【ガチレビュー】Tributary Strike

よく「このボートってどうなんですか?」「このパドルって私に合っていますか?」という質問を受けます。川用の道具は物にもよりますがかなり高価なものが多いです。何万円も出して自分に合わないものを買ってしまうとショックも大きいです。

そこで不定期ですが私が使ったことのある道具についてガイドやレーサーとしての視点からレビューを掲載していこうと思います。これから購入しようか迷っている方やこんな道具が欲しいんだけどどんなものがいいのかと迷っている方の参考になればと思います。

これはいくら売れたところで筆者個人には1円もマージンが入らないのでお世辞抜きのガチレビューです!(笑) 時にはかなり辛辣なことを書くかもしれませんので既にその道具を使っているという方は自己責任で読んでください。

※あくまでレビューなので「感想」です。参考までに。※

Tributary Strike

今回取り上げるのはNRSが取り扱うAIREのTributary Strike(以下ストライク)です。

こちらはソロ(一人乗り)用ダッキーです。学生さんなどのサークルでは使用人数や大会レギュレーションの関係からタンデム(二人乗り)が選択されることが多いですが、社会人が個人で持つならタンデムよりも取り回しの良いソロがおすすめです。

カタログスペックはNRSのHPに記載があるので気になる方はチェックしてみてください。

普段私はツアーのサポート艇としてこちらのボートをダブルブレードパドルで使用しています。降りながら色々なアクションを取ってみた★5段階総合評価になります。

  • 機動性     ★★★★☆
  • 直進能力    ★★☆☆☆
  • 積載能力    ★★☆☆☆
  • 安定性     ★★☆☆☆
  • 排水速度    ★★★☆☆
  • 練習オススメ  ★★★☆☆
  • 総合      ★★☆☆☆  2.6

少々手厳しい評価かと思いますが、正直にいうと個人での遊び用ソロ艇で購入するのはあまりオススメしません。

ここからは細かくポイントごとにレビューしていきます。

①あまりボートが走らない

細かい動きをする機動性はもちろんソロ艇でショートなので非常に高いです。その反面短く楕円形な為回転性がかなり高くダブルブレードで漕いでいてもかなりブレます。シングルブレードだと毎回Jストロークと言ってもいいくらいブレます。そのくせ全体が平べったく抵抗が大きいのでなかなか足が遅いです。

また、平べったいのも相まってボートの先端がそこまで反り返っておらずバックウォッシュをまともにもらうとかなり水を浴びますし減速します。

確かに軽量コンパクトな為瀬遊びにはちょうどいいですが、DRやツーリングにはあまり向かないかなという評価です。

②積載能力がほぼない

ボートがコンパクトなため積載能力もほぼありません。画像のオレンジのものは私が普段使っているペリカンケースとファーストエイドですがファーストエイドの防水ケースはこれで5Lのものです。ペリカンも1120と携帯と日焼け止め小銭入れなどを入れるといっぱいになるようなサイズ感です。それを積んだだけでメインの積載箇所であるシート後ろがほぼ埋まります。仕事柄万が一の際は人をレスキューするのでバウ側には積載できないためこれが限界です。

一応シートの背もたれにメッシュポケットはありますがペリカンケースがギリギリ入らないくらい小さいです。

ソロでツーリングする際の帰り用のボートケースやザックなどを積んで車なしで身一つで川下りというのも叶わないくらい積載能力は低いです。

③排水能力は高い

ボート前方部分

優れている点としてはAIREが作るインナーチューブとアウターチューブの2層構造ボートなため全体的にボディー剛性が高くウェーブにあたっても当たり負けする感じはありません。これに伴い空気圧も上げられるため浮力があり思いのほか排水速度が速いです。セルフベイラーはボートのバウとスターンの左右に計4箇所メッシュ状のものがありますがマーシャスのように蓋がついているわけではないので見かけによらず水が抜けます。平べったく御岳のウェーブでも水をかぶることを考えるとこれくらいの排水能力はあって当然かなという気もしますが、水が抜けずお風呂ボートになることはないかなといった印象です。

④安定感が低い

ソロ艇の宿命なのですがどうしてもボートサイズが小さくなってしまい水量やパワーのある川ではやられてしまいます。「腕があれば楽しめる!」という方もいますが、こちらのボートの場合足の固定がストラップのみでプレイボートやスラ艇などのクローズドデッキなボートと違いフィット感が非常に低いです。また、ボリュームと浮力を出すためにサイドチューブがかなり広めに作られておりリーンをかけようとすると下半身の動きだけでは対応しきれず上半身まで使って身体を多少乗り出すように動かなければならずバランスを崩しやすくなっています。

さらに調整出来るとはいえ普通にセットするとシート位置が後傾ポジションになるためスターン側からバランスを崩しやすく、いきなりの初心者が乗れるボートではありません。

⑤サポートや練習には使える

安定感の低さ、積載能力の低さからあまりツーリング用のボートとしてはオススメできません。

用途としてはカヤック練習中だけどロールが不安定で怖いという方の川下り練習艇だったり、渇水の川でボートを壊したくないという方のサブ艇としてはいいかもしれません。また、ラフティングでもカヌーでもツアーのサポートとして初心者がいるから安全のためにもついてきて欲しいというときにもいいかもしれません。

個人的総合評価

今回はAIREストライクソロを紹介してきました。

正直個人で所有するボートではないかなというのがこのボートの印象です。チームの練習用に購入したりコマーシャル会社がサポート用で購入したりという印象です。また、オープンデッキで浮力もあるので体重がありすぎてカヤックに乗れない方や湖で体験ツアーをする際の大柄な方向け最大積載の1艇としての需要はあるでしょう。

個人でも団体でもやはりダッキーはタンデム(二人乗り)の方が安定感・積載能力ともにオススメと言えます。

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