練習方法紹介【Jライン】

前回記事でJラインがアップゲートやエディーに入る際の基本的なライン作りの概念になるということを書きました。

過去記事リンクはこちらの画像から

今回はそんなJラインの練習をするにあたり意識していくポイントを解説していきます。

Jラインのおさらい

Jラインとは前回記事でも解説した通りアップゲートやエディーに入る際のライン作りの基礎概念になります。

Jラインの基礎概念

ポイントをおさらいすると

  • きっかけから角度がつくまで待ち時間が発生する
  • 8時から9時の角度で理想は3パドル
  • エディーラインの踏み切り時には9時以上が理想
  • ゲートを直接狙わない

といったポイントがありました。

Jラインの練習 (流水)

ここからはそんなJラインの作り方を踏まえた練習を紹介していきます。ゲートは有ればより良いですが無くても問題ありません。

練習のコンセプト

今回紹介する練習のコンセプトとしてはあくまでも「ライン作り」や「アングルの意識共有」など感覚的なところが大部分を占めるので普段紹介しているようなインターバルで追い込んでいくというものではありません。もちろんこのようなコースにアレンジを加えてインターバルコースとして組んで追い込みたいのならそれはそれでありですが、ここではあくまでも感覚的な練習として紹介していきます。

また、あくまでも紹介しているのは練習方法の一例なので独自にアレンジしてオリジナルの練習メニューを組んでいく必要があります。この練習だけしていればJラインが本番でも作れるようになるというものではないので注意してください。

コースデザイン

今回紹介するコースは比較的どこの川でも真似しやすいデザインとなっているものです。

御岳渓谷では杣の小橋・カップスター・コンセプト前・旧小橋下など真似できる場所はたくさんあります。流される心配があるのなら杣の小橋がリカバリーもしやすくオススメです。

今回はよくこの練習のスポットとして使っていた御岳のカップスターを例に紹介します。

カップスターイメージ図

かなりアバウトな図ですが大体こん感じです。

地元の川や別のスポットで練習する場合は本流を挟んでエディーの位置が上流・下流で10mくらいの間隔が有れば大丈夫です。あまりエディーどうしが近いと練習になりません。また、川幅も10mほど必要です。

川幅10mイメージ①

上の写真は今回例に挙げているカップスターです。グモテックスコロラド450の長さが4.5mなのでカップスターであれば大体12m前後(3艇分あるかないか)の川幅でしょう。

川幅イメージ②

次の写真は岩木川のカヌーコースになります。ゲートはカヌーのものなので幅はラフトの半分くらいしかありません。このコースでも練習できますが、ラフトでJラインの練習をするのは少々狭いです。さらにカヌー用に作ってあるので流れが入り組んでいて慣れていないと漕ぎ上がりやエディーを形成している岩を避けるのに苦労します。

もちろん多少条件が違っても練習の意識付けができていれば可能な練習なのでフィールド選びにそこまで神経質になる必要はありません。

ポイント①:手前の流れにストリームイン

コースのデザイン(概要)は前項で書いたのでいよいよ攻略とポイント解説です。

コース攻略イメージ図

コース攻略としては非常にシンプルで本流よりも手前の流れにストリームインをして、一度6時を向けてそこからきっかけを入れて対岸のエディーに向かうというものです。これが前半です。後半はポイント④以降で解説します。

順番に解説していきます。

まずポイント① 『手前の流れにストリームイン』です。

蛇行している川ではメインストリームがどちらかの岸によっている場合も多いですが、真っ直ぐが続いている場所はだいたい中央付近がメインストリームです。そのメインストリームよりもまずは手前にストリームインします。本番ではケースバイケースでメインストリームに乗っても良いのですが、この練習ではあえて手前にストリームインします。その理由としては…

  • 対岸に向かって漕ぐスペースが残る
  • キッカケから回転して流される時間に勢いよく流されすぎない
  • 角度がついてからしっかり漕げないとメインストリームで一気に落とされるので漕力がわかる

