近年国内レースの主流はグモテックス/コロラド450となりました。静水域では軽さも相まってかなり速いボートです。さらに他社のボートに比べてスォートの調整が容易でR6・R4の切り替えも容易にできます。外人仕様ではありますが前足を入れるフットストラップもついており買った状態でそのまま実戦投入できるのが魅力です。このような背景も相まって学生選手と話していると「部で購入するならコロラド1択!他にラフトボートなんて存在するんですか?」という選手が非常に多いです。
確かにコロラドはレースシーンであれば良いボートかもしれませんが、新入生などを乗せてファンラフなど遊びの川下りをしようとすると安定感もなければ強度もないただただ繊細な船となります。
そこで今回はさまざまなラフトボートとその特徴について解説していきます。
Gumotex colorado450
現在最もレースシーンで使われているラフトボートです。
ツアー用のラフトボートと違って前後非対称な構造のためセルフベイラーから逆流したりせず直進に対する抵抗が小さいのが特徴です。
メリット
- 静水域における直進性はズバ抜けている
- ツアー用のものよりも圧倒的に軽い
- スォートの調整がしやすい
- 前足用のストラップが充実している
- シートポジションが低く小柄な選手でも入水がしやすい
デメリット
- 直進性が高い分慣性の処理がシビア
- 強度が低いので岩などに擦れると弱い
- ポジショニングを間違うと最悪排水できなくなる(極端な前加重)。
- 空気圧をかけても剛性がないのでハイウォーターで折れる
- 軽く細長いためフリップしやすい
レースシーンにおいては優秀ですが、楽しくみんなで川下りというコマーシャルラフトの場面においては正直一番出てきて欲しくない船です…笑
今となっては知る人も少ないですが、そもそもgumotexのHPにおいてコロラドは「レイクツーリング用。クラス2.5の川まで。」といった感じで紹介されていました。それをレースシーンで使えるといった需要が出てきてシレッと「クルー次第ではクラス4まで」と公式が書き換えたのです。
かつては20万円以下で買えるお手頃な船でしたが、物価高と為替相場による高騰でとっくに30万円をこえる高級ボートになってしまいました。販売価格1999.00€なので現在の1€=165円の為替とトランス(輸送費)を考慮すると35万円前後でしょう。
昔は耐用年数2年と言われ3年目からはいつバーストしてもおかしくないと言われていました。それくらい作りは弱いボートです。当時から多少のマイナーチェンジはあるものの構造はほとんど変わらないので今でも同じような感じなのでしょう。
AIRE Super Puma
レースシーンではもう見る事がなくなってしまったボートです。しかし、私が現役の頃までは第一線で活躍していたボートです。SuperPumaは3スォート最大8人乗り(レースなら6人)のボートですがこれの一回り小さいボートでPumaという2スォート最大6人乗りのボートもあります。
メリット
- コロラドよりも安定感がある
- 安定感重視のボートの割に直線が速い
- 2層構造でボート剛性が高く波に当たり負けしない
- 2層構造なためインナーチューブの取り替えなどで長く使える
- ツアーボートにしてはシャープな形状で慣性処理がやりやすい
デメリット
- ボート重量があり初速の立ち上げは重い
- フットストラップがないのでレースではスォートの調整のみでポジショニングしなければならない
- スォートがフロアチューブを編む紐にタイダウン4箇所止めで調整が難しい
- 2層構造なので持ち運びが重い
- 2層構造なのでメンテナンス性はいいが壊れるところも倍
なんと言ってもAIRE社の特徴は2層構造のアウター・インナー方式です。これにより空気圧もかけられますし丸型の形状も相まってかなりの剛性が出ます。ハイウォーターな川でも余裕で突破していく硬さがあります。また、ツアーで使える安定感があるボートにしてはよく走りますし慣性処理の感じもカヤックに近く全体を通してハイレベルな仕上がりです。
欠点としてはサイズ感の割に陸上で重いということと、インナーチューブの変なところが壊れるとリペアが難しいという点です。AIREはアフターサービスも厚いので型番を送ると壊れたチューブを送ってくれますが時間も予算もかかります。自分達で修理しようとしても場所によってはリペア不可という場合もあります。
当時ストローム会の世界大会メンバーが長良川wwfでSuperPumaを使ってコロラド勢をぶっちぎっていた事があります。剛性が高く当たり負けしないのでR6で三段の瀬のウェーブを破壊していました…笑
値段も2層構造の分割高になっており$4,650.30と日本円では70万円オーバーとコロラド2艇分の値段となってしまいます。
BEE
北海道に拠点がある会社でリバー用はもちろんスノーラフトも作っています(使用中の写真がなかったのでイメージとしてスノーラフトの写真を載せておきました)。
