パドルの長さ調整

今回はパドルの長さ調整に関する記事です。

実際問題パドルのちょうどいい長さなんていうものはなく個人の主観によるものなので参考程度に読んで見てください。

「パドル欲しいけど何cmがいいんだろう・・・?」「今使ってるパドル長さ合ってない気がするんだよな・・・」と迷っている方の参考になれば幸いです。

以前にもパドルに関する記事は何回か挙げています。パドル選び「どんなパドル買えばいいんですか?」

やはり現役生からも圧倒的に相談を受けるのがパドルです。(そんなことよりカーライルでもいいから練習しとけや!!と心の中で思っていたりいなかったりしますが・・・笑)

パドルを構成する要素

どこかで解説しているかもしれませんがパドルを構成する大きな要素は

  • ブレードサイズ(面積&長さ)
  • シャフト長(長さ)
  • シャフト径(太さ)
  • グリップ径(太さ)
  • オーバル(シャフト太さの変わり具合)
  • カーボンのテーパー質感

馴染みがないところでいえばオーバルとテーパーでしょう。

簡単に解説すると「オーバル」とはグリップ側とブレード側のシャフトの太さの差です。通常C-1パドルはTグリップ側が細くてシャフト側が太くなっています。その比率が握りやすいかどうかの感覚の違いに現れます。「テーパーの質感」とは表面の質感です。

この3本も表面の質感をよく見て貰えば違うのがなんとなくわかるかと思います。1番左のダブルダッチはツルツルですが真ん中のjantex(ヤンテック)はルーラなどに使われるシャフトのような横線が入ったザラザラ感があります。1番右のBraca(ブラーチャ)はjantexのザラザラを少しなめらかにしたような感じです。好き嫌いはあるかと思いますが使っていれば慣れます。正直レースが始まればどうでも良くなるレベルです。

長さの違い

最初にお見せした画像は全て私が実際に使っているパドルです。

1番左はガイド用に組んだ一本でほぼほぼパドル購入時から切らずに組んで159cmから160cm目安で組んだものです。

中央のパドルはしっかりと立てると150cm(厳密には149.7cm)でダッキーもC-1(カヌー)も一本でいけるようにと組んだパドルです。これでラフトに乗ると漕げないこともないですが個人的には少し詰まる感じがあります。

1番右は158.5cmで私がレースラフティングをやるならこれがベストと長年かけてたどり着いた長さで組んだパドルです。

(※画像ではパドルを立てかける都合上ズレが出ています)

正直パドルは5mm変われば別物になります。しかし、極端に長い・短いではなく多少の差であればパドルで合わせるのではなく身体(漕ぎ方など)が合わせた方がいいでしょう。

ここでは私がどういう意味を持ってこの長さでパドルを組んだのかを紹介しながら、長さに関する考え方について簡単に紹介していきます。これは個人の好みもあるので中には真逆の方もいるでしょう。あくまで参考までに紹介します。

ガイド用パドル159cm(ダブルダッチ スピナー グラスファイバー)

本職がリバーガイドなので「仕事道具」と言えるパドルです。

まず、私のスペックとしては身長180cm体重95kgのムッチリ(デブ…笑)体型です。

ガイド用は以前までカーライルやアルフェックを使っていたのですが、アルミの芯材だと金属疲労と腕力で折れてしまうのでカーボンパドルにしました。

肝心の長さですが、ガイドは基本的にボートの最後端(スターン側)に座ります。

こんな感じです。

グモテックスコロラドだとそんなことはないのですが、ツアー用のボートは前後に反り上がっているのでガイドポジションでは水面までかなり距離があります。画像ではカーライルを使用しており短さを補うためにかなり狭くパドルを持っていますが、それでは本来の持ち幅ではないのでかなり負担がかかります。そこでカーライルよりも長い方がいいと思い159cmでパドルを組んでいます。

ダッキー&カヌー 149cm(ヤンテック シグマ M +)

ラフティングに比べ水面が近くなるダッキーやさらに低いC-1ではパドルが短くなるのは当然です。社会人となりR4チームが組めない状況が続きダッキーメインとなったので組んだ一本です。

ダッキー・C-1は同じ長さでいける人も多いのですが、大体C-1(カヌースラローム)パドルというと男子で145cm前後で女子で140cm前後が相場ではないでしょうか。

ダッキーも艇のサイズによるのですが、トムキャットタンデムのような大きめの船(厚みがある)を使うと当然長さも必要になります。逆にパックラフトというかソロの小さめの船を使うと短くても大丈夫です。先述したようにある程度の長さの差であれば漕ぎ方で調整できるので私は少し長めの149cmで組んでいます。

