【御岳カップ直前】ラフトの練習ヌル過ぎ問題!!

いよいよ今週末に迫った御岳カップです!出場選手・チーム数並びにかなり多いですね!!SUPやリバーボードもさることながらラフトボートのエントリーが全体で50チームというのはかなり盛り上がっています。ラフトが盛り上がるのは非常に嬉しいことです!!

個人的な近況報告ともなってしまいますが、最近はJSPOカヌー公認コーチ3という資格取得のために実践という意味で弘前大学探検部さんのラフティングを見させていただいています。皆さん御岳カップだけでなく来年のリバベンまで視野に入れて活動していて本当にすごいなと感心します。また、学生の皆さんは主体性に溢れてドンドン成長していくので教えていても非常に楽しいのですが一点ひっかかったことがありました。実は同じ内容でコロナ禍前の長良川wwfで言われたことを思い出しました。今回は私が引っかかってしまう練習論について少し書いていこうかと思います。

ある年の長良川wwf

コロナが蔓延する直前の長良川wwfでの話です。大会期間中台風が本州に直撃し御岳では小橋が流されるという甚大な被害が出た時です。

大会も1日目のスラロームを中止し自然園のプールでのデュアルスラロームに急遽切り替わりました。その年はまだHORUが発足したばかりでギリギリ8人の2艇で臨んでいました。プールでのデュアルスラロームということで全員ワンメイクのダッキーレース(二人乗り)となりました。そこまで長くないプールなのでコース時間は1分前後のコースです。

そのレースの一本目が終わって総監督の増田さんに言われた一言は「大澤疲れすぎでしょ!www」でした。息は上がっていましたがそこまで「疲れた」という感覚はなかったしインターバルを入れれば戻ると思っていたのでその時は「?」という感じでした。

弘前大学との練習

練習は朝練がメインで6時から学生の授業開始まで漕ぎます。曜日によって授業やバイトで出席できる選手が変わるのでいつもフルメンバーとは限りません。そのためダッキーもうまく使ってメンバー調整を行います。

ちょうど1人足りなかったので私がダッキーに乗って右漕ぎの選手と一緒に練習していました。ダラダラ流れる静水に石を繋いだペットボトルを浮かべて擬似ゲートでおよそ30秒のコースを練習していた時です。他のラフトに乗る選手が我々を見て「大澤さんめっちゃ疲れてるのに、〇〇余裕!!www」といっていました。確かに左漕ぎに負荷がかかるセットだったし、いったその子も「〇〇もっと頑張れよ!」という意図だったのでしょう。

しかし、この瞬間長良川wwfの時と同じ違和感を覚えました。「確かに今はしんどいけど30秒から1分で戻るな」と感じていました。

コンセプト時代の練習

少々遡りますが、私が御岳のコンセプトにいた頃、今はジュニアナショナルチームの禰寝選手と一緒に練習していた時の話です。コーチの小田さんは「どんな練習でも一本一本レースのつもりで行け!」「この一本にナショナルチームがかかっていると思え!」「カヌーは途中でぶっ倒れたくてもそこまではどうせ追い込めないし、追い込めた時のために2人でやらせてるんだからレースピッチで漕ぎきれ!!」といっていました。その真意はコーチ3を勉強している今ならわかります。キツイ練習をさせる時小田さんは必ず横で見ていて頻繁に心拍数を報告させました。これは負荷を測っていたのです。タイムと心拍負荷とゲートへの集中力を観察しもっとも良い負荷を生み出していたのです。もちろん手を抜くとバレます。いくら真剣な顔をしても心拍数は誤魔化せませんし疲れるとゲートが雑になります。

この「練習だろうが一本一本レースのつもりで本気で望む!」というスタンスは私の中で今も活きています。そしてインターバルの間に全力で回復させるのです。正直かなりしんどかったです。喉が掻き切れるんじゃないかというほど呼吸をし臨んだものを1分弱で戻しもう一度やるのです。ラフティングチームでここまで追い込んでいるチームはテイケイ以外見たことがありません。

個人的トレーニング論

スポーツは楽しいものであり辛いものでは決してありません。しかし、結果を求めるのであればどうしても苦しいことも必要になるでしょう。

前項でも書いた「一本一本レースのつもり」というのは非常に重要だと感じています。例えば練習で30秒のコースがあるとします。練習の30秒を全力で動けない選手は決して1分を全力で動くことはできません。SPのコースタイムは2分前後、ラフトSLは2分30秒前後が相場です。この時間というのはミドルパワーと言ってちょうど有酸素能力が無酸素能力に追いついてくる1番きつい時間帯です。肉体的な強度はもちろんですが自分を追い込むメンタルも必要になります。それを鍛えるためにはレースをイメージしメンタル負荷もかけながらよりオーセンティックなインターバルを行うということが必要になります。