となります。

また、ストリームインしてからは一度必ず6時方向にボートを向けるという条件もつきます。ストリームイン→そのまま8時で待つというものではなく必ず下流を向いてきっかけを入れてから8時にします。

上のリストでピンとこないのは3つ目の「角度がついてからしっかり漕げないとメインストリームで一気に落とされるので漕力がわかる」かと思うので少しだけ解説します。そもそも手前の流れにストリームインするということはメインストリームには乗れていません。ということはメインストリームよりもボートは遅い状態です。そこから角度をつけてメインストリームを横切る際にはスピードをつけないと流れに翻弄されてしまいます。ボートは流れよりも早く動けている場合は安定し、遅い場合には流れの影響を受けて不安定になり翻弄されます。

こちらの図のように手前に入ることにより自らメインストリーム(一番流れが強い場所)を横切らなければなりません。ここでそのチームの最低限の漕力が一度試されるわけです。

このようなポイントをおさえるために本流よりも少し手前の流れにストリームインをします。

ポイント②:角度がついてからフォワード開始!

前回の「Jライン」の記事でも触れましたがキッカケを入れてからすぐに漕ぎ出さず、8時から9時に向き直るまで待ちの時間が発生します。

この練習のメインといってもいいようなポイントです。

待ち時間

この練習は「角度の意識」や「漕ぎ出しのタイミング取り」「ボートの挙動コントロール」などに主眼を置いた練習です。待ち時間をしっかりと設けることにより角度がついてから漕ぎ出すという意識を養うために行います。どうしてもレースの場面になるとずっと漕いでいなければならないと思って必死に漕ぐチームが多いですが、スラロームのトップ選手でも難しいゲートセットの手前では回転数を落としたりしてタイミングや意識を合わせにいきます。

待ちの時間というとパドルを水から抜いて何もせずに待つと考える人もいるかもしれませんがそうではなく、スライスで待ったりフォワードのポーズでタイミングを取って次の動きにすぐに繋げられる準備時間と捉えてもらった方が良いでしょう。

待ち時間なし

待てずに7時で漕ぎ出してしまうとそのまま本流に乗るので下流に向かう力が一気についてしまい9時方向の力が得られずどんどん落とされてしまいます。(※一つ前の手前にストリームインはこういった失敗を誘発しやすくなるので練習においては良い条件付けとなります。)

ポイント③:エディーに入る時は9時以上!理想は10時!!

7時でエディーに侵入すると下流向きの力が強すぎて場合によってはエディーラインをブレイクできずエディーライン上を落とされます。8時でしっかり漕げていればエディーラインをブレイクできないということはなくても下流へのベクトルが強すぎてエディーの反転する力をうまくもらえずに奥まで突っ込んでしまいがちになります。

8時で進入

上の図のように9時以下で進入するとエディーで回される力に対して進む力が強くなるのでスライドしてエディーの奥まで入ってしまいます。

エディーの中というのは通常反転流になっており下流から上流に流れています。今現在自分が乗っている流れとは反対方向の流れに乗るということになります。これはストリームインと同じ原理になるのです。

反転流

エディーインとはエディーの中の反転流に「イン」するという意味になります。逆の流れにスピードをつけて入るということはストリームインやフェリーグライドの原理がそのまま適応されるということになります。

反転した時間の概念図

上の概念図を見てもらうとわかると思いますが、通常時ストリームインの際に7時(仮想的には1時)でストリームインはしません。この角度ではそのまま12時キープになります。手前に入りたいストリームインの際8時(仮想的には2時)で入ることもほとんどありません。8時はそのまま少し出て大きく出るストリームインの角度です。

エディーという狭い空間で奥まで飛び出してはいけない時は水平(3時or9時)以下で踏切のタイミングだけ合わせてエディーラインをブレイクしながらキャッチ等で回します。

