ダウンリバー発艇ルール:やっぱ1艇がいいよ!!

先日行われた第48回日本リバーベンチャー選手権大会に僭越ながら参戦させていただきました。

例年よりも少ない水量(全国的に雪が少なかった・・・?)や全てのものに対する物価高騰などが重なりオフィシャルも苦労したと思います。

そんな中での開催本当にお疲れ様でした。

しかし、運営の苦労と競技の良し悪しは別です。

もちろんリバベンオフィシャルに対する苦言ではありません。IRFルールに対する苦言です。こういうのを選手側から何かしらの形で発信していかないと競技性の向上には繋がりません。

今回は以前にも発信した事がありますがダウンリバー競技に対する意見です。読んでいる選手の皆さんも本当に今のままでいいのかぜひ自分なりに考えてみてください。

現在のIRFダウンリバールール

IRFのHPに公開されているルールが全てですが正直ガバガバです・・・。簡単に解説すると、

  • 4〜8艇同時発艇可能
  • 妨害行為はペナルティー
  • 同時発艇の場合はできるだけ公平に配置してね。できない場合は早いチームからコース選択権。
  • コースデザインとしては20分から60分くらいで漕げるコースで。

といった事が書かれています。

このIRFルールの杜撰ずさんさを今回のレースでは実感してきました。

複数艇同時発艇を認める弊害

弊害は一つだけではありません。

以前ダウンリバーはデスレースと書きましたがそれだけではありません。

複数艇同時発艇は他のところにも弊害を出しています。

①光電管計測が実質不可能

人工コースのような場所で2艇までの発艇ならまだしも自然河川で縦並びの発艇になった際には光電管による計測は実質不可能です。

川を跨いだだけの光電管では技術的に3艇同時を計測することはそもそも不可能かと思います。

そのため「5秒前4・3・2・1・GO!!」の掛け声発艇になるかと思いますが、厳密には組によってもコールが多少ずれます。

発艇の配置

ダウンリバーの勝負は「着順」ではなく「タイム」です。それなのに図の右側にあるような自然河川で良くある縦並び方式ではそもそも競技として漕ぐ距離が違うのです。ジェネラルルールの最大値である8艇を縦並びで出した場合は15m以上違うでしょう。15mとなるとカレントの強さによっては1秒以上変わります。それを「タイム」を競う厳格な300点競技でやるというのはいかがなものでしょうか?

リバベンの3艇同時ですら5m以上変わっています。今回のリバベン上級のリザルトでは1秒前後で争っている順位が2箇所(計4チーム)ありました。さらに20分のコースで8チームがトップタイムから1分以内にいます。公平・公正に光電管を使えば明らかに順位変動します。

タイムを競う競技でそもそも漕がせる距離が違うというガバガバ感を出している時点でおかしな話です。

②ゴールも手計測になる

10000歩譲ってスタートはやむ負えないとしてゴールはどうでしょうか。ルール内で後方ボートによるボートコンタクトが許可されているので競り合いながらゴールすることもあるでしょう。この際ビデオ判定を用意できない場合は手計測(審判によるストップウォッチ)になります。そうなると人による誤差が必ず生じます。実はこの「人」による誤差が非常に大きいのです。

「決勝ライン」の概念

リバベンではダウンリバーの「決勝ライン」を銚子橋下のスタッフと言っていましたが本当にそこでしたか?(オフィシャル非難ではなく概念としての話です)

人がやる決勝ライン

本来は青の点線が決勝ラインだとします。しかし、対岸の目標物が明確でないと視線がずれてしまいわかりやすい岩のくぼみなどに目がいってしまったりして決勝ラインがずれます。また、固定の位置や明確な目印を置かない限り人も移動するので100%同じ場所で計測するのは不可能です。オレンジの線が例です。

このようなことを防ぐためにカヌースプリントでは「決勝タワー」が建てられ、対岸には基準用のプレートも設置されます。プレートといっても板の中央に垂直線が入っただけのものです。それを決勝タワーから垂直に見るような形で計測します。

カヌースプリントの発艇システム

スタートは自動発艇装置を使いゴールは基本的にビデオ判定です。1/1000秒まで正確に出るので文句のつけようもありません。

ここまでやれとは言いませんが、レースラフティングでもせめて両岸にパイロンを立てるなどして少しでもズレのないような計測・決勝ラインを心がけるべきです。

実際のズレ

カヌースプリントの発艇システム

こちらの図のパソコン(計測部分)を実際に昔は人の手で計測していました。

スプリントの審判講習で実際にやってみようということになり実験したそうです。

実際に行った実験の図

一人の選手がシグナルと共に200mの競技区間でスタートし、信号機のような光信号が出たと同時に審判は手元のストップウォッチで計測を開始します。目で見える決勝ラインに来たと思ったら止めるというシンプルなものです。これを5・6人で同時にやったところ早い人と遅い人で3秒ほど計測タイムが開いたそうです。200mの競技時間は40秒前後です。これで3秒開くというのは致命的です。

人の目は配色や天候などによっても見え方が変わりますしそもそも脳の反応速度も違います。また、同じ人が計測していてもチームの評判や思い入れによってメンタル面で変化してしまいます。

③グループによって有利・不利が大きくなる

実は今回の大会で私のチームは複数艇同時発艇の弊害をモロに受けました。

DRの発艇組み分けは前日までのポイント次第です。そこで同点だった場合はSLのポイントが高い方が優先されます。これによって生じる弊害としては同点でありSLで勝っているにも関わらずチームAは上の組み合わせでコース選択権を失い長い距離を漕ぐハメになりブロックされながら漕がなければならず、チームBは前日まで負けているにも関わらず下の組み合わせでコース選択権をもらって悠々と遅いチーム相手に漕げるという格差が生じます。「それがルールだしゲームだ!」という人(IRF)は競技の本質を完全に履き違えています。

わかりやすく言うと「タイムを競う」なら1艇ずつ発艇、「着順を競う」なら複数艇同時発艇にしなければなりません。これは「カヌースラローム」と「カヌースプリント」の本質の違いと似ています。

「スラローム」はレースラフティングでもあるのでイメージがつきやすいと思います。あれは全てのゲートをくぐってゴールまで行く「タイム」を競っています。「スプリント」は速さを競ってはいますが勝敗は「着順」です。遅かろうが速かろうが組み内で1位でゴールすればいいのです。

完全に「タイム」しか競っていないDRで複数艇同時発艇は本質から外れています。

1艇ずつの発艇に戻すべき

競技性の向上を本当に考えるのであれば1艇ずつの発艇に戻すべきです。

以前までは遅いチームから1艇ずつの発艇でした。複数艇同時発艇が認められるようになったのはここ数年の話です。

確かに遅いチームからのスタートでは後方が追いついてブロックされてしまいタイムが出ないという弊害がありました(当時から故意のブロックは禁止。でもみんな負けたくないからやる)。そこで現在は早い組みからのスタートになっています。であればそれまでポイントの高いチームから順番に1艇ずつが一番フェアです。

まとめ

今回は複数艇同時発艇が抱えるダウンリバーの問題について解説しました。

「魅せる競技」も大事かもしれませんが、そもそも競技の本質を見失っては興醒きょうざめです。

H2Hやクロスのような競技ももちろん面白いですしあってもいいと思いますが、クラシックな競技をそっちに寄せてしまうと本質がぶれてしまいます。

IRFは早急にレースラフティングの本質について見直した方がいいかもしれません。

コメント