ラフトの練習に限らずですが多くの人は「練習メニュー〇〇を何本な!」と言われるとその本数をこなすことを考えてしまい必ず手を抜きます。実際のラフトSLレース一本2分半でもゴール直後はかなりキツイはずです。そんなのを2分半(コースタイムと同等)のインターバルで10本タイムを落とさずなんて到底不可能です。そこで選手はきつそうなふりをしながら手を抜くという技術を身につけます。そうしなければ10本もやればタイムが落ちるか身体が壊れるかのどちらかです。前述した小田さんの練習は本数もタイム指定もなく(最低参考タイムはあります)調子を見ながら調整していました。我々がまだいけると感じると10本を超えますし、本気で漕げていてタイムの落ち幅によっては5本で終わったりもしました。

「今、目の前の一本に全てを捧げる」という考え方やスタンスは練習をしなければできるようにはなりません。レース本番で気持ちを作ったところでいきなり覚醒してとんでもないパワーが出ることはなくリミットがかかってしまい練習の実力すら出せません。

少し話はそれますが、カヌースラロームで最もオーセンティックな練習で「フルラン」というものがあります。コースにレース本数のゲートを用意し失敗しても全力で最後まで漕ぎ抜けるというものです。自然河川ならまだしも人工コースでフルランをレース想定できっちりやるとトップでも一日2本から3本が限界だそうです(個人差はあります)。90秒前後のコースで2本ということは約3分です。トップ選手が一日24時間で3分やると限界なものを一般人がどうやって10本もやるのでしょうか。

私は30秒のセットだろうが2分半のセットだろうが次の一本のことなんか考えていません。「今の一本を最速で漕ぎ切る」に全振りです。インターバル(休憩)を挟めば回復させられることも知っていますし、苦しくても倒れることはないというのも知っているのでそこで使い切ろうという思いで漕ぎます。

まとめ

よくラフトの指導をすると選手から私は「パワーが違う」「体力がおかしい」と言われますが、それは語弊があります。練習であれデモであれその一本そのコースに全力を出して漕いで、解説したり喋ったりしている間に回復させているだけです。みんなそこにリミットがかかっているだけです。いかにリミットを外して自身の最大パワーを出して最速で回復させられるようになるかが練習です。小手先の技術で誤魔化してスタミナを温存していくことはもちろんできますがやりません。それをやってしまうとそういう技術が身に付いてしまい本番で体が動かなくなります。

ラフトのSLは御岳カップやリバベンなど多くの大会で2本1採用です。これは非常に異例なレースです。カヌースラロームは予選一本からの一発決勝です。予選でミスるとそもそも決勝(A決勝)はありませんし、決勝も1本1採用です。カヌースプリントも同様です。大会規模にもよりますが、予選・準決勝・決勝と全て一本です。やり直しなんかできません。「レディー・セット・ゴー」この一瞬に合わなければ負けてしまいます。オリンピックなんかは4年かけて代表を勝ち取って200m約40秒漕いで「残念でしたまた4年後。」という選手がたくさんいます。

普段から一本一本全力でできなければ本番ではうまくいきません。ここで断言しておきます。私が疲れすぎなのではなく皆さんが手を抜きすぎです。

技術練習だからと言ってゲートをダラダラ漕いでいるチームもいますが、レースでそんなにゆっくり漕ぐんですか?バンバン流れている川でそんな余裕ありますか?それ以上のペースで漕いだ時のスピードコントロールはできるんですか?これは一例ですがやっていないことはできるようにはなりません。たしかに技術どうしはそれぞれ繋がりがあったりしますが、やったことがないことは大抵できません。また、乗り物系競技全般そうですがスピードが出れば出るほどタイミングやコントロールがどんどんシビアになります。普段やらないスピードでいつもと同じようにボートを操ることはほぼ不可能です。

補足

今年の初夏に国体のカヌースプリント東北ブロックが岩手の御所湖で行われ、恥ずかしながら青森代表として漕ぎました。結果はぶっちぎりのビリでした。スプリントを初めて半年で500m完走しただけでもよしとしましたが、そこで感じたのは勝負の世界のシビアさでした。都道府県代表一名ずつによるレースなので東北は6人しかおらず当然一発決勝です。私は2分14秒と激遅でしたが、他の選手はみんな1分40秒台とかでした。国体だけを目指しているという人も中にはいます。そのような人にとっては1年が1分40秒で評価されてしまうのです。たかだか500mです。パドル数も大体知れています。シンプルな競技だからこそその1パドルが非常に重くなります。一本一本手を抜いていて勝てる世界では決してないなと痛感しました。

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