完全にツアー用の安定感重視のボートなのでレースシーンには向きません。もちろんレギュレーション的にカタラフトなどではないので出ようと思えば出られますが表彰台はおそらく難しいという話です。
メリット
- 3スォートである程度以上のサイズであれば安定感は文句なし
- 強度も十分ありちょっとやそっとぶつかった程度では壊れない
- 容積があり8人乗りしても沈まない
- アウトチューブがかなり高く座りやすい
- Dリングが多くカラビナによる積載など積載性が高い
デメリット
- とにかく重い
- 漕ぎ味も重い
- ロールアップしてもそこそこのサイズ感になる
- レースに出るともはや筋トレ
- 空気容量も大きいため膨らますのに時間がかかる
大きなボートの魅力はなんといっても安定感です。そもそもツアーで使うようなボートに速さなんか求めていません。かなりのハイウォーターでも安心して漕いでいけます。
デメリットはなんといっても船が重いことです。ツアーで7人乗せて(ガイド入れて8人乗り)パドルがカーライルだとパドルが水圧に負けて折れます…笑 それくらい重いです。ひっくり返った時もボートが大きすぎてしっかりとフリップラインを使わないとパドルで簡易的にやろうとすると起きてこない時があります。
それでもさまざまな川を安定して下れるというメリットは大きいです。
余談ですが、こちらのBEEさんがZEBECも扱っています。ZEBECも安価で安定感のあるツアー会社には人気のボートです。
アキレス RJBシリーズ
2017年の世界大会仕様のボートはたまに見ますが2スォートタイプのRJBシリーズは全く見なくなりました。
コマーシャルラフティングの会社では3スォートのRJB380などはよく見かけます。アキレスとBEEは完全にスォートが固定されておりポジショニングは不可能です。
メリット
- サイズ感の割には軽い
- 日本製なのもあり細かいところの作りが丁寧
- 独特な質感のゴムで滑りづらい
デメリット
- 漕ぎ味はBEE同様重い
- 軽さの分生地が若干薄い(…気がする)
当然RJBシリーズにはフットストラップなどもついていませんしレースでの使用は考えられていません。アキレスの良さは独特な質感をした生地感です。ラバー感が強く濡れても滑りにくいような生地になっています。
値段も50万円オーバーと国産高級ボートとなっています。
INCEPT
昔の学生は安定するいかにもコマーシャルのボートはゼベックだろうがなんだろうが一括りに「インセプト」と読んでいました。それだけツアー用のボートとしては当時は一般的でした。最近はほとんど見かけませんが…。
長良川wwfに出場している方はお世話になっているはずのODSSさんのインセプトです。スタートでボートを抑える際などに使われていました。
メリット
- 圧倒的安定感
- フロアチューブの生地が厚く、オプションで追加の保護生地もつけられる
- チューブが高く座りやすい
デメリット
- 重いなんてもんじゃない
- 追加生地をつけるとさらに重い
もちろんスォートは固定式なのでポジショニングはできません。しかしながら一時期テイケイもインセプトを使っていた時期があり乗ったことがありますが、スォートを跨ぐスタンスで乗ると後ろ足がスォートの間にピッタリ収まるくらいの幅で下に足を入れなくとも抜群の安定感が出せて乗りやすい船ではありました。
しかし、チームで購入となると耐久性もさることながら予算も重要な項目になります。INCEPTのホワイトウォーター3スォートとなるとNZ $11,385〜と日本円では100万円オーバーの超がつくほどの高級ボートとなります。これを10人前後のチームで購入したり学生さんが大学の補助金で購入するというのはなかなか現実的ではありません。値段も相まって姿を消していったのかなと思ってしまうほどの値段です。
まとめ
ラフトボートメーカーもグモテックス以外にたくさんあります。
お安く安定感を求めるのであればBEEのボートやZEBECなんかがオススメです。
筆者が学生の頃はちょうどAIREやアキレスからコロラドへの転換期でした。エース艇はコロラドを使い教育艇はAIREという感じでリバベンも出ていました。コロラドは確かに速い船ですが安定感がなく新人を乗せて5月のみなかみを降らせるにはハードルが高いです。多くのチームがそのような悩みを抱え挑戦したい新人に我慢させたりしているという話も聞きます。別に全艇を安定感MAXの船にする必要はありませんがチームで1艇くらい壊れない遊びでも使えるハイウォーター艇があっても良いのではないでしょうか。そういう意味ではBEEやZEBECは選択肢としてありかと思います。
また、年に1度は四国の吉野川に行こうというチームも多いでしょう。増水した吉野川相手にコロラドはやられに行くようなものです。そんな時大きなボートが1艇あればセーフティー的にも安心できるでしょう。
安全に楽しいリバーライフをお楽しみください!!
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