へのストリームイン)
しっかりフェリーグライドのようにしっかりと踏み切るがそのままパドルは抜かず本流に向けてキャッチ。ボートが回転し切るまでパドルは抜かず下流リーンを固めておく。6時に向いた時の立ち上がりの一打を漕いで完了。
③奥の流れに乗るストリームイン
本流へのストリームインのような入りだが踏切りの後でタイミングを取るためにスライス状態で待つ時間が生まれる。キャッチからの立ち上がりは一緒だが待てないと本流の力に負けて奥までいけないことがある。フェリーグライド状態から無理やり回すという方法もあるがボートのベクトルが一気に変わるのでスタンが喰われやすくなる。
④手前に入るストリームイン
踏切はせずスイープ→キャッチを素早く行うことによりボートを回転させる。事前にある程度スピードをつけないとエディーラインにはじかれてしまうので、スペースのない場所でもベクトルとアングルをキープしたままフォワードストロークができるスキルが必要になる。タイミングの取り方や切り返しまで考慮するとかなり難しい。
1日ひとつ身につけられたとしても最低4日かかります。もちろんそんなに簡単ではないのでもっとかかります。特に③
奥に入るストリームインはフェリーグライドと本流へのストリームインの間にあり、広い川幅を踏切のパワーの調整だけでいかなければいかないとなるとなかなか高難度になります。
この4つを自在にコントロールできるようになる必要があります。フェリーグライドならまだしもストリームインの位置まで気にして練習するという人は少ないのではないでしょうか?
流れに合わせる練習
流水に出て練習を積んでいくと徐々に川を降りたい欲が出てきます。御岳の場合はちょうどよくクランクの瀬があるので漕げるようになってきた人はそこで一度「禊」を受けます笑。
流れに合わせて漕ぐ練習です。誰もが一度は聞いたことがあるであろう「ウェーブの山を漕いでいく」というやつです。大体できません…。最終的にどこに着地したいのかを見極めながらそのラインを頭の中で描いていき逆算してそのライン上にあるウェーブを無理のない範囲で一定のペースで潰していくのですがいかんせんやることが多すぎてパニックです。カヤックで最初のうちはクランク核心部のバックウォッシュが怖くて体が引けてしまいひっくり返る人がほとんどです。漕ぐことに夢中になってラインを外して核心部へ入る人、核心部を避けようとしすぎて手前の隠れ岩が見えない人、超えたはいいけどそこで安心して左岸によって乗り上げる人など様々です。
ウェーブに合わせるのも反復練習が必要でやっているうちに慣れてきてバランスも取れるようになります。最初から完璧なライン・フォームで漕げる人はいません。
流水練習で意識して欲しいこと
この記事を読んでくださってる方の多くはレースラフティングをやっている方だと思います。ラフティングはどうしてもボートが大きい分転覆しにくいです。そうすると「ボートを動かして危険箇所を避けよう!」という意識よりも「危ない場所があるから漕げ!」という人間の動きに主眼を置きがちです。
流れに合わせる練習でひっくり返る人も同じで「怖い場所があるから頑張って漕がないと!」や「ひっくり返らないためには漕いでスピードを…」といった具合にボートを使って避けるというよりも自分が漕いでなんとかする方に主眼を置きがちです。ほとんど漕げない人でも事前にラインや角度を調整し安全にいけるようにすることは可能です。
「自分で漕いでなんとかする」というよりも「どうすれば(どこを通ったり何をすれば)ボートが安定するのか」といったボートの動きにフォーカスできる人の方が成長が早いように感じます。
まとめ
流水練習の基本はストリームインやフェリーグライドに見るタイミングやパワーの調整です。この練習に簡単な漕ぎ上りなどを加えて短いコースを作って練習したりします。
力加減だけでフェリーやストリームインなどを調整するという練習はあまりラフティング界隈では取り入れられていないかと思います。スラロームではよくある練習で、踏切まで漕いでどこで流れに負けるのかを試したり、幅のある川で踏切の一打で対岸まで渡れるのかチャレンジをしたりと割とメジャーな感覚トレーニングです。時間のある時に是非試してみてください。
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