よく大会などにいくと「漕げーー!!」と怒号が聞こえてきます笑
スラローム・スプリント・H2H・ダウンリバー競技問わず「いいから漕げー!!」や「アップ!アップ!」などと聞こえてきます。
確かに漕がなきゃいけないタイミングもあります。しかし、よくみていると「そこ漕がなくても良くね・・・?」と思うところでも怒号が聞こえてきたりします笑
では、何故漕がなければいけないのでしょうか?今回は漕ぐ理由について解説していきます。
漕がなくてもダウンリバーはできる
「コマーシャルラフト」が証明していますが、ほとんど漕がなくても川を降っていくこと自体は可能です。
一度流れに入りスピードさえ乗ってしまえばあとはガイドが舵取り(ラダー)しているだけで降っていけます。スピード(直進慣性)をうまく回転慣性にかえ、再びラダーやスイープで直進慣性に戻すといった技術があります。これを駆使すればお客さんに一度も漕がせる事なく降っていくことも可能です(間違いなくクレームがきます笑)。
ではなぜ漕がなければならないのでしょうか?
答えは簡単です!「何かしようとするから漕がなければならない」のです!余談ですが実はフリップの原因も「何かしようとするから…」です!空のラフトを川に流しても落ち葉のようにヒラヒラ降っていくだけで、なかなか裏返ったりはしません。人が乗って何か力を加えようとするからフリップしたりするのです。
本流にいれば降っていけるツアーと違い、エディーに入ったりフェリーグライドしたりしようとするからパドリングという要素が出てくるわけです。
漕ぐ理由
これまで書いたように、降るだけならパドリングは必要ありません。
でも、皆さんスラロームでストリームインした後で下流に向かって頑張って漕ぎますよね?なぜですか?笑
降るだけなら流れに乗っていればいいだけですよね?なぜ漕ぐのでしょうか?笑
答えは「漕がないと船が安定しないから」です。感覚的には分かっていても言葉で説明しづらい要素のひとつだと思います。
もっと厳密にいうと「ボートは流速よりも遅い状態だと流れに翻弄されて安定しないため、パドリングする事により速度を上げて安定をはかる」といったところでしょうか。
川の中で立ち止まっていると流れをもろに受けてフラフラします。しかし、下流に向かって歩き出すとながれに押されて楽に歩行できますし体重の乗せ方さえコツを掴めば簡単に歩く事ができますよね?それと同じです。
なぜ下流に向かって漕ぐかというと「流速よりも速く動くため」という理由になります。
「笹舟」状態
漕ぐ理由についてもう少し解説していきます。
ボートが流速以下のスピードになると安定しないと書きましたが、さらにもう一つ起きて欲しくない現象が起きます。
完全に流れに翻弄された状態・ただ流されているだけの状態になるとラダーやコントロールパドルはもちろん漕ぎ出しのフォワードパドルも効かなくなります。
パドルを入れても空振りするというか、あるべき抵抗を感じない状態になります。例えるなら静水でただスタンラダーのポーズをしているだけの状態です…
例えるなら「笹舟」です。浮いてはいられるが自分ではどうしようもできなくて、ただただ流されていくだけの状態です。笹舟は用水路などに流すとサーと流れていき、ちょっとした段差のストッパーにハマりもみくちゃにされ吐き出されます。ラフトも同じです。推進力を失ってホールに落ちると突破できずもみくちゃにされてしまいます。
あえて流速差をマイナスにする技術
ラフティングやカヌーをかじった事がある人なら必ず一度はやった事がある「ストリームイン」についての話です。大体の場合流れに対して「45度くらいで入れ」と教わるはずです。
しかし、これまでの話を踏まえてよく考えてみるとかなり危険な行為のように思えないでしょうか?
通常上流に漕ぎ上がりながら流れに入ります。この時上流からの流れに対してボートの相対速度は「遅い」どころではなく「マイナス」となります。
普通に考えたらかなり危険な行為です。
ではなぜストリームインは本流に対してマイナスの速度で入るのでしょうか?
これは「流れの影響を受けるため」です。よく「流れを使え!」なんて言われますがそれです。
わざと流速差をマイナスに持っていく事により流れの影響を受けやすくするのです。
ストリームインの時、スピードがついていた方(本流に対してマイナスが大きい)がついていない時(本流の流れに近いスピード)よりもストリームインしやすいですよね?(もちろんゼロスピードでのストリームインという技術もあるのですが・・・)
わざとマイナススピードで入る=流れの影響をモロに受ける=コントロールできれば流れに乗る=流れが勝手に船を押し流す=頭から入るため下流を向く=力を使わず下流を向く=ストリームイン!!となるわけです。
このようにあえて流速よりも遅く進むということもあります。
漕がなくてもいい場面
散々流れよりも速く動けば安定するといってきましたが、レースラフティングの実戦で考えると漕がなくてもいい場面というのがあります。
例えばスラロームでダウンゲートの直後にタイトなアップゲートがあったらどうでしょうか?ダウンゲートは当然漕ぎながら通過しますが、そこで漕ぎ過ぎてしまうとどうなるでしょうか?加速しすぎてしまい、アップゲート下のエディーに入った際スピードを抑えきれずに下流に落とされたことありませんか?
スタガー(連続ダウンのジグザグセット)ゲートではどうでしょう?漕ぎすぎてボートが外に膨らんでアウトポールに接触したなんてことありませんか?
どちらも原因は「漕ぎ過ぎ」です。重要なのは「流速よりも早ければ安定する」ということなのです。
競技的にはトップスピードを維持できた方が理想ですが、早すぎると今度はコントロールしづらくなります。
高速道路で車のハンドルを90度も切ると事故りますよね?一般道だと90度なんかじゃ曲がりきれないコーナーはたくさんあります。「スピードが乗る」ということはコントロールがより繊細になるということです。
まとめ
今回は漕ぐ場面・漕がない場面について解説いたしました。ポイントは下記の通りです。
- ・流速よりも早いと安定するから漕ぐ
- ・「流れをつかう」は「流速差を使う」
- ・早すぎると抑えきれなくなる
「漕がない技術」「間を取る技術」というのももちろん存在します。それはまたの機会に解説します。
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