ここでさらに踏み込むと、エディーからメインストリーム側にストリームインする際はスピードをまともにつけられない状態からより強力な流れにインするのでリーンをして面を合わせた状態でさらに横向きにしても9時(or3時)がマックスでそれよりも下流に向けて合流するようなストリームインはできません。しかし、本流側からエディーに入る際にはより遅い流れに入ることになるので多少であれば下流向き(エディーの中なので本来は上流向き)のインが可能になります。

練習の際ゲートを張ってあると何時で進入しているかの参考にもなります。必ずしも水平にゲートを張れる場所ばかりではないと思いますが2本ゲートでアップを張るとほぼほぼ川に対して垂直なゲートが張れるので参考にしてみてください。自分で思っているよりも9時や3時という角度は岸に向かっている角度になります。

画像を反転させたりしてかなり時計の概念がゴチャゴチャになる解説でしたが、エディーも一つのストリームインと捉えて攻略するという話でした。

ポイント④:そのまま止まらずフェリーグライド

ここから後半戦の解説に入ります。この先はJラインの練習から少し主旨がずれます。ただ、感覚的な練習としても有効な練習となるので考え方だけでも参考にしてみてください。

後半概念図

後半はそのままフェリーグライドしてもといた岸に戻り、一番手前の流れを12時で漕ぎ登るというものです。非常にシンプルに見えますがポイントがいくつかあります。

まず一つ目のポイントは「止まらずフェリーグライド」です。

以前にもどこかの記事で書いた気がしますが、エディーに入ったり失敗したりすると途中で辞めてしまう人が非常に多いです。練習となるとさらに多くなりラフティングの場合はその場で反省会が始まることがあります。失敗しようが成功しようがレースの場合フィニッシュラインを切るまで計測は続きます。失敗したらそれはそれでリカバリーの練習になるので続けていくことが重要です。さらに複数艇で練習している場合はみんなが使いたいエディーに留まって反省会(雑談)を始められると正直邪魔です。

失敗しても続けていく+スタートに戻ってもう一本やるためにも止まらず戻ります。

ポイント⑤:フェリーグライドは直線で

当初からのコース設定としてそこまで本流が強いところでは練習していません。実際カップスターも気合があれば本流を漕ぎ登れるくらいの流れです。そのためフェリーグライドで戻る際にはしっかりと直線的に戻る練習をします。

帰りのフェリーグライド

よくあるミスとしてはメインストリームを気にするあまり勢いよく漕ぎ登ってしまったり、Jラインでミスをしたのを引きずって角度が甘く流されてしまったりといったものです。この練習もゲート用に紐を張っているのであればその紐に沿ってフェリーグライドでも全然OKです。とにかくまっすぐ上にも下にも振られずいく練習となります。

ポイント⑥:12時に向けるのはスイープ1漕ぎ

フェリーグライドしていってスタートの岸まで戻ったら12時に向けて漕ぎ登るわけですがこの時の角度づけは前のスイープ1漕ぎで行ければ理想です。そもそも上流向きに進んでいるのでバックスイープやラダーで漕がない時間を作ってしまうと流される可能性があります。よりスムーズにテンポをくずさずにいくためにはスイープが良いでしょう。その際スイープしない側のバウは普通に漕ぐのではなくスライスでタイミングを取ってあげたりするとよりスムーズに回ります。

フェリーグライドしてここで回そうというターンポイントが明確であればその手前で上流向きの慣性が働くように調整する必要もあります。

バウの慣性

アングル(向き)は1時から2時をキープでベクトル(進行方向)は3時キープとなりますが、右バウのスイープ直前には回転慣性だけ微妙に12時方向に入っている必要があります。この時に下流側(3時方向)に慣性がついていると右バウのスイープが怪力スイープでなくては回らなくなってしまうので注意が必要です。

まとめ

Jラインの練習方法はいろいろありますが、今回の記事で紹介している方法が基本になります。

あとは各チームで自分たちの練習環境や制約に合わせてアレンジしていったり、長めのコースで組めるのであればインターバルにしたりと応用していってください。

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