以前記事にした前後バランスのように左右にもバランスがあります。
実際には前後バランスよりも課題とされる事が多く、多くのチームが苦戦する課題の一つだと思います。
今回はレースラフトはもちろんコマーシャルラフトも含めて解説していきたいと思います。
先に言っておくとこれは完全に私個人の感覚です。違った考え方、調整方法などもあると思います。それはチームごとにも違うと思うのでそれぞれに探って見てください。
そもそもなぜ左右のバランスが崩れるのか
どんなに練習を積んだチームでも全員が100%で漕いで真っ直ぐ進むというチームはないと思います。必ずどちらかに曲がります。誰かが送りパドルをしたり時にはコントロールパドルを入れて調整します。
それはなぜでしょうか?
「左右の漕ぎのバランスが合っていないから」だけでしょうか?
実際にはもっと多くの要因があります。
私の中ではザックリあと2つあります。
①ボートの空気圧
②選手の体重バランス
です!
それぞれ解説していきます。
まず①の空気圧ですが、ラフトボートは何気室にも分かれそれぞれに空気を入れていくのはレースをする人にとっては常識ですが、ここがネックです。実際空気を入れて全部の気室の空気圧を確かめた事がある人はいるでしょうか?いないですよね?笑
しかし、実際は空気圧によってボートの浮力が変わります。右は浮いてて左が沈むなんていう事が起きています。これがどういう状態かというと「リーン」している状態です。
空気圧だけでもリーンが起きるのです!
②の体重も起きることは一緒ですが、こちらはもっと厄介です。
それでは次の条件で何が起きるか考えてみてください。
- 空気圧によるリーンは考慮しない
- R4
- 右前、体重75キロのスポーツ男子
- 右後、体重65キロのベテラン女子
- 左前、体重68キロの新人男子
- 左後、体重80キロのおじさんOB
こんなチームみたことありそうじゃないですか?笑
さて、何が起こるでしょうか?考えてみましょう!
そうです!ボートが斜めに歪みます!右前・左後の対角線が重いので完全に歪みます。
果たしてこんな状態で真っ直ぐ進むでしょうか?おそらく不可能です。そもそも左が重い上に斜めにツイストされたらもはや大混乱です!笑
ボートから完全に歪みをとるには、「空気圧系で正確に圧をはかり、全員が装備を含めて完全に同じ体重になる」しかありません!
無理ですね!!笑
コマーシャルラフトの左右バランス
先にいうとこの章はガイド経験がない方向けです。ガイドした事がある人は「あ〜…あるある」程度です。
後方でガイドが舵を取れるコマーシャルラフトですが、流石に左右バランスがあります。
4人くらいなら気になりませんが、6人で男女3:3のグループだと気を付けないと苦労します。
だいたい「左右で分かれてね」というと右男、左女という具合にきれいに男女で分かれます。
これでもくだってはいけますが、漕ぎのバランスが崩れている(やはり男性の方がこげる)うえに、体重のバランスまで崩れる(男性の方が重い)ので岩に当たったりする際に当たり方を間違えると一瞬でフリップしたりラップしたりします。狭くて岩の間をすり抜けなければならなくなるとなおのことです。
こんな感じのグループの時は「席替えはいくらしても良いけど男・女で別れるのはやめてね」と先に言っていました。これを言っておかないと、バランスが崩れて決まった方向に曲がりやすくなってしまうのでずっとガイドがスイープしてるかラダーを入れてるかのどちらかになってしまいます。
なんとなく「わー!きゃー!」言っているように見えるコマーシャルラフトも実は色々考えながら降っています。
※今回は「左右バランス」なので解説しませんが、前後の重さも考えないと岩に当てる際などは悲惨なことになります。
1人でも左右バランスは崩れる
1人乗りのカヤックでも実は厳密にいうと左右均等に漕げる人はいません。
トップ選手達もそうですが必ずどちらかに曲がります。
それを外から見ても分からない(本人も無意識)のうちに補正して漕いでいるだけです。
私も最初トレーニングでカヤックを始めた時に言われました。「必ずボートはどっちかに曲がろうとする。それを岸から見ても分からないレベルで調整できるようになったら合格です。」この言葉が全てを表しています。カヤックを20年以上やってきた人ですらどちらかに曲がるのです。原因としては左右の筋力差やちょっとした風など様々です。
1人でど真ん中に乗るカヤックですら曲がるのに、4人で角に座るラフトが真っ直ぐ進むなんて到底無理な話です!笑
「リーン」の応用
ここで先程のリーンの話が出てきます!いつだよと思う方!空気圧の件です(笑)
ラフトボートやダッキと同じようにシングルブレードで漕ぐカナディアンカヌー(以後C1)ですが、ラフトの感覚からしたらあり得ない事ができます。通常1人で漕ぐ場合片方を漕いだらラダーを入れるか、クロスパドルを入れる、もしくはJストロークでないと真っ直ぐ進めませんよね?
しかし、C1ではリーンを駆使して全力で左漕ぎしながらボートを左に曲げたり直進させたりする事ができます。
「左を漕いでいるのに左に曲がる」という現象が起きるのです。
C1パドラーなよく使うのですが「逆エッジ」「逆リーン」と言います。左漕ぎの場合は右リーン。右漕ぎの場合は左リーンです。体重のかけ方やかける場所によって曲がり方を調整していきます。
応用でこのリーンを「きっかけ」に使ったりもします。一瞬ボートの片側を沈めてそこに水の抵抗を受けることにより方向を変えるという技術です。
左右バランスで崩れがちになるリーンですが、実はパドリングに匹敵するくらい重要な要素なのです。
結局どうやって左右バランスは整えるの?
ここまで読んできて、「揃わないのもわかった。リーンで曲がるのもわかった。重要性もわかった。結局どうすりゃいいのよ?」と思いますよね!
答えは簡単『意識する』です!笑笑
「アホか!時間返せ!」と聞こえてきそうですね!笑
しかし、『意識する』だけで実は変わります。
先程「トップ選手も無意識で調整している」と言いました。果たして最初から無意識でできたでしょうか?
カヤックも多くの人に教えてきましたが、最初からまっすぐ漕げた人は1人もいませんでした。冗談抜きの0人です。早い人は2パドル目で曲がり、上手い人でも10パドル漕げるか漕げないかで曲がっていってしまいます。
そのため、ひたすら最初はまっすぐ漕ぐ練習です。何度も何度も回りながら「あーでもないこーでもない」と言いながら徐々にまっすぐ進むようになっていきます。
次第に何も言われなくてもまっすぐ進むようになり、そのうち体が覚えてしまい何故回っていたの分からなくなっていきます。
全員が意識しながら「真っ直ぐにするんだ!」と思えば、まっすぐ進めるようになるのです。
当然それなりに時間もかかります。ひたすら意識しながら、目標物を決めながら真っ直ぐ漕ぐ練習をしていきます。
まとめ
今回は左右バランスについて考えてみました。
具体的にまっすぐ進める方法は漕ぎ方などテクニックの話になってしまうのでまたの機会に解説します。
理想は左右が整った状態ですが、解説してきた通り現実的にはそんなこと不可能です。
重要なのは左右バランスを整えようとすることではなく、それを理解した上で練習するということです。
ついつい「左右バランスを整える練習」をしがちですが、重要なのは「いかに船を速く進めるか」です。「曲がるのは仕方ない」「曲がるものだ」と割り切り、曲がる力すらも直進に変える練習をしてみてください。
具体的な方法はまたの機会に解説したいと思います。
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