もちろんこの長さでもレースラフティングの大会にコロラドで出られますが少々短いので背中を丸めて重心を落とす必要があり、艇速が上がってスピードが伸びてくると常に前傾では漕ぎづらくDRには不向きでした。

レースラフティング 158.5cm(Braca(ブラーチャ) Rocky2 mini )

JantexのSIGMAでは少し短かったため、レース用に一本組みたいと思い作ったパドルです。

過去に持っていたパドルの長さから160cmではDRなど艇速が速い競技では有効なもののどうしてもSLのようなストップ&ゴーを繰り返すような種目では立ち上げ時に重くなり過ぎてしまうため不向きだと感じていました。しかし、よくレースラフティングで使用される(?)155cmでは短すぎるため間の158cm前後に落ち着きました。

ただ、これはあくまでもみなかみ(利根川)や長良などある程度大きくて水量があるような川を想定しています。御岳(多摩川)も少し増水してくれれば大丈夫なのですが、通常水位では浅くてパドルが川底にヒットしてしまう箇所もあります。

長さの決め方

ここまでは現在私が持っているパドル3本を例に、簡単に長さの考え方について紹介しました。もちろん個人の好みや筋力的・体型的な問題もあるのであくまでも参考程度に考えてみてください。

ここからは一般的に長いとどうなるか、短いとどうなるかについて解説していきます。あくまでもダッキーを含むレースラフティングをメインに解説します。

①長めに組むメリット

パドルを長くするメリットで「より前から漕げる」という方がたまにいるのですが、パドルを長くして前方から漕いだとしても入水からキャッチまでの距離が伸びるだけでしっかりと掴んで(キャッチして)ストロークする位置は変わらないので意味がありません。パドルを長く組む最大のメリットは何よりも「姿勢が取りやすい」ということです。JantexSIGMAの項目でも少し触れましたが、座る位置が高いラフトボートにおいてパドルが短いとブレード全体を水中に入れるためにどうしても前屈まえかがみになります。そうなってしまうと必然的に骨盤が寝てしまい力が出しづらくなります。そうならないために少し長めにしておくのがラフティングでは有効に働きます。

また、万が一長すぎるなと感じた際もカットダウン(パドルを切って短くする)するのは比較的容易にできます。短いと感じて延長しようと思うと無い部分にシャフトを作ることになるので工程も複雑で難しくなります。

②長めに組むデメリット

ブラーチャパドルの紹介でも書いたようにパドルが長いと水中に入る距離も伸びるため浅い河川では川底にパドルがヒットします。

物理的なパドルの消耗もさることながら長いパドルはテコの原理で引けている気になりがちですが体力消耗時には本当に引けなくなります。

DRのようなハイスピードをキープするような種目では長さは有効なのですがSLのようなストップ&ゴーを繰り返すような種目には本当に不向きです。

技術的にも長いパドルは不利な面があります。メリットの部分でも少し書きましたが、長いということはそれだけ入水が早くなります。それと同時にフィニッシュに向けての距離も伸びます。フィニッシュが長いということは『ストローク(出力)→フィニッシュ(出力無)』の繋ぎも当然長くなり水を引っかけて減速しやすいナーバスな状態が生まれやすくなります。自分で加速させた力をわざわざ減衰させてフィニッシュするというなんとも悲しい状態で終わってしまうのです。

もちろん姿勢的に漕ぎづらいのもよく無いですが長過ぎてフィニッシュで水を引っ掛けてしまうのも考えものです。

③短く組むメリット

どうしてもこういったメリットデメリットの記事になると相反したことを書くしかなくなるのですが解説していきます。

短く組む最大のメリットは「取り回しが良くなる」ことです。

長いと引っかかっていたフィニッシュや入水で引っかかりづらくなります。また短いパドルはテコが働かなくなるので比較的容易に引くことができます。

さらにラフトボートというのはパドルスポーツの中でもかなり大きな船なので重心位置が高いです。それに合わせたパドルというのは他の艇種に乗り換えると確実に長いです。少し短いことによってダッキーなど別の船でも流用できます。

北上川ゴムボート祭りや御岳カップのD2部門でレースラフティングの学生さんなどがよく自分のカーボンパドルで出場していますがはたから見ていると「パドルなっっが!笑 カーライルとかの方がマシなんじゃないか??」と内心思っています。

未組み立てのカーボンパドル(ホワイトウォーター用)を購入してカットせずに組み立てると大体160cm前後です。 160cmというのはホワイトウォーターにおいて最大全長で通常はこれよりも短いということです。

④短く組むデメリット

先ほどから何度かでてきていますが大幅に短いとレースラフティングでは使いづらいです。カヌーカナディアンシングルのパドルは人によっては140cmという人もいます。さすがにこの長さでラフティングはかなりきついはずです。普通に座るとそもそも水に届かないということもあります。

さらに短く組むデメリットとしては延長しづらいというのも挙げられます。158cmのラフティング用パドルをカットダウンして145cmにするのはただ切って繋げばいいだけなので簡単ですが、逆の場合は無いところにシャフトを作らなければならないので工程的に難しくなります。

通常買ったばかりのパドルを自分で組む時も長めで切っておいて仮止めして徐々に短くします。切ってしまうとなかなか継ぎ足すのが難しくなってしまうので長いパドルの方がある意味では汎用性があると言えます。

おすすめのパドルの長さ

当然ですが人によってパドルの長さは違います。また、同じ選手でも使用するボートによって長さが変わります。ちょうどいい長さというのは自分で探していくしかありません。

アドバイスをするのであればこの競技をメインでやるというのがあればそれに合わせた長さで『少し短めに組んだ方がいい』というのを私はよく伝えます。個人的な見解ですが選手が「自分にちょうどいい」と思った長さは「本当にちょうどいい長さ」よりも少し長めに出る傾向があります。ブレードサイズとの兼ね合いもあるので一概には言えないのですが、人が『今パドルを引けている!』と感じるタイミングは抵抗が大きい時です。ぶっちゃけ長くすればテコがかかるので抵抗は大きくなります。抵抗が強過ぎて実際に船は走らずにパドルが滑っていても本人は『引けている』と錯覚することはよくあります。特にレースラフティングのような重いボートでは立ち上がり時にかかる負荷は絶大です。アップゲートの下でパドルを抜き差ししているだけの選手が多いのはこのためです。

長めに組むデメリットの項で解説したように長いとそれだけフィニッシュもナーバスになります。フィニッシュで引っ掛けるということはそこで一瞬ブレーキをかけるということです。カヌーのような個人競技ではそのツケは自分で払うのでいいのですが、ラフティングの場合は右が普通に漕げて左が漕げていない場合どんどん曲がっていってしまいラダーを入れる要因や反対側の選手が出力を弱める原因になったりもします。

本当におおよその長さとしてはレースラフティングの男性であれば145cmから160cm前後で、女性であれば140cmから150cm前後くらいが目安です。

まとめ

今回はあくまでも「参考」として私が普段人に伝える時の長さや考え方を示しました。パドルの長さは本当に千差万別です。選手の成熟過程やプレイスタイルによっても厳密には変わります。本当にちょうどいい長さは都度自分で探していくしかありません。

補足:パドルに関するあれこれ

現在はストレートシャフトのパドルが主流でベントシャフトなどはほとんど見ません。若い選手なんかはそもそもベントシャフトというものを知らない人もいるのではないでしょうか。それと同様に「カマボコ」をつけたパドルもかなり少なくなりました。こういったパドルの構成要素について簡単に解説しておきます。

①オーバル

この記事の最初の方でも解説しましたが、シャフトの直径がグリップ側とブレード側で変わるものです。LULAやgalaなどほとんどのパドルはこういった形式です。ダブルダッチなんかはオーバルなしで全部同じ太さです。パドルを自分で組んだことがある方はわかるかもしれませんがTグリップ側にブレードを差し込もうとしてもまず入りませんし、ブレード側をTグリップに入れようとするとTグリップを破壊する必要があるレベルで太さが違います。

②カマボコ

カマボコというのは俗称で商品名は「パドルグリップ」と呼ばれています。

このような半円形のようなもので形が食べ物のかまぼこに似ているのでそう呼ばれています。

このようにシャフトに取り付けてヒートシュリンクチューブ(熱収縮チューブ)やビニールテープなどで固定して使用します。パドルが楕円になり人によっては握りやすくなります。ダブルブレードパドルの右手につけることが多いですがシングルブレードでも取り付けは可能です。

ラフティングではありませんがカヌーポロでは積極的に使用されているそうです。ポロは競技特性上ボールを取るためにパドルを離してひっくり返ることもあるそうで、その時浮いているパドルに手を伸ばした際右か左か瞬時にわかるようにするために取り付けるそうです。

③アジャスタ

パドルの長さを調整できるアジャスタ付きパドルもあります。

画像はダブルブレードのものですがシングルブレードのものももちろんあります。

長さ調整ができて非常に便利なのですが欠点もあります。金属なのでアジャスタの分重くなるのはもちろんですし強度的にも劣ります。また、工業製品なので当たり外れがありネジが緩みやすいものも稀にですがあります。

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